人間として生きていることの証ですよ
■ 週末は寅さん、昨日(2日)は第12作「男はつらいよ 私の寅さん」を観た。第1作から順番に観ていきたいが、レンタル中では仕方がない。
寅さんの妹さくらが夫の博に相談しておいちゃん、おばちゃんに感謝の気持ちを込めて九州旅行をプレゼント、みんなで出かけることに。折り悪く寅さんがとらやに帰って来たのは、出発前日。ひと悶着あるも、寅さんとらやで留守番というまさかの逆パターン。
タコ社長や源ちゃんにも手伝ってもらって、旅行から帰ってくる「家族」を迎えるために奮闘する寅さん。茶の間の掃除、食事の準備(意外にも割烹着がよく似合うタコ社長)。家族が帰ると隠れるように風呂場で湯舟をかき混ぜる寅さん、照れくさいのだろう。
映画は後半へ。小学生の時、寅さんと大の仲良しだった同級生(前田武彦)がとらやを訪ねてくる。何十年ぶりかの再会。同級生にはりつ子(岸恵子)という画家の妹がいて・・・。会ったその日から恋の花咲くというのがいつものパターン。だが、今回は寅さん、マドンナと大喧嘩。でも後に引くことなく寅さんいつもの通り恋に落ちて・・・。
*****
とらやの茶の間では例によってタコ社長も加わって一家団欒。
「人間食うために生きてるんだぜ」とおいちゃん、「そうだよ」とおばちゃん。
こんな場面で山田監督は自分の想いというか考えを博にストレートに語らせる(*1)。
「確かに食っていくってことは大変なんですよ、この世の中じゃあ。でもね、人間が生きていくってことはそれだけじゃ決してない。だからこそ、りつ子さんみたいな人が必要なんですよ、つまり芸術家がね。美しい音楽を聴いたり、すばらしい絵をみて感動するためにだって僕たちは生きてるんじゃないですか」
(略)
「兄さんが美しい女性(ひと)に恋をする。これは兄さんが人間として生きていることの証ですよ、そうでしょ兄さん」
第12作はこのやり取りが見どころ、聞きどころ。
*1 せりふは正確には表現できていません。