■ 1冊減って2、3冊増えるという状況で、積読本が減らない。
あの本、この本。読みたいと思う本を読んできた。だが、この気持ちをセーブして、この先、太平洋戦争関連の本を読もうと思っている。系統的に、というわけでもないが・・・。
先日(18日)、松本の古書店 想雲堂で『生体解剖 九州大学医学部事件』上坂冬子(中公文庫1982年8月10日初版、1983年2月10日4版)を目にし、買い求めた。遠藤周作が『海と毒薬』でこの事件を取り上げている。
五百旗頭(いおきべ)真さんの『日米戦争と戦後日本』(大阪書籍1989年)を読んだ(過去ログ)。内容は易しくはないけれど、論考の流れが分かりやすく、文章が読みやすかった。他の作品も読みたいと思った。偶々、新聞広告で『大災害の時代 三大震災から考える』(岩波現代文庫2023年)を目にして、買い求めた。書評欄に載っていた『「お静かに!」の文化史 ミュージアムの声と沈黙をめぐって』今村信隆(文学通信2024年)も。
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いつまでも続くと思うな我が人生。
もう、全く知らない作家の小説を読むことはあまりしないことにする。若い作家の作品は、よく分からない。既に何作品か読んでいる馴染みの作家に絞りたい。その分、上記したように、太平洋戦争関連本を読もうと思う。これはいわば守りの姿勢。生き方としては好ましくないかもしれない。「チャレンジしなくて、どうする」という内なる声が聞こえる。
藤沢周平作品は何作も読んだが、この数年は全く読んでいなかった。いや、短編集『橋ものがたり』を2023年5月に再読している(過去ログ)。
『天保悪党伝』 読み始めて思った。そうか、藤沢周平はこういう作品も書いていたのか、と。収録されている6作品は書名から分かるが、悪党を主人公にしている。好きな作品は「泣き虫小僧」。異色作の中で一番藤沢作品らしい。
料理人の丑松は、あちこち料理屋を手伝っては手間をもらっている。だが、賭場で大金を賭けて・・・、という暮らし。
丑松は紹介された花垣という料理屋で神妙に働く。喧嘩っ早い丑松だが、つまらない喧嘩で花垣から追い出されたくなかったので。なぜか。おかみさんに惹かれていたから。二十半ばを過ぎたころかと思われたおかみさんは三十二歳。色白で細おもての美人。
**おかみさんを見ていると、丑松は何かしら有難いようなもの、うやうやしいようなもの、それでいて何かひどく物がなしいものに出会ったというような気がしてならない。
だが、それがどういうことなのかはわからずに、丑松はまごまごしていた。しかしまごつきながら、十分に幸福だった**(180頁)
こういう描写は、藤沢周平だな。
客の一人に気になる男がいた。政次郎という名で、筋金入りのやくざ者と知れた。蝮の政と綽名されていた。時には花垣に泊まっていくことを丑松は知る。何年か前、花垣が潰れかけたとき、政次郎から金を借りていたのだった。利息がわりにおかみを抱いているということを知った丑松は・・・。