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■ 7月は小説を読まなかった。だからという訳でもないが、8月になって最初に読んだのは今村翔吾の『双風神』、羽州ぼろ鳶組シリーズの第9巻(祥伝社文庫)。
カバーのイラストには『双風神(ふたつふうじん)』のメインキャスト、風読み・加持星十郎の後ろ姿とその左奥に、緋鼬(あかいたち)と呼ばれる、高さが四丈(*1)を超えるような火焔の渦巻きが描かれている。
今回の舞台は江戸ではなく大坂。大坂で頻発する緋鼬にこのシリーズの主人公で新庄藩火消頭取・松永源吾が加持星十郎らと共に立ち向かう。
ここでは敢えてストーリーは追わない。この巻で感動したのは全くまとまりのない大坂火消を源吾が説いてまとめていく過程。緋鼬に対処する唯一の方法は、火消し陣が一致団結してはじめて成し得る。このシリーズではそれぞれの巻ごとに、映画ならCGでないと表現できないようなクライマックスが描かれているが、スケールの大きさでは今回が一番。
*1 丈は長さの単位で1丈は10尺、約3m。で、方丈は1辺が約3mの正方形の意。鴨長明の『方丈記』はこのサイズの庵で書かれたエッセイ。 過去ログ