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■ 先日、長野県立美術館で開催中の葛飾北斎展を観た(過去ログ)。北斎と言えばやはり富嶽三十六景。その構図の妙、色彩の妙にすっかり魅せられた。
北斎展を観たのが8月10日、その3日後、13日に茲愉有人さんがブログ「遊心逍遥記その2」に『北斎まんだら』梶よう子(講談社文庫2019年)を取り上げておられた。グッドタイミング! 早速、行きつけの書店で注文した。『北斎まんだら』のカバーは富嶽三十六景の中でも特に有名な「神奈川沖浪裏」。この絵、見たことがないという人はいないのでは。
『北斎まんだら』はこの絵の作者・葛飾北斎を中心に北斎の娘で絵師のお栄、小布施の豪商の惣領息子の高井三九郎(鴻山)、北斎の弟子の池田善次郎(渓斎英泉)の人間模様を描いた作品。作者の梶よう子さんは彼らが織りなすその様を曼荼羅図(過去ログ)に譬えた。
読み始める。おもしろい。登場人物が少ないのが好い。今村翔吾の『羽州ぼろ鳶組 襲大鳳(かさねおおとり)上』を読んだけれど、登場人物の数が多く、私のキャパを越えていた。
**三九郎を見上げたお栄は、ぶっきらぼうにいった。
「用があるなら、さっさとおいいな。火の見櫓みたいに突っ立てないでさ」
「火の見櫓‥‥‥」**(9頁)
読み始めると火の見櫓ということばが出てくる。 三九郎はお栄に火事見物につき合わされたりもする。
梶よう子さんは北斎の絵について、この歴史小説の登場人物に自身の捉え方や評価について語らせているだろう。読み進むのが楽しみだ。