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■ 長野県立美術館で7月1日から8月27日までの会期で開催されている「葛飾北斎と3つの信濃 ― 小布施・諏訪・松本 ―」を昨日(10日)鑑賞した。北斎といえば何といっても「富嶽三十六景」。中でも「神奈川沖浪裏」(写真①)は特に有名な作品。北斎と聞けばこの大胆な構図の錦絵が浮かぶ。「富嶽三十六景」はじめ多くの作品が展示される北斎展の開催をだいぶ前に知って、是非行きたいと思っていた。
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会場1階(写真撮影可)に展示されている上町祭屋台(小布施町上町自治会 長野県宝)に描かれている天井絵(写真②)は色鮮やかで印象的だった。また、岩松院本堂天井絵「鳳凰図」(原寸大高精細復元図)にも魅せられた。小布施町の岩松院へ出かけて実物を観なければ・・・。
会場2階(写真撮影禁止)には数多くの作品が展示されている。平日ということもあってか、会場はそれほど混んでいなくて、それぞれの作品をじっくり鑑賞することができた。
やはり注目は「富嶽三十六景」だ。北斎には富士山のある風景をリアルに表現しようなどという気持ちは微塵もなかっただろう。自身の美的感性によって、大胆な構図に再構成した作品はどれもとても魅力的だ。同じ画題の作品が何点も展示されることで魅力が何倍にもなる、群としての力を感じた。作品の色にも惹かれた。藍色と緑色。緑はぼく自身が今最も関心のある色。青とも言えるし、緑とも言えるような「緑」。
「甲州犬目峠」(*1)は近景にかなりデフォルメされた峠を旅人が登っていく様と遠景に富士が大きく描かれていて、両者が構図的に対を成している。その峠の黄緑、でもないな。手元の「日本の傳統色」で探すと柳染あたりか、と紺色に近い深い緑の組み合わせが絶妙の作品。
「信州諏訪湖」は知らない作品だった。中央に大きな松の老木を2本配した構図で老木の下に茅葺きの祠、遠景に高島城、その更に遠くに富士山が配置されている。祠の屋根と富士山のフォルムが対を成している。そうか、やはりこういう構図もありなんだな・・・。
富嶽三十六景を残し得た北斎のすばらしい人生。芸術作品には100年経っても200年経っても人を感動させる力があるんだなぁ。そう改めて思った。
*1 ネット検索すれば画像が何枚もヒットするが再現が難しいのか、色はまちまち。やはり実物を観なければ・・・。