■ 宇宙で、高山で、海で、我が身が命に係わる危機的な状況に陥った時、何が生死を分けるのか・・・。
同類本(*1)を並べた自室の書棚の写真を載せたが、それらを読んで知ったことは生死を分かつのは、運と備わっている生命力であることは言うまでもないが、強靭な精神力を以ってなされる冷静な判断と行動だということ。
『41人の嵐 台風10号と両俣小屋全登山者生還の記録』桂木 優(ヤマケイ文庫2024年)を読んだ。
カバー裏面の本書紹介文から引く。
**南アルプス・北岳にある両俣小屋。その小屋番による大型台風襲来からの生還記。1982(昭和57)年、全国に95人もの死者・行方不明者という被害をもたらした大型台風10号。台風は若き登山者たちが集まった両俣小屋にも襲いかかり、小屋は土石による崩壊の危機に直面する。(後略)**
小屋番の星美和子(著者の桂木 優)さんのリーダシップ、偶々小屋で一緒になった大学生らの各パーティの共助と書くと、なんだかあたり前のことが当たり前になされたという印象を与えてしまいそうだ。しかし危機的な状況下で、冷静に判断し、冷静に行動するということは難しいと思う。
『41人の嵐』には、容赦なく降り続く雨、鉄砲水の襲来、押し寄せてきた土石で1階が埋まる両俣小屋の様子、小屋をあきらめて北沢峠の長衛荘を目指して、横川岳(2478m),仙丈ケ岳(3033m!)を越えていく登山者たちの様子が描かれる。
**最後の急登で三重短大の女の子が倒れてしまった。顔は青ざめているが唇はまだ赤い。仲間たちが衣服を緩め手足をマッサージする。(中略)彼女は、申し訳ないという風に気丈にも立ち上がろうとするが、すぐ倒れ込んでしまう。**(177頁)
**愛知学院大の平子君が、彼女が背負っていたザックを背負った。**(177頁)
**みんなはよろよろしながらも一歩一歩稜線を登ってゆく。靴下だけで歩いている松岡さんも必死で足場を求めている。よつんばいになって登っている人もいる。風は衰えをみせず吹きまくる。**(189頁)
**「ガンバレ、ガンバレ、ガンバレ、ガンバレ」**(191頁)
書いていて涙が出る・・・。
最後の一文の引用は控えたい。
一読をおすすめします。
*1 右側に並ぶのは書名から分かる通り、旅行記。