透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「散華」 本が好き

2025-01-17 | A 読書日記

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 杉本苑子の『散華 紫式部の生涯 上・下』を昨年(2024年)の7月に図書館本で読んだ(過去ログ)。

手元に置いておきたいと思い、文庫本を買い求めた。こんなことをするって、理解してはもらえないのではないか、と思うが・・・。いや、そうでもないのかな。所有欲ってあるから。


以前のように色んなこと書いて、という声あり。

 


「日米戦争と戦後日本」を読む

2025-01-17 | A 読書日記

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 高校の同級生IT君に薦められていた『日米戦争と戦後日本』五百旗頭  真(大阪書籍1989年)を読んだ。良書。論考の展開が分かりやすいことに因るのだろうが、思いの外読みやすかった。

著者は本書で日米開戦から日本の敗戦、占領に至るまでの間、政治家たち、それも主にアメリカの政治家たちがどのように考え、どのように行動したかを詳細に説いている。

アメリカの対日占領政策の検討が開戦直後に既に始められていたという。冷静に分析すればアメリカが勝利することは、日本でも分かっていたのだから、驚くにはあたらないか。

本書は序章から終章まで六つの章で構成されているが、第一章で六つの日本処理案が示されている。その中で最も過激な〈国家壊滅・民族奴隷化論〉が採られていたら・・・。アメリカの世論調査では3~4割の国民が戦争中にこれを支持していたという。〈隔離・放置論〉もあったそうだが、やはり、採られなかった。知日派による冷静で寛大な対応が採られたことを本書で知った。日本にとって、不幸中の幸いだったと思う。

今日17日付信濃毎日新聞に朝鮮戦争に関する記事が掲載されていた。記事に朝鮮戦争について次のような解説がある。**1945年8月の日本の敗戦を受け、植民地だった朝鮮半島は北緯38度線を境に南側を米国が、北側をソ連が分割占領し、48年、韓国と北朝鮮が成立した。(後略)**(17面文化面)

このようなことは日本では起こり得なかった、と言えるのか、言えないのか・・・。

本書を紹介してくれたIT君に感謝したい。ぼくも本書(*1)をブログ閲覧者にお薦めしたい。


*1 講談社学術文庫に収録されています。


『『罪と罰』を読まない』を読む C1

2025-01-17 | A 読書日記

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『『罪と罰』を読まない』岸本佐和子、三浦しをん、吉田篤弘、吉田浩美(文春文庫2019年)を午後カフェ読書@スターバックスコーヒー 松本平田店(今後スタバ平田店と略記する)で読み終えた。


自室にある『罪と罰』ドストエーフスキー(米川正夫訳 河出書房版 世界文学全集 18)の巻末を見ると昭和44年11月20日48版発行、となっている。このことから、ぼくがこの本を読んだのは昭和44年(1969年)か、その翌年だと思われる。55年!くらい前。

主人公のフルネームがロジオン・ロマーヌイチ・ラスコーリニコフ、ということだけは今も忘れず、覚えている。重要な登場人物のソーニャという女性のフルネームは全く覚えていない。同書の最初に出ている主要人物の紹介で、ソフィヤ・セミョーノヴナ・マルメラードヴァだと分かった。他の登場人物の名前は全く覚えていない。当時も登場人物の名前を全て覚えて読んだわけではないと思う。無理、無理。ちなみにドストエフスキーのフルネームはフョードル・ミハイロヴィビッチ・ドストエフスキーだって(312頁)。

全国の高校生が出場するクイズ番組で登場人物を5人フルネームで答えよという問題がでたら、答える高校生はいるだろうか。いるかもしれないな。

ストーリーは忘れてしまった・・・。ラスコーリニコフが金貸しの老女を殺害する(忘れていたけれど、その時もう一人殺害していた)。そのことを娼婦のソーニャに告白する。ソーニャに説得されて自首する。ラスコーリニコフはシベリア送りとなり、ソーニャも一緒に行く・・・。こんな程度ではあらすじにもならない。

さて、『『罪と罰』を読まない』。

この長編小説『罪と罰』を読んでいない岸本佐和子、三浦しをん、吉田篤弘、吉田浩美の4人が、それぞれ知っているごく少ない情報からストーリーを推測していく様子が収録されている。

4人の未読座談会の当日、小説の最初のページと最後のページだけが資料として配布される。だが、いくら何でもそれを読むだけで、ストーリーを推測することなど到底無理。そこで、六部(六編*)から成るこの小説の各部(各編)について4人が、最初がいいとか、いや最後から20ページ遡ってとか相談して決めた1ページを立会人が朗読する。これを各部2回することで推しはかる、ということに。

このような試みを冷めた目で見れば、なんだかなぁという否定的な評価もあるだろう。でも物語の構成も推測しながらあれこれ語る様子はなかなかおもしろかったし、さすがと思うこともあった。ストーリーがきっちり頭に入っていれば、しをんさん鋭い!とか、全然外れているとか、4人の推測を楽しむこともできるだろう。まあ、覚えていなくても『罪と罰』を参照しながら、未読座談会の発言を確認してもよいと思うが、それには相当時間がかかる。

4人は未読座談会の後、**読んだあとに、また集まって話そうよ―。**(202頁)となって、『罪と罰』を読む。そして今度は読後座談会をする。4人の発言を読んで、さすが読みが深いと思うことしばしばだった。長編なのにきっちり読み込んでいる。

**(前略)ソーニャはすごくかわいい容姿なんだろうなって想像してたんですよ。でも、読んでみたら、じつはそうでもないみたいで。(後略)**(241頁)これは吉田浩美さんの発言。ぼくの記憶の古層に辛うじて残っているソーニャはとてもかわいい娘なんだけど・・・。どうやら記憶も改変されてしまうらしい。

このくらいで切り上げて、読みかけの『日本文化の多重構造』佐々木高明(小学館)を読まなきゃ。


* ぼくが読んだ河出書房版 世界文学全集の『罪と罰』は「編」となっている。


細かい活字で2段組、およそ630頁。