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『『罪と罰』を読まない』を読む

2025-01-16 | A 読書日記

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『『罪と罰』を読まない』岸本佐和子、三浦しをん、吉田篤弘、吉田浩美(文春文庫2019年)を午後カフェ読書@スターバックスコーヒー 松本平田店(今後スタバ平田店と略記する)で読み終えた。


自室にある『罪と罰』ドストエーフスキー(米川正夫訳 河出書房版 世界文学全集 18)の巻末を見ると昭和44年11月20日48版発行、となっている。このことから、ぼくがこの本を読んだのは昭和44年(1969年)か、その翌年だと思われる。55年!くらい前。

主人公のフルネームがロジオン・ロマーヌイチ・ラスコーリニコフ、ということだけは今も忘れず、覚えている。重要な登場人物のソーニャという女性のフルネームは全く覚えていない。同書の最初に出ている主要人物の紹介で、ソフィヤ・セミョーノヴナ・マルメラードヴァだと分かった。他の登場人物の名前は全く覚えていない。当時も登場人物の名前を全て覚えて読んだわけではないと思う。無理、無理。ちなみにドストエフスキーのフルネームはフョードル・ミハイロヴィビッチ・ドストエフスキーだって(312頁)。

全国の高校生が出場するクイズ番組で登場人物を5人フルネームで答えよという問題がでたら、答える高校生はいるだろうか。いるかもしれないな。

ストーリーは忘れてしまった・・・。ラスコーリニコフが金貸しの老女を殺害する(忘れていたけれど、その時もう一人殺害していた)。そのことを娼婦のソーニャに告白する。ソーニャに説得されて自首する。ラスコーリニコフはシベリア送りとなり、ソーニャも一緒に行く・・・。こんな程度ではあらすじにもならない。

さて、『『罪と罰』を読まない』。

この長編小説『罪と罰』を読んでいない岸本佐和子、三浦しをん、吉田篤弘、吉田浩美の4人が、それぞれ知っているごく少ない情報からストーリーを推測していく様子が収録されている。

4人の座談会の当日、小説の最初のページと最後のページだけが資料として配布される。だが、いくら何でもそれを読むだけで、ストーリーを推測することなど到底無理。そこで、六部(六編*)から成るこの小説の各部(各編)について4人が、最初がいいとか、いや最後から20ページ遡ってとか相談して決めた1ページを立会人が朗読する。これを各部2回することで推しはかるということに。

このような試みを冷めた目で見れば、なんだかなぁという否定的な評価もあるだろう。でも物語の構成も推測しながらあれこれ語る様子はなかなかおもしろかったし、さすがと思うこともあった。ストーリーがきっちり頭に入っていれば、しをんさん鋭い!とか、全然外れているとか、4人の推測を楽しむこともできるだろう。

4人は未読座談会の後、『罪と罰』を読む。そして今度は読後座談会をすることに。4人の発言を読んで、さすが読みが深いと思うことしばしばだった。長編なのにきっちり読み込んでいる。

このくらいで切り上げて、読みかけの『日本文化の多重構造』佐々木高明(小学館)を読まなきゃ。


* ぼくが読んだ河出書房版 世界文学全集の『罪と罰』は「編」となっている。


細かい活字で2段組、およそ630頁。


 


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