透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「現代建築の課題」伊東豊雄さんの講演

2023-12-02 | A あれこれ

 信毎メディアガーデンで一昨日(11月30日)の午後開催された建築家・伊東豊雄さんの講演会に参加した。

伊東さんの講演は諏訪で暮らした2歳から中学3年の中途で東京へ出るまでの様子の紹介から始まった。伊東さんが子どもの頃は冬になると諏訪湖が全面結氷して、下駄スケートをしたとのこと。諏訪湖に稀に出現したという水平虹の紹介も。諏訪湖は伊東さんの原風景だ。

続いて、諏訪湖のほとりに計画された「下諏訪町立諏訪湖博物館・赤彦記念館(過去ログ)」や、「ぎふメディアコスモス(写真①、過去ログ)」、東日本大震災後に計画された「みんなの家」などが取り上げられ、それらの計画について解説された。


ぎふメディアコスモス 撮影日:2016.12.03

講演の終盤に示された伊東さんの目指す建築、それは「人と人をつなぐ 人に心の安らぎを与える 人に生きる力を与える」というものだった。このような想いはやはり東日本大震災後に計画された「みんなの家」プロジェクトの経験に因ることろが大きいのだろうな、と思う。伊東さんはプライバシー最優先の建築に疑問を呈し、もう一つの家をつくることの意義について説いておられた。

伊東さんが掲げたこのような課題に応える建築は壁をつくらないことで実現するのではないかと、講演を聴いていて思った。

壁をつくる建築から壁をつくらない建築へ

近代建築の一義は壁によって、自然から切り離した空間をつくり、その中に壁を設けて(間仕切りとは内部空間を仕切る壁のこと)、機能に対応する空間をつくることにあると思う。建築の平面計画は壁の計画、と極論してもいいのではないか。

講演ではだいぶ時間を割いて、ぎふメディアコスモスが紹介された。この建築の主要な内部空間には壁がない。替わりにグローブと呼ばれる大きな傘のような装置が空間の領域をゆるやかに規定している。それでいて空間の全域が繋がっている。子どもから大人まで市民にもう一つの家として親しまれている様子がスクリーンに映し出された。伊東さんが望む好ましい光景。

ぎふメディアコスモスは現代建築の課題として伊東さんが自らに課したテーマに対し、現時点で示し得た回答ではないか、と思う。

1941年生まれの伊東さんは現在82歳。まだまだ「現代建築の課題」に取り組みたいという意欲を示され、講演を終えられた。すばらしい。

今後、伊東さんはどんな建築を創り出すのだろう・・・。楽しみにしていたい。

② 420
講演会場の信毎メディアガーデン(伊東豊雄さん設計) 
撮影日時:2023.11.30 16:56PM

夕方5時近くに講演会が終わり、外に出るとすっかり暗くなっていた・・・。


 


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