何年か前に経済産業省からT氏が茨城県の商工労働部長として出向していた。地域経済活性化のために強い情熱を持ち、いろいろな政策を実行していた。筆者もつくば市地域の活性化のためにイベントを提案したりベンチャー企業同士の連絡網を作ったりした。
地方経済活性化というと株式会社の新規登記がいくつあるか?利潤を上げている企業はいくつ有るか?などという経済活動のことが中心になる。
しかし、つくば市のいろいろな人々に話を聞くと、地域活性化は経済的なこともあるが
むしろ住んでいる人々の社会活動や文化活動の豊かさへ関心が深いことが分かった。
つくば市の美術館の企画展、音楽会の計画、そして「里山を守る会」などがよく話題に上がった。
以前、伊東市の地域文学会の「岩漿」16号誌の読後感の記事を掲載した。その折に感じたことは「岩漿」は地域活性化へ貢献しているのではないかということである。そこでこの文学会の成立のいきさつを会の代表の木内光夫氏に問い合わせた。
11年前の平成9年に違う職業の5人が意気投合して結成したそうである。詩人で会社経営のK氏、元地方紙の記者で会社員のM氏、書家でペンション経営のA氏、主婦で地域婦人運動家のF氏、そしてホテル勤務の木内氏の5人である。このように5人が相談出来たのは偶然ではないだろう。そのころは全国の地方自治体や商工会議所などが異業種交流を盛んに進めていた時期であった。伊東市もその例外ではなかったのだろう。
この文学会は、その後財政的な問題を解決しながら30人から多いときは50人の会員で11年間も存続し、同人誌「岩漿」を16冊も発行している。国会図書館から静岡県の市町村の公共図書館へ寄贈し広く地域の人々を読者とし、地方の文化活動を豊かにしている。他にこの文学会は単行本の発行や地方の多くの文学会とも交流している。
地域活性化を推進するとき経済的なことと同時に地域の文化活動の活性化も同時にすすめたほうが良い。最後にもう一つの身近な例を記してみたい。筆者は東京都の小金井市に44年住んでいるがここには小金井新聞という旬刊の小さな新聞が38年前から存続している。読売新聞購読者へ10日おきに配達されている。記事内容があくまでも小金井市政や小金井警察署、消防署の活動や地域のイベント、市内書店のベストセラー、休日診療の病院リスト、などなど住民への情報サービスを行っている。38年間編集方針が変わらないのが安心できる。また「小金井風土記」などのような地域歴史書の発行もしている。このような小さな文学会やミニ新聞社は全国に数多くあるだろうが、上記ではたまたま身近にあった2つの例を示した。
インターネットを用いたホームページやブログも地域活性化にとって非常に重要であるが、小さな新聞や地域に基盤をおいた同人誌も大切にしたい。 (終わり)