天井裏で、突然『ゴト・ゴト』と言う異常音が鳴り出した。
『おやなんだろう?』当初は建屋内の何かこすれる音位と思い、余り気にもかからななかった。
それが、定期便のように鳴り出し、しかも音は長く激しく、初めて鼠の存在を認めた。
居心地の良さから己の住み処とばかり我が意を得たように、天井裏を運動場の如く走り回り、天井板が反響させ、居心地の良さから、暫くは住まいとなってしまった。
今までなかった平穏の世界を突如表れた、怪しき小動物の騒音に一気に、巻き込まれ、騒然たる中での世界に引きひきずりこまれてしまった。
初めての鼠の存在に、成すすべきことも判らないまま、鼠の存在場所に天井の内側から、せいぜい棒で叩く、威嚇攻撃しかなかった。敵もさるもの、音だけでは己に降りかかる危険もなく、姑息的な手段では最早効果なく活動は全く止むことはなかった。
◇捕縛作戦失敗
やり放題で、定期便の騒乱繰り返しに、最早我慢出来ず、敵、掃討作戦に立ち上がった。
音の根源である敵の陣地に乗り込み、一網打尽の白兵戦に挑むしかないと、戦闘準備に入る。 押し入れの天井に出入り口を見付け、開口し、0.7屯の巨体をよじりながら、天井裏に何とか突入する。
闇の中、懐中電灯を便りに、左右に走る梁を またぎ、匍匐前進で部屋の一番奥地の敵の拠点に何とか辿りつく。
敵は関知したのか既に陣地から撤収を図り、何処か遁走していた。招かざる敵の全滅作戦に陣地周辺に市販の薬を蒔いて、撤収を図った。
窮屈な天井裏の世界、手足を伸ばし、足場をさぐりながら、手、足をかけながらの、一歩一歩の移動は難渋を究め、僅かな突起物の壁をよじ登るボルダリングのようであった。
薄い天井板を抜けない様に、注意をはかり、暗闇から脱出し、無事地上への帰還は息も絶え絶えでへろへろ、変則的な姿勢は腰の負担を生み、激痛は終日 続いた。
そんな敵殲滅作戦に期待をかけたが、敵もさるもの、数日たっても、報われず、戦果のないまま敵殲滅はどうやら空振りに終わってしまった。
そんな戦いを背景に、一時は納まったが、招かざる敵の襲来を予想し、かなりの出費を覚悟に専門業者さんに調査・対策をお願いした。
◇調査結果から
これまでの発生状況をヒアリングし、室内、屋根裏、床下、建物外周壁について徹底調査にかかる。
その調査結果から、天井に尿と糞とも併せ、屋外での木の実、皮、木片など食い散らかした食べ滓なども見られる。
①『クマ鼠』と『ドブ鼠』の2種の存在が認められた。
『クマ鼠』は木登りが得意で行動が自由で隙間があれば場所を選ばず何処でも入って行ける。天井の音は明らかに『クマ鼠』であったようである
『ドブ鼠』は行動が平面的で泳ぎが得意、床下の多数の鼠穴から床下部分を生息する『ドブ鼠』の存在が認められることであった。
②屋根裏
天井下に、冷蔵庫などがあると、冷蔵庫の排気熱が壁伝いに、天井部分を温め、鼠の格好の生息場所にもなっている痕跡があった。天井板に所々のシミは広範囲にわたり、尿の跡が見られる。
③建物のコンクリート基礎の沿いの地下部分が深く掘られ、鼠穴が見られる
◇深層世界へ
専門プロは作業服に作業帽、防毒マスくに身を固め、普段見ることのない床下の世界、更に地中の深層の世界へ潜って いく。日頃培われた経験を背景に鼠穴など痕跡を一切見逃さないプロの技の見せ所であった。
作業服は真っ黒に汚れ、正に土にまみれ、厳しい環境の中も厭わず、突き進むプロの姿が彼らの真骨頂でもある。
カメラを通して、地中の世界の中、敵の痕跡を赤裸々に撮へ、記録に残し、敵の進路阻止の展開に繋げる。
敵(溝鼠)は柔らかい土を堀る習性と侵入ルートを探しあてる掘削能力と探索能力を供えている。通風孔や建物基礎など配管周りなど軍事境界線を難なくくぐり抜け、住み心地の良い、世界に出没することが出来るのである。
音もなく、深く潜行する敵には監視の目が全く届かず、全く無防備、敵は我が世の春とばかり潜伏破壊工作が脈々と行わ れていたのである。
◇捕縛作戦
『御用だ~、観念しろ』
天板の上に粘着板が載っているので、一歩足を踏み入れ掴まると、板の接着に必死に逃れようとバタバタ暴れようとするので凄い音がする。大凡10~20分逃れようとするが、暫くして観念すると言われている。
粘着板は2階天井、1階天井、床下と併せて数十枚を仕掛ける。
◇餌はカナリヤ餌
餌はカナリヤ餌で食べると殻を残すので、どれだけ食べたか判りやすく建屋内部の生息モニター。
これでどの位居るのか、大人か子供か調べる。
餌をしかけ、数が減ってきて、音がしなくなり、餌も変わら無いこと事が判れば、外回りの混入口を塞ぐ作業に入る。 餌の様子を見て、段階的に閉鎖していく。
◇進入ルート閉鎖作戦対策
敵は家屋に一端入り、生活拠点になると、軍事境界線の進入ルートを覚え、外部との出入りは自由となる。
更に地中や建屋の壁など可能性のある進入ルートを閉塞し、完全に外部と遮断することである。
①建屋周りの閉鎖
通気孔は細かいメッシュのハウスキーパーを取り付け、雨戸の戸袋の開閉蓋、配電盤のケーブル貫通孔のパテ装着など、など考えられる通路口は完全に閉鎖
②ねずみ穴閉塞作戦
床下基礎や配管周辺が地中深く掘られていた鼠穴を地表面で固め塞ぐ。
塞いだ地表面に防草剤マサドミックスと言われる、赤色のセメントを塗り固める。コンクリートは除草を兼、
ピン ポイント固められる。固まるのに1、2日以上かかるが固化後、人力では壊せない、特色をもっている。
目立つ橙色であるが、施工後何処をやったか判りやすい。
◇敵(ねずみ)監視体勢
こうした仕掛けを造り敵の行動を3カ月継続監視は完了し、そのまま閉塞措置が継続される。
以来、怪しき音に敏感になっており、紛らわしい音も聞こえたが、果たしてそれが敵の潜入か、未だ判らない。
大騒ぎしたわりには、実際には結果が小さいこと『大山鳴動して鼠一匹』のことわざで言われているが、このまま の終焉を祈りたい
住まいの北側一帯は多摩平に通じる東西に走る丘陵地帯で自然の中「黒川公園」になっている。丘陵下では湧水が あり、年を通じて枯れることなく、名水地域ともなっている。そんな自然環境が当然、鼠達も格好の住み処であろう。此処を根城とする駐屯基地から、食や居心地の良い居住を求め、近接する住宅地に浸透を図るのは当然であろう。一見可愛いが、騒音、ダニ・ノミの寄生虫の発生、ケーブルのショート事故などなど、実害は大きく警戒は怠れない。
以下のhpでその様子を書いてみました。併せてご覧ください
『大山鳴動して鼠一匹』