芥川賞作家、南木佳士の本に触発され、佐久周辺の山を歩いています。
と言っても、還暦過ぎから始めた山歩き、
楽に行けそうな山を最重点に選んでいるのですが。
今まで行ったのは、浅間山外輪山(黒斑山)や蓼科山、
そして今回は、北横岳でした。
11月末、快晴なれど山頂は零下3度。
時折10メートルを超すような風が吹き、
折角の眺望もゆっくり見て居られません。
ところが、山頂を少し下ったところに、異次元の世界がありました。
この季節、ほとんど人が立ち入らない七つ池です。
真っ青な空の下、真っ白な霧氷が木々を包んでいます。
その霧氷が折からの微風に飛ばされ、
結氷した池の表面に静かに降っています。
あまりに出来すぎた場面設定に、
偉大な舞台デザイナーの存在を感じてしまいました。
この情景を詠もうとしたのですが、うまくいきません。
あの時の感覚では、真っ青な空が真っ白なおしろいを降らせている、
と感じたのですが、そのまま読むと誰にも分らぬ句になりそうです。
そこで、白→雪うさぎ→月→かぐや姫→白粉と連想を重ねて行ったのですが、
これを書いてる内に、その努力は無駄だったのではないかと思ってきました。
何時まで経っても、独りよがりの思いに縛られ、
自由な身動きができぬ自分を、また笑ってしまいます。
なるほど。見たままから、だんだん擬人化して行った句ですね。
青空が白粉をこぼす・・・
青空の上に天女がいて白粉をこぼす、とも、
あるいは、青空そのものが化粧している、とも読めます。
そのままのフレーズでも、下五の置く言葉によって
一句が成立すると思います。
遅足