2020年8月8日の天声人語は 〈戸籍簿よ早く焼けてしまえ誰も俺の息子を覚えてるな〉 長い詩の中から引用している。
金子は 息子を戦争に行かせないため、赤紙が来た時、息子の体を痛めてまで診断書を提出している。
「冨士」の中で<息子よ この手のひらに もみ込まれてゐろ帽子のうらへ一時消えてゐろ>
金子は各人が各人のやり方で軍を拒否するべきだと考えていたと 。
冒頭には
咳の子のなぞなぞあそびきりもなや 中村汀女
子を殴ちしながき一瞬天の蝉 秋元富士夫
万緑の中や吾子の歯生え初むる 中村草田男
の三句をのせている。
子育ての名句は戦前戦中に多く出ているというが、直接俳句からではなく、金子の詩が中心になっている。
「戦地 に送ることを思いながら 子を育てる、子も戦争で死ぬことを思って育っていく、この国にそんな時代があった。戦争はいつも若者の命を要求する仕組みである。」と締めくくっている。
7月31日の 朝日歌壇に
九条を変える政治家選ぶのも戦に行くのも死ぬのも若者
という中井周防の 歌が載っていた。 千香子