福井県小浜市加斗(かと)海岸から見た青嶋
明治期の明星派は歌人、山川登美子は福井県小浜市の出身。
故郷を詠んだ短歌が数多くあります。
真帆かた帆小嶋が沖に見え初めて磯なれ松の影うすれ行く
漁火の三つ四つ五つほの見えて青嶋守リの夢静かなり
小嶋は小浜湾の沖、向かって右側に浮かぶ二つの小嶋のこと。
青嶋は同じくその左側に浮かぶ無人島で小浜市加斗(かと)地区にあります。
ナタオレノキやタブノキなど暖帯性の常緑植物が一年中、生い茂っていて、国の天然記念物に指定されています。
夕暮れともなると、小浜市街から沖合いの青嶋あたりに漁火(いさりび)をいくつも見ることができます。
青嶋には弁天様を祀る小さな社があって、毎年7月にはお祭りがあり、加斗の浜から神官と地元の人たちが船で出向いているそうです。
私が子供の頃は今と同じ無人島でしたが、明治の頃は島守リがいたのかもしれません。
3 年前、私は加斗の海岸まで行って青嶋を近くで見ることができました。
この加斗地区は北朝鮮に拉致された地村夫妻の出身地です。
地村保志さんの妻、旧姓浜本富貴恵さんは私の生まれた阿納尻(あのじり)の集落から山一つ越えた阿納が出身地です。
拉致された昭和53年当時、身近な人だっただけに、ニュースで知って大きなショックを受けました。
婚約中だった2人は加斗から近い小浜公園で突然拉致されました。
加斗の海岸に来て、私の想いを詠んでみました。
海神(わたつみ)の向こうの半島想像し拉致されし海岸に立つ
竹中 敬一