春場所のいちご横綱「でかほっぺ」 等

今月の「春苺」句会で見事優勝した等さんの句です。折しも大相撲春場所開催中。そこに苺を取り合わせた見事さ。おめでとうございました！！春らしく勢いのある秀句。かぎかっこも効いています。

「でかほっぺ」は「紅ほっぺ」の株から育った巨大な苺。通常サイズの４倍以上。大きさを競う今年の「でかほっぺグランプリ」では１粒１３４グラムの苺も登場したそうです。まさに堂々と苺界の横綱の土俵入りです。

それでは皆さんのコメントをご紹介します。

竹葉さん：苺は大きい方が甘いですよね。1粒630円もするという、こぶし大の「でかほっぺ」、是非見たいし食べたいと思わせてくれる句だと思います。

千香子さん：店先の大きなイチゴにびっくりしてなんとか詠みたいと思っていました。本当に「でかほっぺ」というのがあると知り驚きました。

郁子さん：なんとユニークな命名でしょう。しこ名ですか？紅ほっぺのことと思いますがとにかく大きいのでしょう。春場所と横綱が一句に同居して季節感と同時にジャンボ苺がでーんと目にうかびます。

亜子さん：　春苺という季語でこの発想がすばらしい。「でかほっぺ」というネーミングにも驚き、目に浮かびます。

　　　　　　　　　　　　　　　　★★★

結宇さん、佐保子さん、能登さんも選句されています。ネットで見たら本当に大きくてびっくり！お値段も横綱級ですが一度食べてみたいですね。ほっぺもでっかく膨らみそうですね。麗子

追伸　皆さん地震大丈夫でしたか？お見舞い申し上げます。

 

三月句会「春苺」結果発表！

 

1. 　春場所のいちご横綱「でかほっぺ」　（等）竹葉　結宇　千香子　麗子　郁子　佐保子　能登　亜子
2. 　名付けられ産地をせおう春苺　（晴代）等　須美　千香子　麗子　泉
3. 　はやばやと春の苺の幸食めり　（亜子）須美
4. 　朝市に あでやか添えし 春苺　（紅）殿
5. 　新学期蔕（ヘタ）青白く春イチゴ　（結宇）
6. 　糸籤の 手繰る苺は 春の飴　（殿）郁子　紅
7. 　はれの日のときめき吸うや春苺　（竹葉）須美　佐保子　泉　紅
8. 　春苺めでたき朝の食卓に　（麗子）晴代
9. 　さよならと言う時来たり春苺　（能登）殿　千香子　遅足　泉　亜子　紅
10. 　いちご載るプランタニエをえらびたり（佐保子）郁子
11. 　春苺あとの一粒ママのもの　（郁子）竹葉　等　晴代　能登
12. 　春苺ろうそくをふつと紀寿の母　（千香子）結宇　麗子
13. 　春苺お供え香る奥座敷　（須美）竹葉　亜子
14. 　青春の甘さ酸っぱさ春苺　（泉）等　晴代　遅足　佐保子
15. 　卒園や苺コサージュはずむ胸　（健太）殿　結宇　遅足　能登

 

自由題

1. 　はこべらの小さき花やウクライナ　（佐保子）麗子　郁子　能登
2. 　寝もやらず 燃ゆるキエフの 春願ふ　（紅）殿　千香子　亜子
3. 　菜の花や黄色い声を塗り込めて　（竹葉）結宇　遅足　泉
4. 　空襲を逃れし記憶雛飾る　（亜子）竹葉　等　佐保子　能登
5. 　春陽射る郵便受けに友訃報　（結宇）
6. 　春が来ぬ点滴落ちる速さにて　（等）須美　結宇　晴代　遅足
7. 　春雪や 踏切の音 海に沿う　（殿）等　能登　紅
8. 　ぼんやりと花粉と黄砂伊吹山　（泉）等
9. 　啓蟄や花丸つけし退院日　（麗子）竹葉　須美　結宇　千香子　晴代　郁子　泉　亜子
10. 　マスクなしいけないハグの春の夢　（能登）須美
11. 　サラダ盛りひかり散らばる春の卓　（郁子）亜子
12. 　クレーンのくの字一の字春の空　（晴代）殿　竹葉　千香子　麗子　郁子　遅足　佐保子
13. 　着地なき青春切符春疾風　（千香子）麗子　佐保子　泉　紅
14. 　桜湯の塩気の中に思う明日　（須美）殿　晴代　紅

 

皆さまの予想はいかがでしたか

　春場所優勝　兼題は「でかほっぺ」の等さん

　自由題は　麗子さんでした。

カレンダーに花丸がたくさんつく平和な毎日が続きますよう祈ります。

 

 

 

春苺句会の投句が集まりました。

昨日、鶯の鳴き声が聞こえました。地植えしたヒヤシンスも開花しました。ようやく春が来ましたね。おいしそうな春苺が揃いました。どうぞご堪能ください。

２０２２年３月題詠「春苺」

①      春場所のいちご横綱「でかほっぺ」　

②      名付けられ産地をせおう春苺　

③      はやばやと春の苺の幸食めり　

④      朝市に あでやか添えし 春苺　

⑤      新学期蔕（ヘタ）青白く春イチゴ　

⑥      糸籤の 手繰る苺は 春の飴　

⑦      はれの日のときめき吸うや春苺　

⑧      春苺めでたき朝の食卓に　

⑨      さよならと言う時来たり春苺　

⑩      いちご載るプランタニエをえらびたり

⑪      春苺あとの一粒ママのもの　

⑫      春苺ろうそくをふつと紀寿の母　

⑬      春苺お供え香る奥座敷　

⑭      青春の甘さ酸っぱさ春苺　

⑮      卒園や苺コサージュはずむ胸　

 

 

自由題

①      はこべらの小さき花やウクライナ　

②      寝もやらず 燃ゆるキエフの 春願ふ　

③      菜の花や黄色い声を塗り込めて　

④      空襲を逃れし記憶雛飾る　

⑤      春陽射る郵便受けに友訃報　

⑥      春が来ぬ点滴落ちる速さにて　

⑦      春雪や 踏切の音 海に沿う　

⑧      ぼんやりと花粉と黄砂伊吹山　

⑨      啓蟄や花丸つけし退院日　

⑩      マスクなしいけないハグの春の夢　

⑪      サラダ盛りひかり散らばる春の卓　

⑫      クレーンのくの字一の字春の空　

⑬      着地なき青春切符春疾風　

⑭      桜湯の塩気の中に思う明日　

         

 

 

隣合う 狐狸は眠らず 春夜半 <殿>

「隣合う 狐狸は眠らず 春夜半」The fox that lives next door will not give up at midnight in spring.

飯倉片町のロシア大使館。隣合う「アメリカンクラブ」はCIAが利用するといわれています。狐と狸といった感。深夜のアメリカンクラブ。春の夜が更けていきます。Russian Embassy in Iikura Katamachi. The adjacent "American Club" is said to be used by the CIA. Feeling like a fox and a raccoon that do not give up. Quiet American club. Spring nights are coming.

かの瞳 幼な子のまま 卒業す <殿>

「かの瞳 幼な子のまま 卒業す」 Her eyes graduate as a child.

卒業を機にタレント活動を休止する少女。彼女の瞳は子役の時と変わっていない印象。拙句とは別に大学も卒業式。留学生も多くオンラインの配信がおこなわれます。コロナが終息しても教育現場でのIT利用は一般化するでしょう。 A girl who suspends her talent activities after graduation. Her eyes are the same as when she was a child actor. Apart from my haiku, the university I teach is also a graduation ceremony. Many international students are delivered online at the university. Even if the corona is over, the use of IT in educational settings will be generalized.

 

内股となり骸骨模型冬星座 千香子

面白い俳句ですね。

麗子さん：骸骨模型を俳句に詠まれた斬新さに一票です。理科室の骸骨模型、そういえばちょっと内股だったような。

冬星座との取り合わせは少し無理があるような気がしましたが、これも星座表が理科室に貼られていたのでしょう。

　私も同じように感じていただきました。

吊り下げられた骸骨の足が内股になっているという観察眼が良いですね。

怖いというより、人間味のある（元々人間でしたわ・笑）親しみやすさを感じました。

 

そんな中、このような解釈も。

能登さん：「老い」を突き放した視点で詠んだ佳句

 

えっ！ひょっとして自分自身を自虐的に詠んだ・・？

人間全般一皮むけばという冷めた視点なのでしょうか。ちょっと気になり聞いてみました。

 

そこで掲載の写真です。大学生のお孫さんが実習で作った骸骨の模型です。素晴らしい！

この写真から発想を飛ばした句だったのですね。

作者曰く。最初は　骸骨を作る実習冬銀河　としたのですが、これ恐ろしい。→　魚の干物じゃあるまいし、

生身から作るみたいな感じで、我ながらびっくり。

思案の末、模型が完成したら内股になってしまったということにしぼり、

人間の不思議さと、いずれは天に帰る人間の結びつきとして空の星を思いつき、季語として冬を入れたとのことでした。

　　

骸骨のような星座があっても面白いかなーなど・・　作者の想像は膨らんだようです。

お孫さんの送ってくださる写真から、また俳句を作って投句してください。郁子

 

淡雪のうっすら哀し生きるとは 郁子

何とはかなく心に響く一句でしょうか。「うっすら」が効いています。まずは皆さんのコメントからご紹介します。

殿様：「淡雪」の意は「うっすら積もり溶ける」中七の「うっすら哀し」韻が潜んでいるのでしょうか。句の奥深さがさまざまな人の共感を得るでしょう。他句の追随を許さない秀句と評価します。

竹葉さん：「淡雪」も「うっすら」も語感に深刻さがないいい句だと思います。

紅さん：重みのある句だと思います。下五の締め方も素敵です。

亜子さん：今の私の毎朝の心境にぴったりです。「うっすら」が効いています。淡雪に託した心境句。

　　　　　　　　　　　　★★★

私もいただきました。

確かにこういう気分の時あります。淡雪は美しいけれど、はかなく消えていきます。生きていく限り、誰も、老いや病気、死は避けて通れません。そんなことを思うと人生はうっすら哀しいのです。それでも生きていく私たち。でも、この句を見た時なぜか、「負けへんで！！」そんな気分になれました。

作者の郁子さん曰く、「雪の日にふわっと出来た」句だそうです。

そのせいか、全く肩に力の入らない、それでいて人生の核心をつく句だと思いました。うっすら積り、やがて消えていく。まさに人生を凝縮した哲学的な俳句。郁子さんの俳句の奥行は広いと改めて思いました。麗子

 

佳人逢う 想い出冴えし 春夕焼け <殿>

「佳人逢う 想い出冴えし 春夕焼け」I met a beautiful woman. Spring sunset with clear memories. 

夕焼けの想い出は美しい女性との待ち合わせ。澄み切った空が美しい春の梅田。Meeting with a beautiful woman. I remembered at sunset. “Umeda” in spring with a beautiful clear sky.

キエフ燃ゆ 地球の裏の 吊るし雛 <殿>

「キエフ燃ゆ 地球の裏の 吊るし雛」Kyiv on the other side of the earth burns. The hanging chicks sway.  紅氏の友人がウクライナ在住。日本への避難を勧めたとのこと。しかし、母国を離れる気はないようです。ちなみに、原子炉に攻撃が及ぶと放射能の汚染はヨーロッパ全土に広がるといわれています。キエフの惨状を伝えるニュース。吊るし雛がゆっくりと揺れています。撮影地、目黒雅叙園「小さな世界」https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000075.000041601.html

Beni-san’s friend lives in Ukraine. She advised her to evacuate to Japan. However, she seems determined to stay in her home country. If a nuclear reactor is attacked, radioactive contamination is said to spread throughout Europe. News telling the tragedy of Kyiv. The hanging “Hinakazari” are shaking slowly.

雛の目は 遠き戦禍を 見つめをり <殿>

「雛の目は 遠き戦禍を 見つめをり」 Hina's eyes are staring at a distant war

目黒雅叙園「小さな世界」を観覧。穏やかな雛の表情。遠い戦禍を見つめているようです。I watch the "small world" of “Meguro Gajoen”. The gentle expression of “Hina” seems to be staring at a distant battle.  目黒雅叙園「小さな世界」https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000075.000041601.html

読みおえぬページに残る寒さかな 晴代

 

今月の自由題、ダントツで首位を獲得した句です。

 

紅さん：　セピア色に浮かぶ情景が好きです。

結宇さん：読み残しか、単に未読か、先を読もうとすると気持ちの切り替えが必要なのかな。

　その短い時間に、寒さを感じるのでしょう。

麗子さん：寒い日に本を手にした時のひんやりとした感触。

　長編をまだ読み終えず、ページをめくる時に感じる繊細な余寒をうまく表現されたと思います。

等さん：雨の降りそうな日は、テレビでオリンピックを見るか、本を読むのに限りますね。

　早く本を読み終え、出かける準備をして置きましょう。

須美さん：読み終えぬページに寒さを感じる。素敵だな。

千香子さん：本の内容も余程寒かったのでしょうか、私も時々感じることがあります。思い出す本では　大田愛「天上の葦」です。

亜子さん：夜の読書でしょうか？集中力も鈍り、本を閉じた時の心境。寒さの表現が俳句としてすばらしいと思いました。

　　　 

作者は何故、本を読み終えることができなかったのでしょうか。

あまり好きな内容でなかったか。単に忙しかったのか。

消化できない問題が生じて読み終えることができなかったとも想像します。

人生において社会情勢において、どうにも糸口が見つからず先に進めないことはたくさんあります。

　ロシアのウクライナ侵攻・・連日の報道にこころが痛みます。

力で相手を封じ込めることはできないし、それに対抗するのも力ではないはず。

軍事力や核に頼らず、互いの目を未来に向けられないものか。それは甘すぎるのでしょうか。

繰り返す悲劇をこれだけ経験して尚、人類はなかなか進歩できません。やるせなさが澱のようにとどまり、

なかなか本が閉じられません。人類史という本が。　　　　郁子

 

入院の留守宅守る雛飾り 麗子

今日３月３日はひな祭り。そしてわが父の９４歳の誕生日です。（父は昭和３年３月３日生まれというなんだかめでたいぞろ目）

実は父は今、入院中です。１月３１日に大腸の手術をし回復が遅れ、コロナ禍ということで手術後、誰一人面会にも行けず孤独な闘病生活を送っています。毎年、立春には私のお雛様を飾ってくれ「お雛さん、出したで～」と電話がかかって来ていました。今年は入院が決まっていたので一月下旬、早々にお雛様を飾って入院して行ったのです。今も誰一人いない実家の床の間にお雛様が飾られています。

父は、入院前の不安な時にどんな気持ちでお雛様を飾ったのか？亡き母も愛していたお雛様を飾ることにより「きっと帰って来る！」という気持ちを奮い立たせたのか？そんな思いで作った俳句です。

皆様から頂いたコメントです。

郁子さん：いろんな雛飾りの句がある中で、入院の留守を守るという雛は初めてでした。その雛は入院中の家主と作者をつなぐ深い縁があるものかもしれませんが、あえてさっぱりと描くことで慈愛に満ちた雛の笑みを想像させます。

須美さん：入院中の留守宅はさぞひっそりと寂しく思われますが雛飾りがあることでほっこりした優しさが感じられます。きっと入院中の方は元気にお戻りになるでしょう。

亜子さん：◎の句。ひな人形に託した思い。無人の部屋にお雛様が飾られている。ひな人形を擬人化して入院という人生の一つのドラマを垣間見る思い。

　　　　　　　　　　　　　　　　　★★★

ありがとうございました。お蔭様で父の退院がようやく決まり、明後日退院の運びとなりました。お雛様も父の帰りを待ってくれています。「お父さん！がんばったね！！」そして「お誕生日おめでとうございます！」麗子