阿智胡地亭のShot日乗

日乗は日記。日々の生活と世間の事象記録や写真や書き物などなんでも。
  1942年生まれが東京都江戸川区から。

「道楽と仕事」について。小沢昭一の「道楽三昧―遊びつづけて八十年」を読んだ

2022年12月04日 | 音楽・絵画・映画・文芸
2010年05月16日(日)「阿智胡地亭の非日乗」掲載
 

小沢昭一の「道楽三昧」を最後まで読みました。

 部分的に雑誌で読んでいた箇所もありましたが、通しで読むとこの人の持っている遊びのエネルギーの強さと持続性に驚きます。

彼の道楽の一つ「俳句」をこの本からいくつか引用します。

いつもより遠くへ犬と初御空
壁のぼる蜘蛛引き返す思案かな
亀に水かけて残暑の見舞いとす
あの声は捨て小猫らし夜寒かな
稲妻へ遠吠えの犬村暮るる
音もなく猫帰りくる霙(ミゾ)るる夜

内容(「BOOK」データベースより)

虫とり、べいごま・めんこ、相撲・野球…とのめり込んでの道楽少年は、昭和四年生まれ。

八〇歳の今日まで俳優を生業としながら、大道芸、落語、歌、俳句、釣り、競馬、さらには○○まで、存分に遊ぶ。

でも、もしかすると生業も遊びではなかろうかと。いま、職業と道楽の関係に考察が及ぶ小沢昭一遊びの一代記。写真多数。

目次

虫とり―風船虫は友達
べいごま・めんこ・ビー玉―「オイ、勉強しろ!」と父の声
相撲・野球―明けても暮れても鯱ノ里
飲む・打つ・買う―及ばずながら荷風入門
落語―シマッタ!噺家になってれば…いや、やっぱり無理か
芝居―漱石先生、成程そうなんですか!と、うなずけたので、次章「なかがき」を、ぜひ続けてお読み下さい。
大道芸―タイムトンネルくぐり
映画―まだ演りたいのにお呼びがない
俳句―丸儲けぞよ娑婆遊び
歌―わが生涯のラプソディー
競馬―南無!冥土の道連れ
食・釣り・写真など―まだまだあるぜ、いろいろ

 ◎ 小沢のこの本から引用すると、「“仕事”というのは人のためにやるもので、“道楽”というのは自己本位のものなんだという区分けをして、

学者とか科学者とか芸術家とかいうのは、みんな自己本位に仕事をやっているんだからそれは職業じゃなくて道楽なんだということを力説していました。

その講演禄を読んで、ぼくの人生は道楽を積み重ねてきたんだなあということの裏づけを漱石先生から頂いたような気がいたしました」

☆ここを読んで、自分のブログはまさに「道楽」なんだと納得しました。

小沢昭一がいたく感動した夏目漱石の「道楽と職業」という講演。

夏目漱石の「道楽と職業」から一部引用・・・すでに御話をした通りおよそ職業として成立するためには何か人のためにする、

すなわち世の嗜好(しこう)に投ずると一般の御機嫌(ごきげん)を取るところがなければならないのだが、

本来から云うと道楽本位の科学者とか哲学者とかまた芸術家とかいうものはその立場からしてすでに職業の性質を失っていると云わなければならない。

実際今の世で彼らは名前には職業として存在するが実質の上ではほとんど職業として認められないほど割に合わない報酬を受けているのでこの辺の消息はよく分るでしょう。

現に科学者哲学者などは直接世間と取引しては食って行けないからたいていは政府の保護の下に大学教授とか何とかいう役になってやっと露命をつないでいる。

芸術家でも時に容(い)れられず世から顧(かえり)みられないで自然本位を押し通す人はずいぶん惨澹(さんたん)たる境遇に沈淪(ちんりん)しているものが多いのです。

御承知の大雅堂(たいがどう)でも今でこそ大した画工であるがその当時毫(ごう)も世間向の画をかかなかったために生涯(しょうがい)

真葛(まくず)が原(はら)の陋居(ろうきょ)に潜(ひそ)んでまるで乞食と同じ一生を送りました。

仏蘭西(フランス)のミレーも生きている間は常に物質的の窮乏に苦しめられていました。

またこれは個人の例ではないが日本の昔に盛んであった禅僧の修行などと云うものも極端な自然本位の道楽生活であります。

彼らは見性(けんしょう)のため究真のためすべてを抛(なげう)って坐禅の工夫(くふう)をします。

黙然と坐している事が何で人のためになりましょう。善い意味にも悪い意味にも世間とは没交渉である点から見て彼ら禅僧は立派な道楽ものであります。

したがって彼らはその苦行難行に対して世間から何らの物質的報酬を得ていません。麻の法衣を着て麦の飯を食ってあくまで道を求めていました。

要するに原理は簡単で、物質的に人のためにする分量が多ければ多いほど物質的に己のためになり、精神的に己のためにすればするほど物質的には己の不為になるのであります。

全文はこちら


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