阿智胡地亭のShot日乗

日乗は日記。日々の生活と世間の事象記録や写真や書き物などなんでも。
  1942年生まれが東京都江戸川区から。

詩      「表札」    「くらし」         石垣りん

2025年01月15日 | 音楽・絵画・映画・文芸
「表札」

自分の住むところには

自分で表札を出すにかぎる。


自分の寝泊りする場所に

他人がかけてくれる表札は

いつもろくなことはない。


病院へ入院したら

病室の名札には石垣りん様と

様が付いた。


旅館に泊まつても

部屋の外に名前は出ないが

やがて焼場の鑵(かま)にはいると

とじた扉の上に

石垣りん殿と札が下がるだろう

そのとき私はこばめるか?


様も

殿も

付いてはいけない、


自分の住む所には

自分の手で表札をかけるに限る。


精神の在り場所も

ハタから表札をかけられてはならない

石垣りん

それでよい。



「くらし」

食わずには生きてゆけない。

メシを

野菜を

肉を

空気を

光を

水を

親を

きょうだいを

師を

金もこころも

食わずには生きてこれなかつた。

ふくれた腹をかかえ

口をぬぐえば

台所に散らばつている

にんじんのしつぽ

鳥の骨

父のはらわた

四十の日暮れ

私の目にはじめてあふれる獣の涙

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「現代詩の入り口」30 ― 詩にとってのメッセージ性とは何か、を考えたかったら石垣りんの詩を読んでみよう|松下 育男

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