阿智胡地亭のShot日乗

日乗は日記。日々の生活と世間の事象記録や写真や書き物などなんでも。
  1942年生まれが東京都江戸川区から。

映画「おくりびと」が米国アカデミー賞を受賞しました。   2009年02月23日「阿智胡地亭の非日乗」掲載

2022年07月11日 | 「過去の非日乗&Shot日乗」リターンズ
 

今日、映画「おくりびと」が日本の映画史上はじめて、 米国アカデミー賞の 「外国語映画賞」を受賞しました。この受賞はとても嬉しいので、

2月1日に掲載した映画のレビューをあらためて再掲載します。
-------------------------------------------------------------
映画「おくりびと」を観ました。物語の場所の設定は庄内平野の酒田です。

スタッフは最初から酒田の自然を頭に置いて物語を作っていったそうです。庄内平野!そこはなんと美しく、懐かしく、そして厳しい日本の風景でしょう。

 声に出して笑って観ているうちに、いつしかポケットからハンカチを取り出し何回も何回も瞼に当てていました。
それなのにまた声を出して笑っている自分と館内の観客たち。
そんな楽しくて面白くて笑ってしまう場面も,この映画には沢山ちりばめられています。


「納棺師」、そんな職業があることすら知りませんでした。
この映画は「納棺師」を主役に据えて、日常どこにもあり、
自分にも必ず来る「死」を題材にしています。 




死者には自分の死後のまわりの者の思いは、もうわからない。
死者には自分にどんな葬式が営まれるのかは、わからない。

残された者たちの心の平安のために、心をこめて死への旅路の化粧をし、身体を清めて棺に死者を納める「納棺師」。

どの死にも、残された者みなそれぞれに、その家の、またそれぞれの人のドラマがある。
いくつものドラマがこの映画で繰り広げられ、本木雅弘が演ずる「納棺師」自身の父親のドラマがこの映画の最後を締めます。

真正面から死を扱っている映画ですが、私は画面から一度も目を背けるということがありませんでした。

そして、誰にでも、明日にでも来るかもしれない死に、一つとして同じ死はない、そういう当たり前のことを実感させつつ、途中一回もだれることなく最後まで画面に引き込んでくれる映画でした。

これまで沢山の成人映画を作ってきたという経歴の滝田洋二郎という監督は、黒澤明、小津安二郎、今村昌平、宮崎駿、山田洋次などに連なって

日本映画のトップクラスの監督になるのではないかという予感がしました。

出演の本木雅弘も山崎努も、吉行和子も笹野高史も素晴らしいし、
広末涼子の芯のある可愛さもいい。久石譲の音楽もじんと来ます。

監督もホンも役者も三拍子揃った映画だと思います。
いま日本映画には才能が揃っていると私はよくそう書きますが
この映画もそのトレンドを証明する一本だと思います。

映画はハリウッドのアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされましたが、なるほど、国境も時代も越えた「人間の死と、後に残された者たち」を

扱ったすぐれものの映画だと思いました。

「笑って、泣けて、深く人の心を打つ」・・そんな映画を作りたい。スタッフのこの思いに私は見事にはまりました。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 7月10日に目に留まったSNS・... | トップ | 房総の里山便り31 第5ラ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

「過去の非日乗&Shot日乗」リターンズ」カテゴリの最新記事