2006年07月28日(金)ブログ「阿智胡地亭の非日乗」掲載
▼「ジャーナリズム」の本質
従来、日本では「マスコミは、政府から何の規制も受けずに報道している」というのが「常識」で、その常識からすると、
日本のマスコミが政府の意を受けてレバノン戦争のニュースの扱いを小さくしていると考えるのはおかしい、ということになる。
だが、911以来、日本にとっての「お上」であるアメリカが戦時体制を続けていることから考えて、今では日本のマスコミの上層部が、
日本政府から何の「アドバイス」も受けていないとは考えがたい。
世界的に見ると、ある国が戦争を始めたら、その国のマスコミが戦争に協力した報道を行うことは、半ば義務である。
マスコミが政府の戦争に協力しなければならないのは、公的な組織として、抵抗しがたいことである。
マスコミ業界の世界的な中心地であるアメリカでは、マスコミは、開戦後に戦争に協力するだけでなく、
政府による戦争開始の策動に協力してきた。
アメリカのジャーナリズムの賞として世界的に有名なものに「ピューリッツァ賞」があるが、この賞を作ったジョセフ・ピューリッツァは、
1898年にアメリカとスペインの戦争(米西戦争)が始まる原因を作った人である。
米西戦争は、当時スペイン領だったキューバに停泊中のアメリカの戦艦メーン号が何者かによって爆破沈没され、
これをピューリッツァの新聞「イブニング・ワールド」などのアメリカのマスコミが「スペインの仕業に違いない」と煽り、開戦に持ち込んだ戦争である。
メーン号が沈没した理由が、故障による自損事故だったことは、後から判明した。
この米西戦争開始の経緯を見ると、アメリカのマスコミが政府の肝いりで「イラクは大量破壊兵器を持っているに違いない」と煽って開戦に持ち込み、
後で、実はイラクは大量破壊兵器を持っていなかったことが分かったという、105年後の2003年に起きたイラク侵攻と、ほとんど同じであることが分かる。
ピューリッツァとその後の同志たちが巧妙だったのは、自分がやっていた扇動ジャーナリズムを、
洗練された知的で高貴な権威あるイメージに変えることを企図し、成功したことである。
ピューリッツァは、ニューヨークのコロンビア大学に巨額の寄付を行い、ジャーナリズム学科を創設した。
今では、コロンビア大学のジャーナリズム学科は、ジャーナリズムを学ぶ場所として世界最高の地位にあり、ピューリッツァ賞は、世界最高の賞となっている。
「ジャーナリスト」は、世界中の若者があこがれる職業になった。
しかし米西戦争からイラク侵攻まで、「人権」などの一見崇高なイメージを使って敵方の「悪」を誇張し、
自国にとって有利な戦争を展開することに協力しているアメリカのマスコミのやり方は、巧妙さに磨きがかかっただけで、本質は変わっていない。
(ベトナム戦争では例外的に、アメリカのジャーナリズムが自国の政府や軍を批判したが、これは、米政界内で、冷戦派と反冷戦派が暗闘していたことと関係している)
人々が、マスコミによるイメージ作りに簡単にだまされてしまう状況も、105年間、ほとんど変わっていない。
むしろテレビがお茶の間を席巻した分、昔より今の方が、人々は世界的に、より簡単にだまされてしまう状況になっている。
上記は「田中 宇」clickの7月25日付同題の記事からその一部を引用しました。
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2024年7月30日追加
ヘルマン・ヴィルヘルム・ゲーリングは、ナチス・ドイツの政治家、軍人。ナチ党の最高幹部で総統アドルフ・ヒトラーの後継者であった。
ドイツ空軍総司令官であり、軍における最終階級は全ドイツ軍で最高位の国家元帥 。 第一次世界大戦でエース・パイロットとして名声を得る。
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