『 沖縄幻想 』(新書) 奥野 修司 (著) google
三〇年以上、通い続けてきたからこそ見えてきた。『ナツコ 沖縄密貿易の女王』で大宅賞を受賞した著者が、愛情をもって憂う沖縄の未来。移住ブームと土地バブルの崩壊、無秩序な乱開発による自然破壊、癒しの島・長寿社会への幻想、カジノ誘致構想の愚、基幹産業の不在、莫大な補助金の非効率な使途―。沖縄はこのまま東京を小さくしたような何の変哲もない島になってしまうのか。
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フリージャーナリストとして活躍する著者が広い視野から具体的な数字をあげながら示す現状認識は、ひじょうに説得的だ。サラリーマンの記者のレポートとは一味、ふた味も違う。
現状を憂えるだけでなく、お役所の能天気な対応に、具体手的な解決策を提示している。
もはや、一地方の自治体だけの力だけでは解決できないのでは、と思った、ここ数年の沖縄のバブルとその崩壊。
沖縄から島づたいに奄美に旅行するお客さんから異口同音の聞いてはいたのですが、沖縄「幻想」。これほどとは・・・。行って見たくなった沖縄(都市化は一部なのでは)。
03年のゴールソマンサックス(GS)による日航アリビラの買収をはじめとする外資の動き。
リート(reit:不動産投資信託)とよばれる新しい手法だ。
銀行や投資家から資金を集め、買収した不動産を証券化して、宿泊料などの収益を投資家に還元する。
本土の投資家もそれに似ていて最終的に投資会社に売って差益を抜こうという算段だった、というのだが、サブプライムローン問題で建設がストップ。
あちらこちらで骸(むくろ)のようなコンクリートが醜いすがたをさらしているという。
わが奄美でも想像できるだろうか?
補助金付けで、官民とも麻痺してしてしまいかねない経済感覚、利益の大半は本土に流れてしまう構造。
その他、痛いほど奄美と似ている。
観光産業ひとつとっても奄美は沖縄とは一桁違う規模だが、
鹿児島県の奄美は、この沖縄の現状をどう見るべきか。
地方財政の自立などありうるのか。
この本の最後に著者は、戦後の一時期、沖縄独立論がリアリティを持ったことがあったとする事例をのべる前に、次のように述べる。
沖縄が独自の文字をもたなかったことが本土との境界をあいまいにしてしまったのだと思う。
沖縄は、日本に属しているが、異なる文化を持つ、もう一つのクニなのだ。
それゆえに、このまま本土仕様のクニづくりを進めていったら、いつかとんでもないしっぺ返しを食らうことになるような気がしてならない。
そして”おわりに”の最後では、
現在のオジイやオバアたちがこの世を去れば、沖縄の「心」も大きく変貌することだろう。
粛々として沖縄が消え去るのも一興、本書はそのために墓標であってもいいと思っているとむすんでいる。
著者の憂いは深い。
この本は奄美のことにはふれていないが、奄美のわれわれにとっても重いことばだ。
ことしは薩摩藩が奄美沖縄に進行して400年。
当時、軍事力では薩摩藩に及ばなかったものの、文化的には沖縄のほうがはるかにすぐれていた、と今では思える。
ならば今、文化で本土に侵攻をかけなおす、夢を見た(なんかの本で読んだのだが)。