映像:純愛と博愛の作家有島武郎の評論が収められた新潮社文庫本(現在青空文庫参照可)
「惜しみなく愛は奪う」この衝撃的なフレーズが大正時代に綴られたことに驚きを覚える。
人を愛するということは、相手のすべてを奪って自己のものにすること・・・という評論は
国家主義時代の背景下にあって、個人主義を論じ、なによりも強い愛情表現は先進だろう。
原文:評論の一文を下記に抜粋
『・・・人は愛人を見出すことに誤謬(ごびょう)なきことが出来る。そして個性の全的要
求は容易に愛を異性に対して動かさせないだろう。その代り一度見出した愛人に
対しては、愛はその根柢から揺ゆらぎ動くだろう。かくてこそその愛は強い。そ
して尊い。愛に対する本能の覚醒(かくせい)なしには、縦令男女交際にいかなる制限
を加うるとも、いかなる修正を施すとも、その努力は徒労に終るばかりであろう』