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(写真は、中国のスーダン政府容認を批判して抗議するアメリカ市民 先月27日サンフランシスコの中国領事館に42,000人以上の請願署名を渡そうとしたところ、領事館はこれを拒否したそうです。
“flickr”より By ourpledge )
スーダンのダルフールで進行しているスーダン政府・アラブ系民兵によるアフリカ系住民の虐殺については、これまでこのグログでも6月13日、7月8日に取り上げてきたところですが、ここ数日ようやく国際的な介入が具体化し始めました。
先月29日、英ブラウン首相は米ブッシュ大統領と会談、「20万人が殺害され、200万人の国内難民を出し、400万人が食糧支援に頼らざるをえない状況を生み出したダルフール紛争を終結させるための圧力を強化していくことをブッシュ大統領と合意した」そうです。
31日、国連安全保障理事会はスーダン西部の紛争地帯ダルフール地方に、国連とアフリカ連合(AU)の合同平和維持部隊を派遣する決議案を全会一致で採択しました。
昨日1日、従来国連の介入を拒否していたスーダン政府も、この国連とアフリカ連合の合同平和維持部隊の派遣に関する決議案を受け入れると発表しました。
マニラで開かれているASEAN関連の国際会議に出席している中国の楊外相は1日、米国のネグロポンテ国務副長官と会談し、国連安保理でダルフールへの国連部隊の派遣決議が採択されたことついて「各国の協力の成果であり、奨励されるべきことだ」と評価したそうです。
これまでダルフール紛争に対する国際社会の介入が進まなかった原因は、常に指摘されているように、国連の制裁決議を棄権するなど中国がスーダン政府を事実上支持してきたためです。
中国はスーダン産石油の70%を購入しており、多額の兵器売却、投資を行ってきていると言われています。
スーダン政府に最も太いパイプを持ちながら自国権益のためにスーダン政府の虐殺を放置し、これを実質的にかばい続ける中国の対応への批判が強まり、アメリカ下院では5月8日、共和党の有力議員アラン・ウルフ氏が中国政府の「共犯」を非難して、北京五輪ボイコット運動への同調を表明する演説を行いました。
更に9日には、下院の議員108人が中国の胡錦濤主席あてに書簡を送り、ダルフールでの虐殺を続ける勢力への支援の停止を求め、中国側が十分な対応をしない場合には2008年の北京五輪のボイコットにもつながると警告する事態となっていました。
(アメリカのこういうやり方の良し悪しはありますが・・・)
民間でも、北京五輪の芸術アドバイザーを務める映画監督スティーブン・スピルバーグ氏がダルフール紛争での中国政府の対応を批判し、アドバイザーを辞退する可能性が出てきたと報じられています。
国連における最近の一連の進展は、北京オリンピックへの影響も懸念される状況で、中国政府がようやくその重い腰を上げてダルフール紛争制止の方向に舵を切ったことによるものと思われます。
すでに膨大な犠牲者を出していることを考えると、赤城農水相の辞任同様“遅きに失した”と言うしかないですが、前進であることは間違いないでしょう。
もとより、外交において自国利益を優先し国際批判を無視するというのは、別に中国に限った話ではなくごく普通に見られることです。
アメリカはイスラエルに肩入れする一方イラクに侵攻、ロシアはセルビアを支援し・・・等々。
ただ、中国の対応は単に権益保護だけに見えるいかにも露骨な対応であり、それなりの大義名分を必要する“外交ゲームのルール”を逸脱しているように思われます。
今回の件もそうですが、来年8月の北京オリンピックを控えて、中国としても“国際的に受け入れられるように”と変身を模索している部分は多々あるようです。
北京市は、つば吐きや列の割り込みの禁止、笑顔の奨励といったマナー向上キャンペーンを大々的に繰り広げているそうです。
その一環として、デパートやスーパーでは「列に並ぼうキャンペーン」が2月に開始され、毎月11日を「列に並ぶ日」に定めて買物マナーの向上を目指しているとか。
最近何かと指摘されている食品の安全性についても、規制違反の食品に関して当局に通報した者に対する報奨金の額をこれまでの1万元(約16万円)から5万元(約80万円)に大幅に引き上げたそうで、北京五輪についても、海外からの選手団や観光客らが食中毒などにかからないよう、選手村の調理場には24時間監視体制を導入し、食物貯蔵室は監視カメラで、食糧運搬車は全地球測位(GPS)システムで監視、また選手の食事はネズミに毒見をさせるとか。
(「北京の韓国大使館に勤務していた黄正一政務公使が28日夜、街中で買ったサンドイッチを食べた後激しい普通と下痢をおこし急死した。」という事件が報じられていましたが、あれはどうなったのでしょうか?)
もちろん問題が山積している中国が北京オリンピックを期に一気に改善することは期待できませんので、時間は必要でしょう。
少なくとも、北京五輪がそういった方向へ進む“a step in the right direction”となるのであれば、それは歓迎すべきことかと思います。
7月にはインサイダー取引など証券市場における違法行為が増える中国で、当局が取り締りの強化に乗り出したことが報じられています。
中国国営の英字紙、中国日報は先月27日、強制労働や性的搾取などの事例が国内で急増するなか、現行の法制度ではこれらの犯罪に対応できなくなっていると現行制度の改善が必要なことを報じています。
このような改善への動きも出ているようです。
中国は今後経済的にも政治的にもそのプレゼンスは大きくなっていくでしょう。
すでに日本にとっては、経済的には従来からのアメリカを抜いて第一の相手国になっています。
政治的にも、6カ国協議に見られるように、“東アジアのことは中国を軸に・・・”という方向にアメリカも向かっているように見えます。
その中国を刺激しないように同盟国日本への次期主力戦闘機輸出も見送られました。
こうした環境にあって、隣国中国が“うまく付き合っていける隣人”となってくれることは日本にとって非常に大事なことです。
単に国際基準とのズレを批判したり揶揄したりするだけでなく、外交的においても、内政においても、国際的に受入れられるルールを尊重する方向に中国が向かうように、北京五輪等の機会をいかして取り組んでいくことが必要ではないでしょうか。
五輪以外で見ると、中国は今後省エネ、環境保全の技術を必要とします。
そこに、日本が協力していける道もあるのではと思います。