
(写真はソマリア国内難民キャンプのひとつ、Hartishek。18年以上この地で暮す難民もいますが、政府から難民認定を受けられず、援助サービスの対象外にされていると言われます。“flicr”より By rachelenium)
最近見聞きしたソマリア関連、特にソマリア難民の話題。
エチオピアに隣接する“アフリカの角”と呼ばれるソマリアは、氏族間・イスラム原理主義勢力などの内戦によって、“無政府状態”が16年間続いています。
この間、アメリカの介入・撤退、イスラム原理主義勢力の支配、エチオピアの介入などがあって、最近“国民和解会議”開催を実現しようとしているが・・・というところまでは7月19日のこのブログでも取り上げたところです。

イスラム原理主義勢力以外の各氏族・武装勢力を集めた国民和解会議に対し、イスラム原理主義勢力残党の妨害工作が激しく、開催地の首都モガディシオでは砲撃によって市場へ買い物に出ることすらままならない状態にあります。
このような状態を逃れて国内の比較的治安のよい難民キャンプ的な場所へ避難する住民が最近急増していると伝えられています。
6~7月で首都から21000人ほどが避難したとBBCは伝えています。
しかし、そのような難民が向かう町のひとつガルカイオでは、難民の急増に対し支援物資が不足し、十分な支援活動ができない、今後更に増加することも考えられる難民をどうすればいいのか・・・という問題を引き起こしています。
更に、この町には長年の内戦という暴力、洪水・干ばつという自然災害を避けて数年来この地で暮らす“定住者”がいますが、新たな難民の流入で彼らの生活も一段と苦しくなる、このような定住者への支援が殆どない・・・といった新たな難民と定住者の共存の問題も出てきているそうです。
【8月9日 AFP】 http://www.afpbb.com/article/war-unrest/2265404/2011774
ソマリア難民に関するニュースもう1件を思いがけないところで見ました。
米ミネソタ州ミネアポリスでミシシッピ川にかかる橋が崩落した事故(8月1日)で、地元当局は10日、事故で行方不明となっていたミネアポリス郊外に住むソマリア人女性、サディヤ・サハルさん(23)と長女、ハナちゃん(1歳半)の死亡を確認したと発表しました。
ミネソタ州には90年ごろからソマリア人が多数移り住み、現在は6万人と全米最大のソマリア人コミュニティーを形成しているそうで、サディヤさんも00年に16歳で家族と渡米したとのこと。
イスラム教の影響もあり女性は家庭にとどまることが多く、地域活動に参加するのは珍しいのですが、サディヤさんはボランティアとして地元の子供たちに英語や算数、水泳を教えていたそうです。【8月11日 毎日】
国民和解会議のほうは、何回か延期された後、15日に開催されたときもイスラム原理主義勢力残党の砲撃を受け、会議は19日に再度延期されました。
このとき会場から500mほどのところに着弾したのですが、演説していた暫定政府のユスフ大統領は演説を続行し、「武装勢力がたとえ原子爆弾を落としてもわれわれは動じない。武力による支配はもう通用しない」と述べたことは前回も触れたところです。
延期された19日にもまた砲撃があり、BBCによると、少なくとも5人の子供がこの攻撃で犠牲になったそうです。
会議はまた中断されましたが、その後なんとか再開されたようで、ソマリアのヌル駐ケニア大使は8日、ナイロビで、「ソマリア国民和解会議は、全国範囲で武装解除を行なうことで合意した」と発表しました。
ヌル大使はまた、アフリカ連合(AU)や国際社会に対して、アフリカ連合のソマリア駐留平和維持部隊が必要とする資金や後方支援、技術支援などを提供するよう呼びかけました。
しかし、この会議にはイスラム原理主義勢力が参加していませんので、実効はどうでしょうか?
イスラム勢力も参加を要請されているのですが、「エチオピアが撤退しない限り参加しない」と主張しています。
そのエチオピアはアフリカ連合(AU)の平和維持活動が軌道に乗れば撤退するとしています。
AUの活動は・・・というと、予定では8000人のAUソマリア平和維持軍は,現在1600人のウガンダ軍のみで構成されています。
ブルンジが2000名の派遣を予定していますが延期されており、理由は「兵士の準備は出来てはいるが,アメリカやフランスが供給を約束したという,通信輸送機器が未着のため」とのこと。
ナイジェリア,ガーナも貢献を約束していますが,その展開は未だ行われていません。
ブルンジは内戦と経済制裁によって、アフリカの中でも経済開発が遅れている国のひとつ。
また資源にも乏しいこともあって、世界銀行によればブルンジの1人あたりGNI(名目)は100ドル(2005年)で世界最下位です。
そのブルンジに派遣を要請すること自体が無理では。ブルンジは国内でやることがもっとあるのではないでしょうか。
ヌル大使も言うように国際協力が必要でしょう。
最近になって国際社会の援助も出てきています。
6月にはアメリカが和解会議のための125万ドルを含む400万ドルの援助を表明しています。
また、7月には旧宗主国イタリアも40万ドルの拠出を表明しました。
このような国際協力でAUの平和維持活動が軌道に乗れば、エチオピアが撤退し、イスラム勢力も話し合いの場に出てきて、内戦が終結して難民も戻って来れる・・・というのは大甘でしょうか。
でも、先ずはその線で努力してみることでしょう。
ODA大国日本も、洋上ガソリンスタンドの資金を少しまわして、貢献してみてはいかがでしょうか?