孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

インド 同時多発爆弾テロの恐怖

2007-08-27 11:22:44 | 国際情勢

インドで悲惨な爆弾テロのニュース。
写真は最初の爆発のあった遊園施設ルンビニパークのレーザー光線ショー会場の様子。
“flickr”より By adieas

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【毎日 8月26日】
インド南部アンドラプラデシュ州の州都ハイデラバードの2カ所で25日夜、爆発があり家族連れなど多数が死傷した事件で、治安当局は爆弾によるテロと断定した。PTI通信は死者が42人に達し、約50人が負傷したと報じた。
 警察当局の調べでは、爆弾には多数の金属片が埋め込まれ、携帯電話をタイマーとして使用したとみられる。
土曜の夕方に多数の市民でにぎわう場所を狙っており、AP通信によると、バングラデシュに拠点を置くイスラム過激派が関与した可能性がある。
 PTI通信によると、最初の爆発は中心部の州政府施設前にある公園内の観客席で、約500人がレーザー光線のショーを見ていた際に発生し10人が死亡。
2カ所目の爆発は約五分後に約5キロ離れた商店街の市民に人気がある軽食店前で起き、32人が死亡した。
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これらの爆発の後、警察により19個の爆弾が発見され未然に処理されたとのことです。
19個の不発爆弾は映画館、バス停留所や交差点などで発見されており、市警察はこれらが爆発した場合、「数百人が犠牲になっただろう」と話しています。
なお、レディ州首相は州政府の緊急閣議を招集し、犠牲者の遺族に50万ルピー(約140万円)の補償金を支給すると発表しました。

IT大国インドのIT関連産業の中核都市であるハイデラバードの人口は650万人、うち約4割をイスラム教徒が占めています。
イスラム教徒の割合が大きく、多数派ヒンドゥー教徒との緊張関係が続いている地域です。

この街にはインド最大級のモスク、メッカ・マスジッドがあります。
今年5月18日、このモスク前で金曜礼拝の際に爆弾テロが発生、10人が死亡、35人が負傷する事件がありました。
現場では不発弾2個も発見されたそうです。
信徒らは爆発後、警備が手薄だったことに怒って警察に投石などを行ったため、警察が催涙ガスなどで対抗する騒ぎになり、この騒ぎで更に3人の死亡者が出ています。
この事件はイスラム教徒とヒンズー教徒の宗教対立をあおった犯行と推測されていました。

写真はメッカ・マスジッドの爆弾事件後、州首相の人形を燃やして抗議するイスラム教徒
“flickr”より By anand07447


19個もの不発弾が未然に発見されるというのもやや奇異な感じはしますが、仮にこれら情報に誤りがなければ、そしてこれら爆弾が実際に爆発していたら・・・と思うと、実に恐ろしい事件です。
家族連れなどで賑わう遊戯施設、映画館、公園、交差点・・・次々に爆発する20個前後の爆弾。
いつもとかわらない平穏な市街は、瞬時に肉片が飛び散る血の海と化していたことでしょう。

【修正】その後の情報で、“不発弾19個”という情報は否定されました。回収された不発弾は映画館の1個のようです。
なお、政府に対し「国内の治安が確保できない原因は政府にある」、「テロ対策が生ぬるい」と、ヒンズー至上主義のインド人民党が27日抗議ストライキを呼びかけ、多くの職場や学校が閉鎖されたそうです。(8月27日22時54分追加)

9.11のテロについては、正直なところ“恐怖”とか“怒り”といったものはあまり感じませんでした。
あまりにもシュールな画像に見とれてしまい、また攻撃の対象についても生身の人間というより、世界貿易センタービルが象徴する抽象的な“アメリカ”というもののように感じられたせいでしょう。

一方、今回の事件には想像可能な恐怖をリアルに感じました。
世界的に見れば、イスラムにしてもヒンドゥーにしても決して恵まれた条件にあるとは言えません。
その両者の間で燃える消えることのない憎しみの炎。
あるいは誰かがその炎を煽ろうとしているのか。

もとより、テロを仕掛ける側にとっては被害が大きければ大きい方が良い訳で、単に機会・能力が制約されている都合で現実の規模の事件に収まっていると言えます。
もし可能なら数千人でも、数万人でも、核兵器などが使えれば街ごと、国ごと吹き飛ばしてしまいたい・・・というのが彼らの思考でしょう。

ですから、「どうしてこんなことを・・・」とか「ここまでやる必要があるのか?」とかい問いは無意味ですが、そうは思いつつも、今回の市民で賑わう場所に仕掛けられた20個あまりの金属片を埋め込んだ爆弾には「どうしてこんなことを・・・」と思わずにはいられません。
“人間性”に対するかすかな信頼をも揺るがす衝撃を感じました。

しかし、冷静に考えれば、これまで人類が行ってきた無数の戦争、大量虐殺、ホロコースト、原爆・・・これらはすべて今回の事件をはるかに上回る非道であり、その歴史の結果として今の世界、今の自分の生活があるという・・・なんともやりきれない現実です。

せめて、この事件への報復といった宗教衝突の事態にならないことを願うだけです。

写真は今回のテロによる犠牲者、18歳の女性 泣き崩れる母親
“flickr”より By atrip

コメント
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