孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アフガニスタン 韓国人拉致事件と英兵誤爆

2007-08-26 12:26:49 | 国際情勢

(写真は英兵とアフガニスタン女性 カブール市街
“flickr”より By nataliebehring.com )

7月19日の事件発生から1ヶ月以上が経過、2名の解放以後は大きな動きがなく膠着状態にあるアフガニスタン・タリバンによる韓国人拉致事件。

昨日25日、アフガン・イスラム通信は「アフガニスタンに駐留する韓国軍を数週間以内に撤退させることと韓国のキリスト教団体を帰国させることを条件に、26日にも残る人質19人全員を解放することで韓国政府・タリバンが合意した。」と報じました。
しかし、この報道についてはタリバン報道官と現地司令官はともに否定しているようです。

一方、朝日新聞は今日未明「タリバンが人質1人につき10万ドルの身代金を要求してきた。」と身代金による解決へタリバンが戦術転換したのではないかと報じています。
これが本当なら、金額的には無理のない額ですから解決も早いと思われます。

今のところ情報の真偽はよくわかりませんが、こういう報道が流れ始めたこと自体が何らかの動きが出てきたことの反映ではないでしょうか。
この文章を書いている今にでも大きな動きがあるのでは・・・という期待も抱かせます。

素人考えでも、タリバンにとって19名もの人間を居場所を悟られないように、かつ、健康問題などがおきないように対応し続けるのは相当な負担になっているのでは・・・と思えます。
人質交換についてアメリカは全く軟化しないし、もし多数の女性を殺害したら国際世論はもちろん、アフガニスタン国内でのイスラム社会からの批判も厳しいものが予想されます。
“そろそろなんとかしないと・・・”という考えがタリバン側に出てきても不思議でないような気がします。

アフガニスタン関連で注目される事件がもうひとつ昨日報じられています。
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【8月25日 AFP】
NATOの下で活動する英国軍兵士3人がタリバンとの戦闘中、米軍戦闘機の誤爆により死亡した。
英国防省が24日、明らかにした。
誤爆事件は23日夜、南部ヘルマンド州のKajakiで発生。
パトロール中の英国軍をタリバンの戦闘員が急襲されたところへ支援に駆けつけた米軍のF15戦闘機2機によるものであった。
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この米軍による英兵誤爆では死亡した3名のほか、負傷者も2名でています。
アメリカも誤爆を認め、調査開始を明らかにしています。
これで、タリバン政権が崩壊して以来、アフガニスタンでの英軍の死者は73人となったそうです。

イギリスでは“ブッシュのプードル”とまで揶揄されたブレア前首相からブラウン首相にかわり、アメリカとの距離を変えようとしているとも言われています。
そんななかでの今回の米軍による英兵誤爆事件は、イギリス国内の厭戦気分を高めることになるかも。

韓国は“無理してアメリカに協力しても、何かあったら面倒はみてくれない。アフガンはもうこりごり”というところでしょうし、頼みのイギリスもこれまでのようにはいかないかも。
日本はテロ特措法で対応が変わる可能性も。
日本が引いて“イスラム教対キリスト教”みたいな図式になると、パキスタンも居心地が悪くなる・・・

22日ブッシュ大統領は、過去の日本をアルカイダになぞらえ、アメリカの勝利がこの地で誰も予想できなかった民主化を実現した、また、ベトナムからのアメリカの撤退が大量殺戮を招いたとの認識で、現在の“テロとの戦い”も同様な意義がある・・・とスピーチ。
“自分達が民主主義を実現してあげた”と声高に叫ぶ不遜さ、現在の同盟国に対する配慮のなさ・無神経さなど、考え方が多々ある個々の歴史認識そのものは別にしても不快な印象が残りました。

ベトナム戦争に従軍した退役軍人のジョン・ジョンズ元陸軍准将は、「ベトナム戦争から得た教訓は、米軍は他国の内乱に関与できないし、駐留が長引くほど事態は悪化するということだ」と話し、「大統領はイラク駐留を継続するため歴史の都合のいいところだけを取っている」と批判したそうです。

アフガニスタンもタリバンの復活で戦乱が長引き、出口が見えない状況になっています。
外国の支援がなければ今のアフガニスタン政府は長く持たないのでは。
タリバンがアフガニスタンを力で支配するというのも、アフガニスタンの人々にとって望ましいこととも思えません。
こういう発想も“ブッシュ演説”同様の不遜な考えでしょうか。
アフガンの人々がタリバンを望んでいるなら仕方ないことでしょうが。
人権意識の点では北部の軍閥勢力も五十歩百歩でしょう。
(タリバンよりたちが悪いとの声も聞きます。)

「あとは自分達で勝手にやって」と言うのも無責任です。
内戦状態の拡大・激化で被害を蒙るのは多数の一般国民です。

「やはり世界各地にテロをばら撒くアルカイダ、それと一体となったタリバン支配は容認できない。」というのであれば、現在のアメリカ主導の形でなく、現状を踏まえてもう1回国際社会の意思を確認して、全世界的な枠組みを再構築する必要があるのでは。
戦いが続くのは武器を援助している国があるからでしょう。
隣国イラン・パキスタンの協力を実効あるかたちで確約させ(そのためには多少の取引、アメリカの譲歩も必要でしょう。)、国連として仏・独だけでなく、ロシア・中国も一致して対応できれば、そう戦闘は続かないのではないでしょうか。
北部に残る武装勢力もこの際武装解除させないと将来の火種になります。

いかにも長い困難な道のりにも思えますが、「テロをなくす」という共通認識があれば(あるいは“反対しにくい”大義名分があれば)、できないことではないようにも思えます。
フランスもアメリカに協力的なサルコジ政権に変わっていますし、中国もオリンピックを控えて国際世論に敏感になっています。

テロ特措法の議論も、単に日米関係云々ではなく、この地がどうあるのがいいのか、どういう出口が見込めるのか、そのために日本が協力できることは何か・・・そういう視点から議論したいものです。

コメント
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