
(写真はキルギスの老カップル 彼らも“誘拐婚”だったのでしょうか?
“flickr”より By kluekozyte )
中央アジアのキルギスタン(旧ソ連から独立)では、女性を強引に誘拐して結婚する“誘拐婚”が広く行われているそうです。
昨日見たのは
http://www.afpbb.com/article/life-culture/culture-arts/2268120/2025470
ですが、他にも同様の報告が
http://rate.livedoor.biz/archives/20641636.html
http://www.afpbb.com/article/1402156
にもあります。
話を総合すると、街を歩いている女性を男性が友人と一緒になって無理やり車に押し込み、家へ連れ去るという手口が多いようです。
当然女性は泣き叫びますが、男の両親・兄弟でなんとかなだめすかしその家に留め置くと、女性はもはや自分の家にはもどれなくなります。
と言うのは、ひとたび男性の家で過ごした女性は“汚れた”“純潔でない”とみなされて恥になるそうで、実家の両親も取り戻そうとはしないそうです。
頃合をみて、男性が白いウェディング・ショールを女性の頭にかぶせます。
このショールは現地の言葉で“ジュールク”と呼ばれ、服従のシンボルだそうです。
女性にとっては、全く一度も会ったこともない男性に誘拐されることもあるようですが、結局80%ぐらいが最終的には結婚を受け入れるそうです。
この誘拐婚の風習は現地では“アラ・カチュー”と呼ばれていて、古くからある習慣ですが、ソ連時代に広くひろまったそうです。
ある村では婚姻した5組のうち4組が、また、山岳地帯の辺境の市では60~80%が、この“アラ・カチュー”による結婚だそうです。
全国的にも、“既婚女性の半分以上は“アラ・カチュー”の風習を経て結婚した女性たちであり、少なくとも3分の1の既婚女性にとってそれは自分の意思に反することだったらしい”という記載もあります。
男性側からすると、正規の手続きをとって結婚すると結納(例えば、現金10万円弱と牛1頭)が必要になるため、“アラ・カチュー”で奪い取った方が簡便で経済的だという事情もあるようです。
“アラ・カチュー”は旧ソ連時代も今も“違法”ではありますが、多くの人々は問題にしていないようです。
男性には罪の意識はないし、両親自身も“アラ・カチュー”で結婚しているケースが多いでしょう。
もちろん女性の人権の観点から批判する人・団体もあります。
この話を読んで思ったことが2,3あります。
ひとつは、これだけ広く行われている風習であれば、恐らく女性も“いずれ自分は誰かに誘拐されるのだろう・・・”という覚悟というか思いは普段からあるでしょう。
両親も女児を授かった時点から“いずれ誘拐される子供”という意識で育てるのでは。
誘拐された女性は泣き叫びますが、日本の社会で考えるような犯罪としての誘拐行為とはまた違ったニュアンスはあるかと思います。
女性は、“幾つになっても誘拐されない”ということを恥ずかしく思うようなこともあるのでは・・・とも考えたりします。
(だからかまわない・・・ということではありません。)
二点目は、この誘拐婚には“ルール”みたいなものがないのだろうか?ということです。
例えば町一番の名士の娘を貧乏人の男性が誘拐していいのか?
それとも、ある程度“釣り合い”みたいなものを前提にした風習なのか?
また、連れ去った女性を“力ずく”で留め置くことが許されるのか?
それとも、そういう暴力的な誘拐はルール違反なのか?
一番不思議だったのは、この風習が比較的最近の旧ソ連時代に広まったということです。
このあたりの背景はよくわかりません。
もっとも婚姻に関する意識・方法は日本でも劇的に変化しているようです。
下のグラフは日本における“お見合い結婚”と“恋愛結婚”の比率の推移を示したものです。
(第13回出生動向基本調査)

劇的に見合い婚が減少しています。
もちろん、“いまどき見合いは流行らないだろう・・・”とは思っていましたが、こんなに実際の数字が変化しているとは思いませんでした。
もうしばらくすると「日本ではかつて“お見合い”という不思議な男女の出会いがありました・・・」なんてニュースが流れる日もくるかも。
なお、誘拐婚に関しては、ラオスのある部族にその風習が残っているとも言われています。
また、風習というより、ほとんど犯罪行為ですが、中国の貧しい地方では“女性をさらってくる”こともあるやに聞きます。
誘拐婚はキルギス以外の中央アジアでも見られるそうですが、キルギスが一番顕著だとか。
花嫁の家に迎えにきた花婿側の人間が、泣き悲しむ花嫁を奪い取るかのように連れて行くという結婚式の風習などは世界のあちこちで見られるかと思います。
誘拐婚の名残でしょうか。
中央アジアでは一夫多妻制の風習もあるそうで、キルギスではこれを法的にも解禁しようという試みがされているそうです。
今までのところは、議会で否定され”違法“のままということです。
トルクメニスタンでは、かつての独裁者ニヤゾフ大統領の鶴の一声で解禁されたそうですが。
(写真はキルギスの女性 “flickr”より By Gonger )
