孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

パキスタン 解放されたもう一組の19名

2007-08-29 15:57:51 | 国際情勢

(写真はパキスタンのアフガニスタン国境部族地域も近いペシャワールの街 
“flickr”より By Laurent Dufy )


住んでいる奄美は旧盆が明けて街の表情も普段のものに戻ってきましたが、イスラム諸国では来月13日からラマダン(断食の月)に入るため、いろいろと慌しい動きもあるようです。

アフガニスタンのタリバンによる韓国人拉致事件は、報道されているようにようやく解放で合意。
神聖なラマダンに入る前にけりをつけたいタリバン側の思惑もあったとか。
それと、女性を拘束することに対する地元ムスリムからの批判、19名を数グループに分けて毎日移動を繰り返す作業へのタリバン内部からの不満・疲労感もあったようです。
今後数人ずつ段階的に解放されると言うことで、具体的な移送方法などの手続き交渉に入っていると伝えられています。

昨日タリバン関連で別の19人の拉致グループが解放されました。
今月9日パキスタン内部のアフガニスタン国境付近の部族地域で、親タリバン派武装勢力により拉致されたパキスタン軍兵士19人です。
武装勢力は、9日に部族地域の南ワジリスタン地区でパキスタン軍兵士16人を拉致、その後、大佐を含む4人の兵士を拉致していました。
そして、14日には人質となった兵士のうち1人が10代と見られる少年によって首を切断され、斬首のもようを記録したビデオ映像が公開されていました。

今回のパキスタン軍兵士の解放は、地元の長老などで構成される合議体「ジルガ」での交渉により実現したそうです。
政府当局によれば、ジルガは無条件での人質解放を保証していたそうです。【8月29日 AFP】


(写真はパキスタンのアフガン国境近い部族地域の人々 “flickr”より By PimpDaddy Playa )

パキスタンのアフガニスタン国境付近の部族地域は、従来からアフガニスタンのタリバンやアルカイダ勢力の温床となっているとのアメリカの批判があります。

今月25日には、米軍を主体とする部隊とアフガニスタン軍の連合軍がパキスタン領内にあるタリバンの拠点に越境攻撃を行い、タリバン勢力30人以上を殺害したことが報じられました。
米軍主体の連合軍はパキスタンから越境攻撃の許可を得て実行したと発表しましたが、パキスタン軍は「許可の要請はなかったし、われわれが許可したこともない」と否定しています。
【8月26日 時事】

許可があったのか、なかったのかもさることながら、素人にわからないのは“なぜパキスタン軍に連絡してパキスタン軍が自分たちで攻撃するというかたちをとらず、米・アフガン軍の越境攻撃というかたちをとったのか?”ということです。

パキスタン内のタリバンやアルカイダ勢力とパキスタン国軍の“つながり”は以前から言われているところで、もともとタリバンはパキスタン国軍によって指導されアフガンに送り込まれたとも言われています。
ただ、現在はパキスタン政府もアメリカの要請に従って国境付近のイスラム過激派勢力には厳しく臨むこととしていました。
特に、ムシャラフ政権がイスラム過激派を武力鎮圧した“赤いモスク事件”以後は、この地域ではパキスタン治安組織にたいするイスラム過激派の自爆テロ攻撃などが繰り返されていました。
そして、親タリバン勢力にパキスタン兵士19名が拉致され、1名が首を切断されるといったこともあった訳です。

それでも米軍が越境攻撃というかたちをとったのは、パキスタン軍の“やる気”・能力を信用していないということなのでしょうか?
それとも、19名の拉致があってパキスタン軍が表立って動けない・・・といった事情だったのでしょうか。

アメリカはこの地域でのパキスタンの取組みに不満を持っており、「パキスタン領内のアルカイダ系組織を空爆する意向」を持っていると言われています。
この問題について今月15日、アメリカとパキスタンの高官協議があったと報じられています。

パキスタンのカスリ外相はアメリカのバウチャー国務次官補に対し、米国政府が最近の声明でパキスタン領内のアルカイダ系組織を空爆する可能性に言及したことについて懸念を表明し、もし一方的にパキスタンを空爆すれば、両国間の緊密な協力関係にとって「逆効果」になると伝えたそうです。
【8月16日 AFP】

許可の有無については、本当に無許可で越境攻撃することは考えられませんので、パキスタン側として、表向き“関知していない”としていたほうが何かと都合がいいということでしょう。
国民の間には反米の感情も強いので、越境攻撃を認めたということになるとムシャラフ政権への批判が高まるとの配慮ではないでしょうか。

アフガニスタン国境のパキスタン領内にはタリバン最高指導者のオマル師が潜伏しているとか、パキスタン国軍の保護下にあるといった話もあって、この地域の実情、パキスタン国軍とイスラム過激派勢力の関係はどうなっているのかよくわかりません。


(写真はパキスタンで行われた、イスラム過激派組織ヒズブ・タフリールによって組織された反米デモ 
“flickr”より By nablus_kh )


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