
(写真はイスラエルによって築かれたイスラエル入植地とパレスチナ人居住区を隔てる“壁”
“flickr”より By Mario theBoom )

(その壁に描かれた風船で壁を乗り越える少女の絵が印象的です。
“flickr”より By Shandinova )
パレスチナは相変わらず“穏健派”ファタハ支配のヨルダン川西岸と“過激派”ハマスが支配するガザ地区に分断された状態ですが、先日こんなニュースも。
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【8月28日 朝日】 パレスチナ治安部隊がイスラエル将校を救出
イスラエル軍の少佐が道を間違えてパレスチナ自治区ヨルダン川西岸のジェニン市内に入り、イスラム過激派に襲われた。通りかかったパレスチナ治安部隊が少佐を救出し、「和平機運を後押しする出来事だ」と話題になっている。
少佐は27日、軍の乗用車を運転してジェニン近郊の基地に向かい、近道を通ろうとして同市内に入ってしまった。イスラム聖戦などの活動家や住民らが車を取り囲み、少佐を拉致しようとした。
パレスチナ治安部隊が空に威嚇発砲して少佐を保護し、別の車に乗せた。隊員たちが少佐に覆いかぶさって弾よけになりながら、自分たちの本部まで無事に運んだ。
イスラエル軍は西岸で過激派の掃討作戦を繰り返し、関係のない住民らも巻き添えで殺されるため、反感は根強い。道に迷った将兵が無防備で西岸の町中に入った時、リンチを受けて殺されたこともある。パレスチナ治安部隊がリンチに協力していたこともあった。
しかし、西岸が6月に穏健派のファイヤド首相の内閣に統治され始めてから、治安部隊は過激派武装集団に対する取り締まりを強めている。イスラエルのリブニ外相は27日夜、ファイヤド首相に謝意を伝えた。
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この話をどのように見るかは立場によります。
現在のファタハの姿勢をアメリカ・イスラエルへの擦り寄り路線にすぎないと見るならば、この話もその類の不快な出来事にすぎないでしょう。
しかし、イスラエルという国家が厳然として存在し、生活に苦しむ多数のパレスチナの人々がまた存在するという現実において、何らかの解決の道筋を探すためには、イスラエル、パレスチナの両者が歩み寄るしかない・・・と考えるなら、非常にささやかではありますが、ほっとする話です。
アッバス議長、ファイヤド首相の率いるファタハのパレスチナ自治政府には欧米の支持が集まっており、ハマスが圧勝して与党となって以降パレスチナに対する直接援助を停止していた日本も、今月15日当時の麻生外相がパレスチナを訪問し、約14億円の直接援助を再開する協定に調印しました。
更に10億円弱の人道支援も提供する予定だと伝えられています。【8月15日 AFP】
一方のハマスが実効支配するガザ地区へは締め付けが続いており、今月中旬5日間ほど停電になりました。
発電所の燃料となるディーゼルの代金はEUが負担しているそうで、「ハマスが電力に課税して、電力料金の一部をハマスの活動資金にしている」として、EUが代金の支払を拒否したことによるものです。
この騒動はハマスが「発電所の運営にハマスが介入しない」と明言したこともあって、電力供給再開に至ったようです。【8月22日 AFP】
このような“分断”の状態に住民の不満も大きくなっており、世論調査によると、ガザ住民の44%が「ハマスによる武力制圧以降、治安は改善した」としながらも、47%は「状況は悪化した」と答えています。
また、47%がアッバス自治政府議長の後押しで発足したファイヤド首相率いる暫定内閣の実績を評価、「ハマス内閣」への支持は24%にとどまったそうです。【8月25日 毎日】
ブッシュ米大統領が呼びかける今秋の和平会議にむけて、イスラエルのオルメルト首相とパレスチナのアッバス議長は今月28日エルサレムで会談し、和平実現に向けた根本的課題やそれに伴う問題の解決策などについて意見を交換しました。
“パレスチナ側は、エルサレムの地位や国境線、難民などの問題に関して、詳細で包括的な合意を目指しているのに対し、イスラエルはそれら問題の詳細については先送りしたい考え”とも伝えられています。【8月29日 AFP】
来週に次回会談が予定されていますが、両者の歩み寄りで和平への道筋が切り開かれることを願います。