孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ミャンマー 軍事政権への抗議デモ

2007-08-23 14:01:51 | 国際情勢

(写真はミャンマーの古都マンダレー郊外にあるウーベイン橋 世界最長の木橋とも言われ、夕暮れ時、橋を行きかう地元の人々、僧侶のシルエットが印象的な光景です。“flickr”より By Tranuf )

軍事政権が続くミャンマーで、ガソリン価格引上げに抗議するデモが行われたことが報じられています。

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【8月15日 共同】
ミャンマー政府は15日、ガソリンなどの小売価格を最大5倍に引き上げた。
事前通告なしの値上げに、大都市ヤンゴンでは一部のバスが運行を取りやめるなど市民生活に混乱が出ている。
同市民によると、ガソリンは約1・6倍に、ディーゼル油は約2倍に値上がり。
バスなどの燃料となる圧縮天然ガスは約5倍に跳ね上がった。
ガソリン類は過去2年間で既に9倍以上に高騰していたという。
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今年1月にミャンマーを旅行しましたが、そのときすでに「ガソリンが高くなった。」という声はあちこちで聞きました。
詳しい状況はわかりませんでしたが、値上げになった政府からの割当分と民間価格は更に数倍の開きがあること、古い自動車を所有して安い政府からのガソリンを入手して高く転売するようなことが行われていることなども聞きました。
統制をかけるとどうしてもヤミ市場が生じ、一部のコネや資力のある者だけが利益を得るような“ゆがみ”が発生します。
なお、ミャンマーでは電気が使える時間より停電している時間のほうが長いような実態で、経済はかなり行き詰っているように見えました。
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【8月22日 時事】
ミャンマーの最大野党、国民民主連盟(NLD)と反体制組織「88年学生運動グループ」のメンバーら約150人が22日、軍事政権によるガソリン代値上げへの反対を訴えながら旧首都ヤンゴンの郊外をデモ行進した。
現地では、参加者6人が治安当局か軍政を支持するグループに連行されたとの情報が出ている。

ヤンゴンでは、民主化運動活動家ら約500人が19日、大規模なデモを実施。
これに対し、治安当局は21日以降、このデモを主導した13人を相次いで拘束しました。
軍政の統制下にある国営メディアは拘束理由について「国家の治安を損なったため」と報じている。 
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19日のデモは約9年振りとなる大規模な反政府デモとなりました。
軍事独裁下のミャンマーでは街頭での政治的活動が禁止されています。
このため、一連のデモは「物価高騰への抗議」との体裁をとりながら、軍事政権への不満を表明する狙いがあると伝えられています。

22日のデモでは、抗議デモを阻止するため約200人の兵士らが出動し、6人(別報道では8人)の活動家らが身柄を拘束されました。
彼らは数時間後に解放されましたが、再度の抗議デモに参加しないよう軍当局から署名させられたと言います。
AFPによると、抗議デモの最中には、道端や家々の窓から抗議に賛同する声も聞こえ、軍事政権下にある同国ではいたって異例な出来事となったそうです。

ミャンマーでは88年に民主化運動が広がりましたが、国軍がこの運動を鎮圧しました。
その2年後の総選挙で、スー・チー率いる国民民主連盟(NLD)が圧勝したが、軍事政権は政権委譲を拒み、スー・チーの軟禁を断続的に継続しています。
アムネスティ・インターナショナルは、ミャンマーには千百人を超える政治囚がいると指摘しているそうです。

軍政は、新憲法制定に向けた国民会議を7月18日に再開し、新憲法に関する審議を今月8月中にも終えて、年内にも国民投票にかけるのではとの観測もあります。
この流れで“スー・チー抜き”の政治的枠組みをつくることを意図していると見られています。
スー・チー軟禁の解決への出口が見えないなかで、NLDの一部にもこの流れに乗る動きも出ていると伝えられています。
今回のデモは、この“大政翼賛会”的な流れに反対する勢力によるものではないかと思います。

ミャンマー軍事政権の人権抑圧に対する国際的な批判は増しており、アジア各国からも“お荷物”的に見られるようにもなっているようです。
先月末に開催されたASEAN外相会議では、ミャンマーの反対で一時危ぶまれましたが、結局「ASEAN憲章」草案に“人権監視機関の設置”を盛り込むことが決定されました。
ただし、その詳細については、ミャンマーの反対や各国の思惑(ベトナム、カンボジアなど各国とも“すねに傷を持つ身”ですから・・・)もあって先送りされました。

このような国際世論が功を奏すかは、最近経済的関係を強めている中国がどの程度本気で働きかけるかにもよると思われます。
そして、昔から関係の深い日本も。

こうしたなか、ミャンマーは同じくアジアの“お荷物”となっている北朝鮮との外交関係を深めており、4月には国交を回復、今月18日には「北朝鮮がミャンマー大使館の開設準備に入った」ことが報道されています。
大使館が開設されれば、83年のラングーン事件(ミャンマー訪問中の韓国首脳を北朝鮮工作員が爆殺した事件)で国交を断絶して以来24年ぶりとなります。

ASEANからの批判の高まり、“後ろ盾”中国も北京オリンピックを控えて国際的に批判される行動はとりたくないという事情、そういったなかで今回の抗議活動がどう推移するか注目されます。

追伸
アップロードした後に確認すると、アメリカが早速今回の活動家拘束を非難して、身柄を解放するように要求しています。
この対応の早さはさすがです。
22日のデモについては、本文にも記載したように、【23日 06:02】のAFPは“拘束された活動家はその後解放された”旨報じていましたが・・・詳細はわかりません。
コメント
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