
(カザフスタンの首都アスタナ 真新しい建築物が並び、上海の浦東を思わせる光景です。正面奥に見える塔が“Bayterek tower” “flickr”より By lambro )
中央アジア・カザフスタンで18日、下院選挙の投票が行われました。
結果は、ナザルバエフ大統領率いる与党ヌルオタンが88%の得票率で圧勝、全議席を独占したそうです。
(19日、中央選挙管理委員会発表)
ふたつの野党の得票率はそれぞれ3~5%と、いずれも議席獲得に必要な7%を上回ることができませんでした。
5月の憲法改正で政府は“少数派の意見も取り入れる”という目標を掲げていたのですが、この目標に反する選挙結果となりました。
5月の改正憲法では、議会の権限が一部強められた一方、初代大統領で過去16年間強権体制を敷いてきたナザルバエフ大統領に限って多選禁止が適用されなくなり、無期限に大統領の座を維持できる道が開かれています。
事実上の終身大統領の座を確保する一方、独裁批判をかわすため一定の民主改革を導入したものと言われており、大統領は「カザフ独自の道で国の安定・発展を図る」と、憲法改正を正当化しています。
また、憲法を改正した理由の一部には、全欧安保協力機構(OSCE)の議長国を務めたいという意向もあると伝えられています。
OSCEの議長国にこだわるあたりにもナザルバエフ大統領の性格の一端が窺えますが、“中央アジアのモデル都市”を目指して建設が進む首都アスタナの様子などを見ても(http://www.afpbb.com/article/politics/2202886/1465595)、外観の印象を重視した街づくり、個人崇拝の傾向などが感じられます。
相当に自己顕示欲が強い政治家のようです。(まあ、政治家はすべてそうだと言えば、確かにそうですが。)
こういうタイプのトップが終身大統領として君臨することは(こういうタイプだから終身大統領にこだわるのでしょうが)、将来の独裁を危惧してしまうのですが杞憂でしょうか。
中央選管によると、投票率は64.56%。
首都アスタナでは39%、最大都市のアルマトイは22%。
都市部で極めて低くなり、強権化を進めるナザルバエフ体制へのしらけムードを示す結果となったとも報じられていますが、しらけてていいのかしら・・・とも思ってしまいます。

(ランドマーク“Bayterek tower”にある大統領の黄金の手形
“flickr”より Bysmer4 )
過去、カザフスタンの議会選挙や大統領選挙では、与党に有利な選挙報道とか二重投票などがあったとも批判されていますが、今回はOSCEなどから東欧の旧共産圏や旧ソ連諸国を中心に約1200人が選挙監視活動に参加しました。
議長国を目指すナザルバエフ大統領による“民主選挙”のアピールのようです。
OSCEは「これまでの選挙よりは改善したが、依然国際水準には達していない」と評価したそうです。
(この言い様も“上から見た”言い様で、大統領ならずとも相当に気分を害するのでは・・・)
投票自体と選挙前の過程は透明性が保たれていたと高評価を下した一方、開票作業については訪問した投票所の40%以上でマイナスの評価を下したとのこと。
ソ連から独立した後、経済は飛躍的に発展、今現在のカザフスタン経済は好調のようです。
基本的には与党圧勝の今回の選挙結果は、この好調な経済を反映したものでしょう。
カザフスタンの経済成長は、鉱物資源の輸出によるものであり、天然資源依存型です。
採掘量が世界第10位以内に達する地下資源が9つも存在する(2002年時点)そうで、世界2位のクロム、3位のウラン、そのほか亜鉛、マンガン、鉛、ボーキサイト、銀、銅、石炭、リン鉱石・・・。
原油の産出量も世界シェアの1.1%。
ありとあらゆるものが地下に眠っている、“宝の山”の国のようです。
野党側は「エネルギー資源の確保を狙う西側諸国が民主化問題に目をつぶっている」と批判しています。
石油に群がる国々のひとつが中国。
中国の胡錦濤国家主席は18日、カザフスタンを公式訪問して、カスピ海沿岸産の石油を中国に送る新たなパイプライン建設で合意したそうです。
共同声明では、ナザルバエフ大統領の強権化が指摘されるカザフスタンの憲法改正について、「中国は高く評価する」と表明、早速中国の支持を明らかにしました。
エネルギー資源獲得に躍起となっている中国がカザフ重視の姿勢を示したとみられています。
今回敷設に合意した石油パイプライン以外に、05年にはもう1本のパイプ約1000キロが既に完成しています。
ナザルバエフ大統領は「(この2本のパイプに既存のパイプをつなげて)カスピ海が中国西部とつながることになる」と語っています。
また両国は、トルクメニスタンの天然ガスをカザフ経由のパイプラインで中国に引く計画にも合意したそうです。
しかし、中国も現段階でエネルギー確保に躍起となっていますが、今後更に中国経済が拡大したらどう対応するのでしょうか?
逆に言えばその点をクリアできないと経済拡大は天井にぶつかってしまうということになるのでは。

(過去2回炎上して“ライター”のニックネームがついた運輸省ビル “flickr”より By supernova17 )