孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

チャド  反政府勢力が首都進攻 出口の見えないアフリカ諸国の混乱

2008-02-03 19:30:34 | 国際情勢
アフリカのチャドから反政府勢力の首都進攻のニュースが。

****チャド:反政府勢力が首都侵攻 政権崩壊の可能性強まる*****
アフリカ中部チャドからの情報によると、同国東部を拠点とする反政府勢力3派の連合軍が2日、首都ヌジャメナに侵攻した。ロイター通信はヌジャメナの西側外交関係者の話として、反政府軍がデビ大統領の官邸に迫っていると伝えており、政権転覆の可能性が強まっている。
デビ氏は96年の同国初の民主的な大統領選で当選後、強権的な政治姿勢を強め、05年に憲法の3選禁止規定を改正。これに反発する複数の勢力が国の東部で台頭し、政情不安が続いていた。反政府勢力は隣国スーダンのダルフール地方にも拠点を置き、スーダン政府の支援を受けているとみられている。【2月2日 毎日】
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チャドというと、フランス団体による“ダルフール孤児”の誘拐騒動が記憶に新しいところですが、政治情勢は他のアフリカ諸国同様極めて不安定な国のようです。
ここ数十年をみると内戦の歴史で、ほとんど“仁義なき戦い”の様相を呈しています。
武装勢力同士の権力をめぐる争い、ときに手を結び、ときに離反し、ときに内部抗争。

それに、近隣の国が介入、以前はリビアが反政府勢力を支援して介入していましたが、ここ数年はスーダンが同様の介入をしており、今回の武装勢力もスーダンの支援を受けているようです。
もっとも、スーダンは自国内の反政府勢力をチャドが支援していると主張しています。

昨年2月にフランス・カンヌで開かれたフランス・アフリカ首脳会議で、スーダン、チャド、中央アフリカの首脳が、それぞれの国の反政府活動を支援しないことで合意し、5月にはサウジアラビアの仲介で、スーダンのバシル大統領とチャドのデビ大統領が両国間の緊張を終わらせることを目的とした和解協定に調印しました。
同協定に基づいて両国は、他方の国の反政府勢力への支援を慎むことを約束した・・・のですが。

もうひとつの関係国がフランス。
反政府勢力「UFDD」は、フランスがデビ政権を支援していると非難していました。
スーダン国境に近いチャド東部で昨年12月29日にUFDDが政府軍から異例の猛攻撃を受けた際、「仏軍機が上空を偵察していた」と主張。
その後、UFDDは、現地駐留しているフランス軍を含む「すべての外国軍と戦争状態にある」と宣言しました。
今回の事態に、フランス軍はエアバスを現地に派遣し、1000人以上にのぼるフランス人出国にあたるようです。

冒頭記事では“デビ氏は96年の同国初の民主的な大統領選で当選後・・・”とありますが、その以前に遡ると、89年に、当時権力を握っていた勢力の軍事顧問をしていたデビ一氏が離反してスーダンに亡命。
そこで党派愛国救済運動(MPS)を結成してチャドに侵攻、90年に首都ヌジャメナを制圧して大統領についた経緯があります。
今回の反政府勢力と同様のかたちで政権を奪取しています。
確かに大統領選挙も実施しているのですが、国際選挙監視団からは多数の不正を指摘されています。
更に、冒頭記事にもあるように、憲法の三選禁止規定を改正して権力を維持しています。

こうした政治闘争=武力闘争というような事態を聞くにつけ、「どうしてこの地域の人々は、当然のように力でものごとを解決しようとするのだろうか?」という素朴な疑問を持つのですが、いわゆる民主的な政治基盤が存在していない状態で、権力側は反対派を力で封じ込め、反対する側はこれに力で対抗するしかないという構図があるのでしょう。
ひとたび力で反対派を粛清すれば、権力の座からすべり落ちたときの報復を恐れて絶対に権力を手放さない、強権政治を更に強化する・・・という流れになるのでしょうか。

部族・人種・宗教・・・そういった違いを超えた国民のための国家という概念が根付いていない状態で(あるいは、そもそも植民地支配国によって人為的につくられた“国家”の状態で)、資金と武器がどこからか潤沢に供給され、終わることのない武力闘争を続けさせているように見えます。

今回の反政府勢力が完全に権力を奪取するのかどうかわかりませんが、仮にそうなっても、恐らくその後内部対立、離反した一派が先に追われた一波と組んで反攻・・・そういったことになって行くのでは。
単に武力闘争をやっている者達だけの話であれば放っておけばいいことですが、争いが起きるたびに国民が犠牲になり、大量の難民が発生します。

反政府勢力“UFDD”の名称は直訳すれば、「民主主義及び開発発展のための連合(Union of Forces for Democracy and Development)」。
悪い冗談に思えます。

隣国スーダンのダルフールは進展せず、“優等生”と思われていたケニアの混乱は収まらず、ジンバエブでは年率2万6470%のハイパーインフレーションで経済崩壊、ソマリアでは国家自体が久しく消滅しもはやニュースにもならない・・・暗澹たる気分にさせることが多すぎます。

コメント
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