孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ  移民を呑み込むのか、呑み込まれるのか

2008-02-28 18:11:01 | 世相
アメリカで白人に多いプロテスタントの比率が51%と過半数割れ目前まで低下しているそうです。
宗教離れの傾向のほか、カトリックの多いヒスパニック系移民の増加が原因とか。【2月27日 共同】

最近、似たような記事を見た覚えがあったので探すと、アメリカの人口推移の記事でした。

****白人人口、50年には過半数割れ=ヒスパニックが急増-米予測 ****
米国は移民の急増で2050年には白人人口が過半数を割り、ヒスパニック(中南米系)が約3割に急上昇-。米民間調査機関ピュー・リサーチ・センターが12日までに発表した人口動態予測で、米国の移民国家化が今後、一段と加速するという将来像が浮かび上がった。
それによると、全人口は05年の2億9600万人から、50年には4億3800万人と約48%増加。人種構成比では、ヒスパニックが14%から29%に急上昇し、アジア系も5%から9%に増える。一方、黒人は13%とほぼ横ばいで、白人は67%から47%に低下すると予想している。 【2月13日 時事】
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内容は以前から想定されていることで特に目新しさはありませんが、世の中は変わっていくものだとあらためて感じます。
現在、大統領選挙で、やれ黒人票が誰に行くとか、ヒスパニック系が誰を支持しているとか話題になりますが、あと数十年後には確実に非白人がアメリカの政治中枢を決定する時代がやってきます。

大体、先進国の人口が軒並み減少が予測されるなかで、人口が48%も増えるというのがすごいです。
移民については、欧米各国大きな問題になっていますが、アメリカの場合も、もともと存在する白人・黒人間の根深い対立に加え、急増する移民の引き起こす社会的問題はとてつもなく大きなものがあります。
移民問題が大統領選挙の大きな争点にもなっています。

しかし一方で、“移民の国”として、人種・民族を超えて“ひとつのアメリカ”に統合していこうとするパワーが存在することも感じさせる国です。
オバマ候補の04年民主党大会での「リベラルのアメリカも保守のアメリカもなく、ただ“アメリカ合衆国”があるだけだ。ブラックのアメリカもホワイトのアメリカもラティーノのアメリカもアジア人のアメリカもなく、ただ“アメリカ合衆国”があるだけだ」というスピーチが、(現状がどうかという問題は別にして)人々を熱狂させる底流も存在しています。

今後、アメリカ社会が移民を呑み込んで更に大きなパワーを得ていくのか、移民の奔流にアメリカ社会が呑み込まれていくのか興味深いところです。
アメリカ以外の先進国は、今後人口の減少、高齢化が予想(人口推計の場合、ほぼ確実な予想ですが)されており、単純に考えると社会の活力・パワー・ダイナミズムも低下していくと思われます。
(もちろん、高齢化した人口減少社会でも、成熟社会の良さがあり、その活力を引き出していく方策もある・・・というのは、それはそうでしょう。)

少子化の流れをなんとか食い止めようとする試みは各国でとられています。
シンガポールでは、04年、05年に女性1人当たりの出生率は1.24人と、人口維持に必要な2.1人を大きく下回る歴史的な低水準を記録したそうです。
このような事態を受け、出生率の低さが国の存続を脅かすとの懸念から、政府は子どもに対する助成を手厚くしたり、外国人に市民権取得を促したり、それまではタブー視されていたセックスなどの問題に対して寛容になるなどの変化を見せているとか。
シンガポールの独身者はお金を稼ぐのに忙しくて愛を営む時間もないそうで、独身者のための交際相手紹介所を支援する基金なども政府が設立しています。

先日のバレンタインデーには政府がロマンスや結婚を促進する「ロマンシング・シンガポール」キャンペーンを強化し、政府が恋のキューピッド役を買って出ました。
具体的には「オープンしたての世界最大の観覧車、シンガポール・フライヤーでのバレンタインデー当日夜のデートをお膳立てするものから、映画のはしご、金曜夜のショッピングなどがあり、・・・」【2月13日 AFP】

まあ、効果のほどは分かりませんが、意気込み、問題意識はあるようです。
ヨーロッパの中で特に手厚い少子化対策をとっており、かつ、その成果が出ていることで有名なのがフランス。

***フランス出生率が欧州1位、非嫡出子が半数超える****
2007年のフランスの出生率が、アイルランドを超えて欧州1位となった。
一方、結婚していない両親から生まれた子ども(非嫡出子)が半数を超えたことも分かった。フランス国立統計経済研究所が15日、発表した。
2007年のフランスの出生率は1.98で、アイルランドの1.90を上回った。
EU諸国全体の平均出生率は1.52だった。
一方、1965年にはわずか5.9%に過ぎなかった非嫡出子の割合は、2007年には50.5%と、前年の48.4%から増加し、誕生した子どもの半数を超えた。【1月16日 AFP】
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日本の出生率は1971年の2.16から、2006年には約4割減の1.32になっています。
この数字に比べたらフランスの1.98は驚異的です。
“女性が家庭で子供を育てる”という伝統的家族観にこだわる限りは、人口減少の途しかないのでしょう。
1.98という数字は、嫡出・非嫡出にこだわらず、女性が子供を産みやすい社会環境を整えてきた結果です。
これを成果とみるか、非嫡出子が半数を超えるなんて社会崩壊だと見るか、価値観の問題でもあります。

最近みかけたもうひとつの出生数関連のニュースはロシア。

****ロシアの出生数回復、少子化問題に解決の兆し*****
プーチン大統領が最重要課題として対策を講じてきた少子化問題に、解決の兆しが出てきた。
2007年にモスクワでは10万人が出生、ソ連崩壊に伴い人口が急激に減少する前の1989年の水準まで回復した。
プーチン大統領は2年前、少子化問題を「最も深刻な問題」として、今世紀半ばまでに人口が半減するおそれがあると警告していた。 
91年のソ連崩壊以降、ロシアの人口は1億4900万人から1億4200万人まで減少。政府によると、07年だけで、約50万人減少した。【2月25日 AFP】
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ロシアの人口減少は、プーチン大統領が心配するように日本以上に劇的で深刻です。
当然、いろんな出産・育児支援措置がとられている訳ですが、なかには変わった対策もあるようです。
ウリヤノフスク州知事は、「受精日」を制定し、制定から9か月後の、ロシア独立記念日(6月12日)に出産した母親に賞品を贈与したとか。

「受精日」はともかく、ロシアで出生数が増加した背景にはやはり経済的条件の向上があると思われます。
プーチン大統領についてはいろいろ好き嫌いはあるところですが、ロシア社会を安定させた成果は認めざるを得ないところです。

日本は・・・というと、特に何もやっていませんので特にコメントすることもありません。
ただ、出生動向基本調査などでみると、若干これまでの推移とは異なる動向が見られます。
“結婚・家庭を重視する伝統的価値観への回帰”とも言えそうな動きです。
(07年6月8日 http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20070608
このような価値観の変化がひょっとすると出生率にも影響してくるのかもしれません。

コメント
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