孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ケニア・イラク  いろいろな殺戮方法

2008-02-05 14:51:06 | 国際情勢
大統領選に端を発した混乱が続くケニアでは、1日にアナン前国連事務総長の仲介により、対立する与野党勢力が紛争解決へ向けたロードマップ(行程表)に合意しましたが、事態は収まっていないようです。

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3日、西部Sotikでカレンジン人とキシイ人の間で衝突が発生し、警察発表によると少なくとも13人が死亡した。双方が伝統的な武器である弓矢を用いた。【2月4日 AFP】
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衝突はキバキ大統領の出身部族キクユと他部族の対立だけではなく、これまでの不満が爆発したように拡大しているようです。

上記のAFP記事で目を引いたのが、“伝統的な武器”で争う様子を写した写真。
冒頭のものはその中の1枚ですが、なんとも印象的な写真です。
伝統的な民族衣装ではなく、普通に街で見かけるようなシャツやジャケットの身なりの人間が弓矢を構えているアンバランス。
これが狩ではなく、人間同士の殺し合いの現場であるという意外性。
銃器から核兵器まであふれている現代に弓矢や槍で争う意外性・・・。

ルワンダのジェノサイドでは、主にマチェーテと呼ばれる山刀というかナタのようなものが使われました。
棍棒に釘を植え込んだマスというものも使用されたようです。
別に近代的銃器がなくても殺戮は行われます。
むしろ、それまでの“良き隣人”が突然ナタや棍棒で至近距離から襲いかかる・・・そのことが銃器を使用した近代的大量殺戮よりむしろ怖いものを感じさせます。

AFPで、自衛のために弓矢作りに励む村の様子を伝える記事がありました。
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ケニア西部の小さな町ンジョロでは、住民が協力して弓矢で自衛している。
町内の木製の門構えのほこりっぽい敷地では、男性6人が腰掛けて一心に矢を削っていた。男性たちは刀を研ぎ、弓を組み立てながら、戦いの準備をしているところだと話した。

ケニア国内ではこれまでに数百人が死亡した。病院関係者によると、弓矢による死者が次第に増えており、毒矢が頭部や胸部に残っているケースもあるという。 

弓を作っているシルベスターさんによると、「1日に作れる弓矢は80-100組」。地元有志らが協力して弓矢作りに必要な道具を揃えるための資金を貯めているのだという。
弓を作るには堅い木を強い力で曲げ、弦を張り、スプリングを取りつける。こうすることで射程距離500メートル以上、全長1.2メートルの弓ができあがる。
戦闘に加わらない女性や女児は、弓矢を作る材料の調達を助ける。
地元の指導者たちは秘密の弓矢工場が複数あることを承知しているが、警察には隠している。10人1組で構成される5つの集団が町のあちこちに散らばって弓矢を作っているという。

リフトバレー州の警察署長は、弓矢が人に対する武器として使用され始めたのは「まったく予想外だった」と話す。「今回の衝突以前には、弓矢は狩猟などの活動に使われるのが主で、こうした攻撃には使われなかった。非常に誤った使い方だし、これまでにはなかったことだ」【2月4日 AFP】
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射程距離500mというのは“本当かな・・・”という感じもしますが。
警察署長の「非常に誤った使い方だ」というのは、ごもっともです。「もっときちんと取り締まれば?」と言いたくもなりますが。

常々、“世界中で紛争・内戦が絶えない大きな理由のひとつは、誰かが彼らに武器を供給しているからだ」と思っていましたし、今でも思っていますが、たとえ外部から武器が持ち込まれなくても殺戮は起こるというのも事実のようです。

銃器だろうが、ナタだろうが、毒矢だろうが、殺しあうことは同じと言えば同じですが、個人的にはどうしても殺されるなら、ナタで切り刻まれるより銃で撃たれたほうがいいようにも思えます。
じゃ、毒矢は・・・なんて、どうでもいい話はともかく、殺し方についても、どんな方法でも同じと言えば同じなのですが、どうしても受け入れ難い殺し方もあります。

イラクの首都バグダッドで1日、買い物客らでにぎわう市場2カ所を狙った爆弾テロがあり、98人が死亡、208人が負傷しました。
 最初のテロは同日昼前、バグダッド中心部にあるペット市場で発生。アバーヤと呼ばれる目だけを出して全身を黒い布で覆う衣装をまとい、「鳥を売りたい」と声をかけていた女性が爆発したそうです。
 さらに、その直後に別の鳥市場でも、アバーヤに身を包んだ女性が自爆しました。
イラクのタラバニ大統領は「国民和解を妨害しようとするテロリストの仕業だ」と非難し、アルカイダ系の組織の犯行との見方を示しています。

イラク軍高官は今回事件について、いずれも知的障害を持つ女性の体に巻き付けられた爆弾を遠隔操作で爆破させたものとの見方を示しています。
この見解がどのような根拠に基づくものなのかはよくわかりませんが、仮にこのとおりだとすると、なんともやりきれない話です。
ものごとが的確に判断ができない人間のからだに爆弾(ある報道では約15kgとも)をくくりつけ、携帯電話みたいなものを使って遠隔操作で爆破する・・・。

米軍の増派戦略の効果で自動車爆弾テロを行うのが困難になったため、アルカイダが「異なる(テロの)手法を見つけた」との見方もあるようですが、ライス国務長官は手口の残忍性を非難するとともに、その対応については「非常に困難な挑戦だ」と語っています。

先月25日アルカイダ勢力の拠点となっているモスルで警察幹部らが殺害されたのを受け、マリキ首相はアルカイダに対する大規模な掃討作戦に着手する意向を表明していましたが、2日軍関係者との協議を行い、「テロリズムに対する断固たる決戦に踏み切る時だ」との声明を発表しています。

所詮テロとか戦争なんてこんな非情なものだと言えばそうでしょうし、宗教的には「聖戦での尊い死によって、死後は・・・」ということもあるのでしょうが、こうしたやり方を正当化する考え方をやはり受け入れることはできません。


コメント
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