南アフリカのジンバブエ(旧ローデシア)では経済崩壊・驚異的なハイパーインフレーションが進行しています。
この件はこれまでも、当ブログでもとりあげてきました。
12月14日 「ジンバブエ 経済崩壊・人権侵害、それでも続くムガベ政権」
http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20071214
7月11日 「ジンバブエ経済崩壊 権力に固執するかつての独立の英雄」
http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20070711
今年に入り、中央銀行は1月18日に最高額紙幣として“1000万ジンバブエドル札”を新たに導入しましたが、1月31日には、同国の昨年11月時点での年間インフレ率が2万6470%に達したと発表しました。
インフレ率100%のときが年間で2倍、200%で3倍ですから、26,470%というと年間で約265倍、つまり約“2の8乗”倍ということでしょうか?
なんだか訳がわかりませんが、そうすると大体ひと月半で全ての物の値段が倍になるという計算になります。
これではまともな生産活動は成立しません。
なお、ジンバブエの失業率は約80%と言われています。
この経済崩壊の背景には、ムガベ大統領による農園・企業の強引な黒人化がもたらした供給体制の崩壊があり、内戦・民族紛争と並ぶ現代アフリカの混乱を象徴する事象にも思えます。
政策の失敗・経済の行き詰まりを“白人農場・企業の摂取”という人種対立にすりかえ、接収した白人資産のバラマキで一部の支持を維持する・・・という構図が見えます。
当然、混乱は経済だけに止まらず、社会システム全般に及びます。
例えば教育。
*****子どもを学校に通わせるのがますます大変に*****
ジンバブエでは、子どもを学校に通わせるのがますます困難になっている。2000年から始まった白人大農場の強制収用に伴う経済崩壊で、教育水準は急速に低下している。
かつてアフリカ一を誇っていた教育制度は、今や危機的状況にある。
公立学校では何万人もの教員が賃上げを要求して怠業的行為を行っている一方、給与の高い職を求めて海外に移住する教員もいれば、教員組合によると06年中に15,000人以上が離職した。
教職にとどまっている教員も大半の時間を副業に費やする。
1冊の教科書を4~5人の生徒が、1台の机を4人の生徒が共有しているという。生徒たちは空腹から失神し、女生徒は生理中ナプキンを買う余裕もないため欠席する。
露天商、通勤バスの車掌、さらには売春婦と、家計を助けるために退学する子どもも相次ぎ、中退率は急上昇している・・・・・・・【2月4日 IPS】
*********************************
こうした状況で、ムガベ大統領は自身の任期延長を画策しましたが与党内からの反対にあい、結局再度3月29日に予定されている大統領選挙に出馬する形をとることになりました。
ムガベ大統領の黒人化政策が国民から支持されているのかというと、必ずしもそうでもないようです。
00年には、政府が補償なしで白人の土地を収用できる権利を漏り込んだ新憲法案が国民投票で否決されています。
02年の大統領選挙では、特に都市部を中心に野党候補のほうがムガベ大統領を上回る支持を集めていたといわれています。
しかし、大統領側の徹底した弾圧(政治集会が開けない、政府批判は許さない、与党支持者による襲撃で32名が死亡など)などがあって、結局“再任”という結果になりました。
植民地政策を批判し白人資産を接収するムガベ政権とは以前から激しく対立する関係にあった旧宗主国イギリスなどが、この選挙について“不正があった”と強く批判し、1年間の英連邦の資格停止に至っています。
このとき、英連邦内のアフリカ諸国は、「公正さに欠けたとは言え、合法だ」と、ムガベ政権を弁護する側に立っていました。
このイギリスなどの西欧諸国とアフリカ諸国の対立は現在でも変わっていません。
当時ムガベ大統領を脅かす勢いだった野党も、その後弾圧、内部対立で低迷し、今年の大統領選挙に統一候補を出せずにいました。
そんななかで、元財務相で与党幹部でもあるマコニ氏が、ムガベ氏を批判して無所属から出馬することが報じられました。
マコニ氏は記者会見で「党内外の人々と相談した結果、呼び掛けに応じ出馬することにした。私は過去10年近くの間、すべての市民が耐えてきた苦しみを共有し、この苦難が国家指導部の失政の結果だとの意見に同調する」と述べています。【2月5日 AFP】
マコニ氏は2000年にムガベ政権下で財務相をつとめていますが、政府の経済政策に批判的だったことから、02年の大統領選挙後の内閣改造で交代させられています。
上記AFP記事では、マコニ氏の財務相在任を“00年から04年”としていますが、02年の交代後また復職したのかどうかはわかりません。
マコニ氏がムガベ大統領の政策にどのようにかかわったのかについてもよくわかりませんが、多少なりともムガベ大統領と意見があわなかった人物であれば、白人資産接収と強権発動しか念頭にないムガベ再任よりはるかにベターな選択かと思われます。
83歳のムガベ大統領に政策変更・現状打破を期待するのは無理でしょう。
しかし、問題はマコニ氏の選挙活動がどの程度許されるのか・・・ということです。
3月に予定されている議会・大統領選挙を前に、野党の反政府集会は警察側から全面的な禁止が通達されていました。
先月23日に、野党の反政府集会がサッカー場で開催することが認められましたが、デモは禁止されています。
また、02年選挙で大統領を争った野党議長とその側近が警察の家宅捜査を受け、一時的に拘束されるという事態も生じています。【1月24日 AFP】
出馬表明したマコニ氏に対する圧力が強まることは当然ですが、これまでの経緯を見ると、支持者の生死に関わるようなことも多発することも予想されます。
野党スポークスマンは「我々は、貧困、飢餓、ムガベ政権による独裁と戦おうとする人物を歓迎する」と語っています。
国内外の識者の間には「もしマコニ氏が軍のサポートを得ることができれば、 今回のマコニ氏の動きは、ムガベ政権の終焉を意味することになるかもしれない」という期待する声、「彼の挑戦は、(選挙戦に)新たな生命を吹き込むことになるだろうが、ムガベが非常に強い政党幹部を動かすことを考えると、彼の政策が実現可能かどうか疑わしい」という懸念する声、両方あるようです。
この件はこれまでも、当ブログでもとりあげてきました。
12月14日 「ジンバブエ 経済崩壊・人権侵害、それでも続くムガベ政権」
http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20071214
7月11日 「ジンバブエ経済崩壊 権力に固執するかつての独立の英雄」
http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20070711
今年に入り、中央銀行は1月18日に最高額紙幣として“1000万ジンバブエドル札”を新たに導入しましたが、1月31日には、同国の昨年11月時点での年間インフレ率が2万6470%に達したと発表しました。
インフレ率100%のときが年間で2倍、200%で3倍ですから、26,470%というと年間で約265倍、つまり約“2の8乗”倍ということでしょうか?
なんだか訳がわかりませんが、そうすると大体ひと月半で全ての物の値段が倍になるという計算になります。
これではまともな生産活動は成立しません。
なお、ジンバブエの失業率は約80%と言われています。
この経済崩壊の背景には、ムガベ大統領による農園・企業の強引な黒人化がもたらした供給体制の崩壊があり、内戦・民族紛争と並ぶ現代アフリカの混乱を象徴する事象にも思えます。
政策の失敗・経済の行き詰まりを“白人農場・企業の摂取”という人種対立にすりかえ、接収した白人資産のバラマキで一部の支持を維持する・・・という構図が見えます。
当然、混乱は経済だけに止まらず、社会システム全般に及びます。
例えば教育。
*****子どもを学校に通わせるのがますます大変に*****
ジンバブエでは、子どもを学校に通わせるのがますます困難になっている。2000年から始まった白人大農場の強制収用に伴う経済崩壊で、教育水準は急速に低下している。
かつてアフリカ一を誇っていた教育制度は、今や危機的状況にある。
公立学校では何万人もの教員が賃上げを要求して怠業的行為を行っている一方、給与の高い職を求めて海外に移住する教員もいれば、教員組合によると06年中に15,000人以上が離職した。
教職にとどまっている教員も大半の時間を副業に費やする。
1冊の教科書を4~5人の生徒が、1台の机を4人の生徒が共有しているという。生徒たちは空腹から失神し、女生徒は生理中ナプキンを買う余裕もないため欠席する。
露天商、通勤バスの車掌、さらには売春婦と、家計を助けるために退学する子どもも相次ぎ、中退率は急上昇している・・・・・・・【2月4日 IPS】
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こうした状況で、ムガベ大統領は自身の任期延長を画策しましたが与党内からの反対にあい、結局再度3月29日に予定されている大統領選挙に出馬する形をとることになりました。
ムガベ大統領の黒人化政策が国民から支持されているのかというと、必ずしもそうでもないようです。
00年には、政府が補償なしで白人の土地を収用できる権利を漏り込んだ新憲法案が国民投票で否決されています。
02年の大統領選挙では、特に都市部を中心に野党候補のほうがムガベ大統領を上回る支持を集めていたといわれています。
しかし、大統領側の徹底した弾圧(政治集会が開けない、政府批判は許さない、与党支持者による襲撃で32名が死亡など)などがあって、結局“再任”という結果になりました。
植民地政策を批判し白人資産を接収するムガベ政権とは以前から激しく対立する関係にあった旧宗主国イギリスなどが、この選挙について“不正があった”と強く批判し、1年間の英連邦の資格停止に至っています。
このとき、英連邦内のアフリカ諸国は、「公正さに欠けたとは言え、合法だ」と、ムガベ政権を弁護する側に立っていました。
このイギリスなどの西欧諸国とアフリカ諸国の対立は現在でも変わっていません。
当時ムガベ大統領を脅かす勢いだった野党も、その後弾圧、内部対立で低迷し、今年の大統領選挙に統一候補を出せずにいました。
そんななかで、元財務相で与党幹部でもあるマコニ氏が、ムガベ氏を批判して無所属から出馬することが報じられました。
マコニ氏は記者会見で「党内外の人々と相談した結果、呼び掛けに応じ出馬することにした。私は過去10年近くの間、すべての市民が耐えてきた苦しみを共有し、この苦難が国家指導部の失政の結果だとの意見に同調する」と述べています。【2月5日 AFP】
マコニ氏は2000年にムガベ政権下で財務相をつとめていますが、政府の経済政策に批判的だったことから、02年の大統領選挙後の内閣改造で交代させられています。
上記AFP記事では、マコニ氏の財務相在任を“00年から04年”としていますが、02年の交代後また復職したのかどうかはわかりません。
マコニ氏がムガベ大統領の政策にどのようにかかわったのかについてもよくわかりませんが、多少なりともムガベ大統領と意見があわなかった人物であれば、白人資産接収と強権発動しか念頭にないムガベ再任よりはるかにベターな選択かと思われます。
83歳のムガベ大統領に政策変更・現状打破を期待するのは無理でしょう。
しかし、問題はマコニ氏の選挙活動がどの程度許されるのか・・・ということです。
3月に予定されている議会・大統領選挙を前に、野党の反政府集会は警察側から全面的な禁止が通達されていました。
先月23日に、野党の反政府集会がサッカー場で開催することが認められましたが、デモは禁止されています。
また、02年選挙で大統領を争った野党議長とその側近が警察の家宅捜査を受け、一時的に拘束されるという事態も生じています。【1月24日 AFP】
出馬表明したマコニ氏に対する圧力が強まることは当然ですが、これまでの経緯を見ると、支持者の生死に関わるようなことも多発することも予想されます。
野党スポークスマンは「我々は、貧困、飢餓、ムガベ政権による独裁と戦おうとする人物を歓迎する」と語っています。
国内外の識者の間には「もしマコニ氏が軍のサポートを得ることができれば、 今回のマコニ氏の動きは、ムガベ政権の終焉を意味することになるかもしれない」という期待する声、「彼の挑戦は、(選挙戦に)新たな生命を吹き込むことになるだろうが、ムガベが非常に強い政党幹部を動かすことを考えると、彼の政策が実現可能かどうか疑わしい」という懸念する声、両方あるようです。