アフガニスタン旧支配勢力タリバンとの激戦が続く東・南部で展開する米、英、オランダ、カナダに比べ、仏、独、伊などは治安が比較的良い北部などにとどまったままで、このことに関して関係国間で不協和音が出ていることは先日(2月6日)も取り上げました。
7、8日、リトアニアの首都ビリニュスでNATO国防相会議が開かれました。
NATO高官によると、ISAFは「さらに3000~5000人が必要」とされているそうですが、大きな進展は見られなかったようです。
最近のアメリカ首脳の発言にはこの件に関する苛立ちがあふれています。
ゲーツ国防長官は6日、「(NATO)加盟国は、アフガン国民のため死をいとわない国と、そうでない国に分かれつつある」と、また、「欧州の人々は、アフガンの安定が欧州にとっていかに重要か理解していない」と発言。
ライス国務長官は同じ6日、「(ISAFの)活動はアフガンでの平和維持が使命ではなく、反乱勢力との戦闘であることを理解すべきだ」と語っています。
ISAFの使命はいつのまにか“戦闘”になったようです。
ISAF設立根拠である安保理決議1386は、ボン合意の付帯文書の規定に基づきその履行措置として採択されています。(以下、ISAF、OEFについて、12月16日の当ブログhttp://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20071216からの再録)
その付帯文書内容は要約すれば、「この会議の参加者一同は,アフガニスタン新政府が自国の責務としての治安・秩序を維持し、安全な環境下で国連・NGO等の活動ができるように、保安部門及び国軍の創設についてアフガニスタン新政府を支援する。当面の措置としては、国連の安全保障理事会に対し、カブールならびにその周辺地域での治安維持支援を行う国連授権のある部隊の早期派遣を求める。」といった内容です。【ウィキペディアより】
明らかに“治安維持”を使命としてスタートしています。
一方、アメリカの「不朽の自由作戦(OEF)」の法的根拠は、国連憲章第51条の規定に基づき、攻撃開始の当日である2001年10月7日に米英両国により安保理に提出された次の書簡にあるとされています。
書簡は要約すれば、「米国は9.11の軍事攻撃に対する個別的又は集団的な固有の自衛の権利の行使として他の諸国とともに行動を開始したことを、国連憲章第51条の規定に基づき報告する。」ということでしょうか。【ウィキペディアより】
段階的に指揮権がOEFからISAFへ委譲されていく過程で、明確に趣旨は異なる二つの活動が一体となる形で変質しているようです。
12月20日の当ブログ(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20071220)でも取り上げたように、オーストラリアのフィッツギボン国防相はゲーツ米国防長官らが出席した英国での会議で、現在のアフガンにおけるNATO・多国籍軍の活動に関し、「多くのアリを踏みつぶしてはいるがアリの巣に対して何らの対策も講じていない」と指摘しています。
また、「我々には軍事的な対応以上のものが求められている。それは主に、タリバンの穏健派やアフガン社会の他の勢力の心を取り込むことだ」とも述べています。
タリバン穏健派との和解については2月6日ブログでも触れたように、進められているような話はときに聞きますが、詳しい話はよくわかりません。
アフガンにおける“アリの巣”対策として重要な問題がケシ対策でしょう。
アフガニスタンは高地で空気がよく乾燥しているため、純度の高いヘロインが精製されるそうです。
当然、「世界市場」で人気が高く、アフガニスタンは世界のケシ栽培量の実に92%を占める「ケシ王国」になっているとか。
アフガニスタンのケシは4分の3以上が中央政府の支配が及ばない地域で栽培され、タリバンや軍閥の資金源になっています。
タリバンや軍閥は米軍の攻撃からケシ栽培を守り、アヘン密売から得た収入で武器を購入するという強固な関係が成立しているとも言われます。
農民にとっては、普通の作物の場合、農家1戸あたりの月収は100~200ドルですが、ケシは2,000~4,000ドル。しかもケシは2期作なので農民にとっては「安定」した収入源となるそうです。【2月6日 IPS】
アフガニスタンの復興支援にかかわる関係国閣僚・機関が集まり、東京都内で開かれていた復興支援調整会議への出席のため来日中の国連薬物犯罪事務所(UNODC)のコスタ事務局長は6日、ケシのアフガニスタンでの今年の栽培規模が、過去最高だった去年と同規模になるとの見通しを明らかにしました。
中央政府は小麦や野菜栽培に転作させようとしていますが、ケシ栽培を止めた農家への補償がうまく機能しないこともあって、政府の支配が及ばない地域では逆にケシの収量が増えています。
会議では司法や教育、インフラ整備などでも麻薬対策を重点を置いた政策の実施が必要だとの意見が相次いだそうです。
この会合にあわせて、世界銀行と英国際開発省は5日、「アフガニスタンのアヘン生産を減らすための復興支援策」をまとめた合同報告書を発表しました。
「農民をケシ栽培に依存させないよう、世界銀行は積極的に介入する」として、灌漑整備、家畜飼育推進、アフガン駐在関係国機関の野菜・果物の現地調達、綿花の一貫栽培、農村への企業誘致、農村道路の整備などがあげられています。
このなかで特に急務なのは灌漑の問題でしょう。
アフガニスタンの農業を支えていたのは山岳地帯の水を地下水路で引いてくる“カレーズ”と呼ばれる水路でした。
このカレーズの水なしには乾燥地帯での農業は出来ません。
しかし、20年にわたる内戦でカレーズはゲリラ戦の塹壕として活用され、ズタズタに破壊され、不発弾がゴロゴロしている状態で壊滅的な被害を受けています。【1月9日 IPS】
政府やアメリカ軍が力づくで農民にケシ栽培中止を迫っても、灌漑なしには他の作物を栽培することはできません。
灌漑整備に戦闘行為同様に本腰を入れ、国家の基幹産業である農業を建て直すことで人心をタリバンから取り戻し、タリバンの資金源を断つ・・・こうした取り組みが求められているように思われます。
この冬アフガニスタンは厳しい寒波に襲われ、多数の死者が出ています。
悲しいニュースではありますが、唯一の救いは、冬の間の大量の雪は春以降の農業用水になるということでしょうか。
ただこの水も、カレーズのような水路が整備されないと利用できません。
7、8日、リトアニアの首都ビリニュスでNATO国防相会議が開かれました。
NATO高官によると、ISAFは「さらに3000~5000人が必要」とされているそうですが、大きな進展は見られなかったようです。
最近のアメリカ首脳の発言にはこの件に関する苛立ちがあふれています。
ゲーツ国防長官は6日、「(NATO)加盟国は、アフガン国民のため死をいとわない国と、そうでない国に分かれつつある」と、また、「欧州の人々は、アフガンの安定が欧州にとっていかに重要か理解していない」と発言。
ライス国務長官は同じ6日、「(ISAFの)活動はアフガンでの平和維持が使命ではなく、反乱勢力との戦闘であることを理解すべきだ」と語っています。
ISAFの使命はいつのまにか“戦闘”になったようです。
ISAF設立根拠である安保理決議1386は、ボン合意の付帯文書の規定に基づきその履行措置として採択されています。(以下、ISAF、OEFについて、12月16日の当ブログhttp://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20071216からの再録)
その付帯文書内容は要約すれば、「この会議の参加者一同は,アフガニスタン新政府が自国の責務としての治安・秩序を維持し、安全な環境下で国連・NGO等の活動ができるように、保安部門及び国軍の創設についてアフガニスタン新政府を支援する。当面の措置としては、国連の安全保障理事会に対し、カブールならびにその周辺地域での治安維持支援を行う国連授権のある部隊の早期派遣を求める。」といった内容です。【ウィキペディアより】
明らかに“治安維持”を使命としてスタートしています。
一方、アメリカの「不朽の自由作戦(OEF)」の法的根拠は、国連憲章第51条の規定に基づき、攻撃開始の当日である2001年10月7日に米英両国により安保理に提出された次の書簡にあるとされています。
書簡は要約すれば、「米国は9.11の軍事攻撃に対する個別的又は集団的な固有の自衛の権利の行使として他の諸国とともに行動を開始したことを、国連憲章第51条の規定に基づき報告する。」ということでしょうか。【ウィキペディアより】
段階的に指揮権がOEFからISAFへ委譲されていく過程で、明確に趣旨は異なる二つの活動が一体となる形で変質しているようです。
12月20日の当ブログ(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20071220)でも取り上げたように、オーストラリアのフィッツギボン国防相はゲーツ米国防長官らが出席した英国での会議で、現在のアフガンにおけるNATO・多国籍軍の活動に関し、「多くのアリを踏みつぶしてはいるがアリの巣に対して何らの対策も講じていない」と指摘しています。
また、「我々には軍事的な対応以上のものが求められている。それは主に、タリバンの穏健派やアフガン社会の他の勢力の心を取り込むことだ」とも述べています。
タリバン穏健派との和解については2月6日ブログでも触れたように、進められているような話はときに聞きますが、詳しい話はよくわかりません。
アフガンにおける“アリの巣”対策として重要な問題がケシ対策でしょう。
アフガニスタンは高地で空気がよく乾燥しているため、純度の高いヘロインが精製されるそうです。
当然、「世界市場」で人気が高く、アフガニスタンは世界のケシ栽培量の実に92%を占める「ケシ王国」になっているとか。
アフガニスタンのケシは4分の3以上が中央政府の支配が及ばない地域で栽培され、タリバンや軍閥の資金源になっています。
タリバンや軍閥は米軍の攻撃からケシ栽培を守り、アヘン密売から得た収入で武器を購入するという強固な関係が成立しているとも言われます。
農民にとっては、普通の作物の場合、農家1戸あたりの月収は100~200ドルですが、ケシは2,000~4,000ドル。しかもケシは2期作なので農民にとっては「安定」した収入源となるそうです。【2月6日 IPS】
アフガニスタンの復興支援にかかわる関係国閣僚・機関が集まり、東京都内で開かれていた復興支援調整会議への出席のため来日中の国連薬物犯罪事務所(UNODC)のコスタ事務局長は6日、ケシのアフガニスタンでの今年の栽培規模が、過去最高だった去年と同規模になるとの見通しを明らかにしました。
中央政府は小麦や野菜栽培に転作させようとしていますが、ケシ栽培を止めた農家への補償がうまく機能しないこともあって、政府の支配が及ばない地域では逆にケシの収量が増えています。
会議では司法や教育、インフラ整備などでも麻薬対策を重点を置いた政策の実施が必要だとの意見が相次いだそうです。
この会合にあわせて、世界銀行と英国際開発省は5日、「アフガニスタンのアヘン生産を減らすための復興支援策」をまとめた合同報告書を発表しました。
「農民をケシ栽培に依存させないよう、世界銀行は積極的に介入する」として、灌漑整備、家畜飼育推進、アフガン駐在関係国機関の野菜・果物の現地調達、綿花の一貫栽培、農村への企業誘致、農村道路の整備などがあげられています。
このなかで特に急務なのは灌漑の問題でしょう。
アフガニスタンの農業を支えていたのは山岳地帯の水を地下水路で引いてくる“カレーズ”と呼ばれる水路でした。
このカレーズの水なしには乾燥地帯での農業は出来ません。
しかし、20年にわたる内戦でカレーズはゲリラ戦の塹壕として活用され、ズタズタに破壊され、不発弾がゴロゴロしている状態で壊滅的な被害を受けています。【1月9日 IPS】
政府やアメリカ軍が力づくで農民にケシ栽培中止を迫っても、灌漑なしには他の作物を栽培することはできません。
灌漑整備に戦闘行為同様に本腰を入れ、国家の基幹産業である農業を建て直すことで人心をタリバンから取り戻し、タリバンの資金源を断つ・・・こうした取り組みが求められているように思われます。
この冬アフガニスタンは厳しい寒波に襲われ、多数の死者が出ています。
悲しいニュースではありますが、唯一の救いは、冬の間の大量の雪は春以降の農業用水になるということでしょうか。
ただこの水も、カレーズのような水路が整備されないと利用できません。