(ペルーのカラル遺跡 “flickr”より By beardiebloke
http://www.flickr.com/photos/michaelbauer/817069083/)
GWの旅行から帰国して新聞を整理していると、古代アンデス文明に関する記事を目にしました。
*****5000年前に「祭祀都市」 南米に「四大文明」級遺跡*******
約5000年前の紀元前3000年ごろからペルー中部海岸地域で発展した「古代アンデス文明」の解明が進んでいる。代表例の1つが米州大陸最古の祭祀(さいし)都市カラル遺跡だ。乾燥した渓谷の小川沿いで宗教儀式を行うピラミッド型の神殿を中心に、都市が栄えたという。
スペインに滅ぼされたインカ帝国がこの地域を支配する時期より4000年以上も前で、古代エジプトに初めて王朝が開かれたのとほぼ同じ時期。ペルー考古学の専門家らはエジプト、中国、インダス、メソポタミアで地球上最も古い“四大文明”が栄えたとする史観は「見直されるべきだ」と口をそろえている。【5月6日 南日本】
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南米の古代文明というと、インカ文明やアステカ文明を思い浮かべますが、これらは時期的には13,14世紀からスペインに滅ぼされる16世紀までと、比較的新しいものになります。
メキシコ・ユカタン半島のマヤ文明も、古典期で300年頃からと言われています。
5000年前というと、相当に遡ったものになります。
この記事を読んで思ったのは、ベーリング海峡を通って新大陸に人類が移住したのが1万4000年ぐらい前と言われていますが、移住して早々に進んだ文明が展開したことになり、文明の発達というものは必ずしも時間の経過に沿ったものではないのかな・・・ということです。
進むときには沸き立つように一気に開花し、滅ぶときもまた一気に・・・ということが文明の歴史には珍しくないようです。
南米の古代遺跡に関してはこんな記事も。
****チリのモンテベルデの住居跡、「南北アメリカで最古」と判明*****
チリ南部のモンテベルデの住居跡は1万4000年前のものであり、南北アメリカでは最も古い居住跡であることが確認されたとの論文が、9日の米科学誌「サイエンス」に発表された。
これにより、モンテベルデの住居跡には、これまでに知られている南北アメリカで最古の居住地よりも1000年以上も前に人が住んでいたことが立証されたとしている。
研究者らは、同住居跡の年代が明らかになったことで、「人類は1万6000年以上前に、当時、陸地だったベーリング海峡を渡ってアメリカ大陸に移動した」とする一般的な仮説も裏付けられるとしている。【5月13日 AFP】
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人類がベーリング海峡を渡ったのはいつなのか?
上記記事では“1万6000年以上前”となっていますが。
当時ベーリング陸橋によりユーラシア大陸とアメリカ大陸とが陸続きになっていたとはいえ、1万4000年前までは、北米に存在した氷河(カナダ北東部からと、ロッキー山脈からの二つの氷河)のため、ベーリング陸橋とアメリカ大陸との間の陸路は閉ざされていた・・・というような説明も見られますが、実際のところ(誰も見ていませんが)どうなのでしょうか?
いずれにしても、新大陸に侵入して以降の人類の展開は、非常に速いものがあります。
北米の遺跡と南米の遺跡の間には1千年ぐらいしか、時間的差がないという話も聞きますが、そのあたりもモンテベルデの住居跡の話如何ではどうなるのでしょうか?
ネットで検索すると、新大陸への人類の移住に関しては、当然ながら諸説あるようです。
そもそも“ベーリングTheory”(モンゴロイドが、アジア各地からベーリング海峡を通り、アメリカ大陸に渡ったりアメリカ原住民の祖先となったという説)そのものがもはや虚構であり支持されない・・・という考えもあるようです。
米サウスカロライナ州南部で定説を覆す約5万年前の北米最古の遺跡を発見したとサウスカロライナ大の発掘チームが明らかにしたという04年の記事もありました。【04年11月24日 読売】
また、南米アマゾンで北米遺跡より古い遺跡が発見されており、「民族大移動」のパラダイムが変わってきていると主張されている研究者もおられるようです。
門外漢には、どれがアカデミックなもので、どれが“眉唾”なのか全く判別できませんが、誰も見た訳ではない古代文明や人類の歴史には、“常識のうそ”的なものがあってもおかしくはないような気もします。
ナスカ地上絵を引き合いに出して地球外生命の存在を力説されていた某官房長官もおられたようですが。
南米つながりで、最近の情勢に少し触れると、ボリビアでの自治拡大(中央政府からの実質的離脱)を求める住民投票のニュースを目にしました。
ボリビアのモラレス大統領は、主に西部に居住し貧困に苦しむ先住民族に対して東部の産出する富を再分配する政策を進めています。
これに反発する東部の各州が、中央政府の管理から離脱を図って各地で住民投票を進めています。
5月4日に実施されたサンタクルス州の住民投票では「自立」派が85%を占めましたが、モラレス大統領は住民投票自体が違法であると主張し、さらに、反対票・無効票・棄権をあわせると有権者の49%に達することを指摘して、投票の正統性を否定しています。
この問題は12月24日にも取り上げていますが、そのときの記載を転記します。
「東部のサンタクルス、タリハ、ベニおよびパンドの富裕な4県は、国内総生産の3分の2、人口850万の3分の1を占めており、鉱山企業や大農園が集中しています。
東部4県は天然ガスなどの資源に富み、その利権を新たに地域づくりに生かすことを求めています。
また東部住民には先住民と白人の混血が多いのに対し、モラレス大統領の出身地である西部山間部は先住民が多数を占めています。
両者の対立は、天然ガス国有化を進めるモラレス大統領による経済活動の国家管理の懸念、資源利益の東部から西部への移転という経済面に加え、人種的対立の側面も含んでいます。」
一方、モラリス大統領は、先住民の権利拡大、国家による遊休私有地の収用を認めて大土地所有制を制限などを盛り込んだ憲法改正案の是非を問う国民投票を5月4日に実施する予定でした。
憲法改正は、先住民出身のモラレス大統領が掲げる重要公約の一つです。
こちらについては、5月4日の実施は延期されたようです。
いずれにしても左派政権ボリビアでは人種・経済対立からの“国家分裂”を孕んだ展開が続いているようです。