
(ヒズボラ指導者Hassan Nasrallahのポスター
“flickr”より By delayed gratification
http://www.flickr.com/photos/joshhough/478347965/)
今現在紛争の緊張が高まっているのがグルジアとレバノン。
グルジアについては、政府の実効支配が及んでいないアブハジアや南オセチア自治州の独立への動きを支援するロシアとグルジア政府が対立してきました。
コソボ独立を受けて、これに反対するロシア側の“コソボが独立するなら、アブハジアや南オセチア自治州だって独立できるじゃないか”という揺さぶりが激化。
先月には、グルジア政府の無人偵察機をアブハジア上空でロシア戦闘機が撃墜したとかしないとか、また“そもそも無人偵察機を飛ばすことがけしからん”とか対立もエスカレート。
グルジアがアブハジアとの境界地域に攻撃準備のため1500人の部隊を配置しているとロシアは非難し、先月29日にはアブハジアへのロシア軍駐留部隊増強を発表。
「グルジアがアブハジアを攻撃すれば、ロシアは報復する」と警告しています。
グルジアのサーカシビリ大統領は8日、「数日前は一触即発だった。今も危険性は残っている」とした上で、グルジア政府はロシアとの戦争を望んでおらず、また軍隊の準備不足やNATOの支援も得られないとの見通しから戦争は不可能とも主張しています。
まあ、ロシア相手の戦闘となるとグルジアも相当の覚悟が必要になります。
ロシアにしても国際的立場があります。
お互いよほどのことがない限り“グルジア対ロシア”という戦闘状態に入ることはないようにも思えます。
一方“危ない”と言うか、実際すでに戦闘が始まっているのがレバノン。
宗教的に入り組んだレバノンの内情、大統領を選定できない状態が続いていることは3月22日にも取り上げました。
http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20080322
シニョーラ内閣が5日、シーア派野党ヒズボラが独自に設置している電話通信網を閉鎖するよう治安当局に指示したことが発端だそうで、これにヒズボラ側が「宣戦布告に等しい」と反発。
7日に始まった衝突では、ヒズボラの支持者らがタイヤを燃やしたり土を盛って主要道路を封鎖。
ベイルート国際空港に向かう幹線道路も交通が遮断されました。
首都ベイルート中心部では8日夕、ヒズボラの支持者と与党連合の支持者が銃撃や砲撃で激しく交戦し、市民が巻き添えになるなどして8人が死亡。
衝突は9日未明も断続的に続いているそうです。
90年に15年間続いた“レバノン内戦”が終わって以来、最悪の事態になっています。
ヒズボラは周知のように隣国シリアやイランの支援を受けており、与党勢力は親米反シリアの立場にあります。
レバノンを自国領域のように考えているシリアがこの混乱に介入すると、紛争は更に厄介な展開になります。
少なくとも、先月末に報じられていた“ゴラン高原返還”をめぐるシリアとイスラエルの交渉はご破算になります。
シリア・イランとイスラエル・アメリカの対立は激しくなり、パレスチナ和平、イラク情勢もそのあおりを受ける形になることも想像されます。
ヒズボラがどこまで“やる気”なのか・・・。
レバノンでは、イスラム教のシーア派、スンニ派、ドールズ教、キリスト教マロン派、正教会、プロテスタント、アルメニア正教会など18の宗教・宗派が憲法で認められており、宗教的多様性が昔から維持されてきた地域です。
しかし、最近では宗教・宗派間の対立が激化、子どもたちの間でも宗派間で喧嘩が増えているそうです。
また、イスラムの女生徒は早い子は7歳でベールを着用し始めますが、その数はおそらく女生徒の5%から近年では30%に増えたとも言われています。【4月2日 IPS】
大人の世界の宗教的不寛容は子供の世界にも広がっていく傾向にあります。
世の中、争いごとの種は尽きませんが、その大部分に宗教・民族の違いを過度に強調する昨今の風潮が関係しているように思えます。