孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

日本のミニマムアクセス米の緊急援助への利用

2008-05-16 14:36:16 | 世相

(コメにもいろんな形・色があります。 “flickr”より By jouste
http://www.flickr.com/photos/dpblackwood/2393944267/)

昨日、世界的な食料価格高騰に対する日本の支援策に関して“ミニマムアクセス米”活用の記事を見ました。

****日本に眠るミニマムアクセス米、放出でコメ高騰対策に 米NGO****
【5月15日 AFP】日本が世界貿易機関(WTO)の合意に基づいて米国から輸入しているコメ150万トンについて、ワシントンDCに拠点を置く非政府組織(NGO)Center for Global Development(CGD)は14日、「コメの価格高騰に歯止めをかけるため」に第三国への売却、または国連世界食糧計画(WFP)への譲渡を米国が許可するべきだとの見解を示した。
1993年のウルグアイ・ラウンド農業合意で定められた農産物の最低輸入制度(ミニマムアクセス)に基づき、日本は米国から中粒米を、タイとベトナムから長粒米を輸入しているが、国内の農業保護政策のため用途を飼料用に限定しており、在庫が積みあがっている。
CGDは、在庫150万トンのコメの大半は状態がよいと指摘。国際市場に放出できれば、日本政府も保管に膨大な経費をかけずに済み、コメ価格高騰を止めるためには最も簡単な方法だとして、米国に「黙認」を呼びかけている。
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日本のコメに関する輸入制度や“ミニマムアクセス米”に関しては、何も知りませんでしたので少し確認してみました。

【世界のコメ生産と貿易】
世界の主なコメ生産国は、中国、インド、インドネシア、バングラデシュなどのアジア諸国で、中国とインドの2ヵ国だけでも約5割を占めています。
しかし、これらの国々は国内供給が中心で、コメ輸出でみると、アメリカ、タイ、オーストラリア、ベトナムなどが主な輸出国です。

日本もその典型ですが、主要生産・消費国が自給を前提とし、あまったら輸出するという体制ですので、生産量に比べ輸出量が極端に小さい(資料・年次により異なり、輸出量は生産量の3~5%とか、0.3%とかいった数字が見られます)のがコメの生産・貿易の特徴です
また、アメリカ・オーストラリアというあまり国内消費しない先進国が、輸出作物として生産し、輸出市場で大きなウェイトを占めているのも特徴です。

このため、コメの国際相場は、その時々の事情で大きく上下します。
日本が259万トンもの緊急輸入をした94年には、一トン500ドルを超え、世界的に豊作だった87、8年には一トン200ドルを割り込むこともありました。

93年の冷夏による「平成の米騒動」時にはタイから緊急輸入されましたが、日本のジャポニカ米ではなく細長いインディカ米で馴染みがなく、調理法も周知されなかったため、日本国内では大変不評でした。
一部に混入物があったと騒がれたこともあって、国内供給が回復すると大量に廃棄されたり、飼料にまわされたりして、輸出したタイ側の感情を逆撫でする摩擦も起こしました。
(私は当時、安価なタイ米ブレンドを使っていましたが。)

【米の内外価格差】
やや古い数字ですが、日本国内における2000年当時の米の消費者価格(1kgあたり)は、アメリカ(116円)の3.1倍、タイ(43円)の8.5倍、中国(28円)の13倍でした。
アジア各国とは人件費、肥料使用の有無、年間収穫回数などで、アメリカ・オーストラリアとは生産規模で、圧倒的な差があるのが現状です。

【ミニマムアクセス米】
ミニマムアクセスとは、WTOにおいて求められる貿易自由化・輸入制限廃止・関税化(輸入数量制限のような非関税措置を撤廃し、通常の関税により輸入量の調整をはかること)に伴い、関税化対象品目のうち、従来ほとんど輸入がなかった品目について設定された最低限必要な輸入量をいいます。
日本はコメについて、93年のウルグアイラウンドでは「関税化の例外措置」として関税化を拒みました(その結果毎年ミニマムアクセスは増加されます。)が、99年から関税化に応じています。
現在、日本のコメに関するミニマムアクセスは76.7万玄米トンです。

日本の米輸入の仕組みは以下のようになっています。
①ミニマムアクセス米以外の米の輸入については、高率の税を課すことにより、実質的に輸入数量の管理を行う
②ミニマムアクセス米は、全量国家貿易の下、基本的に食糧庁が買い取り、価格等の面で国産米では十分対応できない用途(主として加工用途)に向けて販売する。
③ 売れ残ったミニマムアクセス米は、援助用途に充てる。
それでもニーズがなくて最終的に売れ残ったミニマムアクセス米は、国産米の在庫とは別の在庫として管理する。

【近年の情勢変化】
****「お荷物」のミニマムアクセス米の在庫急減 穀物高騰で飼料用に*****
【4月17日 朝日】93年のウルグアイ・ラウンド合意で一定量の輸入が義務づけられ、政府の「お荷物」となっているミニマムアクセス(MA)米の在庫が、07年度に急減した。
農水省によると、トウモロコシなどの世界的高騰で、MA米を飼料に使う農家が急増しているという。
07年度末時点での在庫は120万トン強。
ピークには国内のコメ消費量の4分の1にあたる203万トンの在庫を抱えていた。
それに比べ約4割減少した。
政府は06年度から飼料用として販売を始め、同年度は40万トン、07年度は60万トン強を売った。08年度は70万トンを見込んでいる。
MA米については、倉庫料だけで184億円(06年度)もかかっており、収支は大幅な赤字だ。在庫が減ると国民負担は減少する。
MA米輸入は95年度から始まった。現在は年間77万トン。1トンあたり6万~7万円で、国産米(同20万円強)の3分の1程度だ。国産米の価格下落に配慮して、年間20万~30万トンをみそ、菓子メーカーに販売したり、10万~20万トンを援助用に回したりしてきた。
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昨今の世界的な穀物価格上昇はコメも例外でなく、途上国の低所得層に大きな影響を与えています。
特にインド・ベトナム・ブラジルの輸出制限によって混乱に拍車がかっています。
日本を始め先進国は国際支援の緊急対応を迫られているおりですので、ミニマムアクセス米についても、国内加工や飼料に回すより、途上国援助に振り向けるべきものでしょう。
保管経費が浮く日本にもメリットのある話です。
(援助国の嗜好に合うかどうか・・・という問題はありますが)

わからないのは、冒頭引用記事に“米国が許可するべき”とか、“米国に「黙認」を呼びかけている”とかいう文言が出てきますが、日本が自国のミニマムアクセス米在庫を使用するのに、アメリカの許可が必要なのでしょうか?
別に“皮肉”“批判”ではなく、制度の仕組みとしてよくわかりません。
仮にそういう仕組みであるにせよ、アメリカ自身が各国に緊急支援を呼びかけている訳ですから、異存はないように思えますが・・・。


コメント
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