
(アンゴラの首都ルアンダ郊外のprimary health care centre 石油の恩恵がこのような形広く国民に還元されるのであればいいのですが “flickr”より By Richard Franco http://www.flickr.com/photos/richard_franco/81718502/ )
昨日からアフリカ、特にアンゴラ関連の記事を目にします。
最初は日本政府の取組み。
【日本政府 アフリカ向けOAD拡大検討】
****アフリカ向け倍増 開発会議で表明へ ODA削減対象から除外*****
政府は歳出改革の一環で削減の対象となっているODA予算のうち、アフリカ向け分は除外する方向で検討に入った。
今月28日から横浜市内で開かれる第4回アフリカ開発会議(TICADIV)で、日本のアフリカ重視姿勢をアピールする狙いがある。
経済協力開発機構(OECD)によると、ODA総額で日本は12年まで10年連続で世界1位だったが、米国や英国などに抜かれて18年には5位に転落。福田首相は「深刻な状況だ。そろそろ反転攻勢の足場を築かないといけない」と増額の必要性を認識していた。
アフリカ問題は7月の北海道洞爺湖サミット(主要国首脳会議)の主要議題の一つとなるだけに、日本としてはTICADIVを成功させ、対アフリカ支援をリードする立場を確立したいところだ。
その一方で、政府は日本が提案している温室効果ガスの排出削減量を産業・部門別に積み上げる「セクター別アプローチ」に理解を求めるほか、日本の国連安保理常任理事国入りに対するアフリカ諸国の支持を取り付けたい考えだ。【5月18日 産経】
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ODA拡大は財政再建との絡みがありますが、可能な範囲で前向きに取り組んでもらいたいテーマです。
日本国内に道路を作り続けるより優先度は高いように思います。
ただ、単に資金を提供すればいい、相手国政府が評価し、日本がその見返りを確保できればそれでいい・・・というものではなく、その資金がどのように使われ、援助国国民の生活が本当に改善するのか・・・という視点は忘れてならないものです。
【アフリカの都市化、格差拡大】
アフリカ開発銀行(ADB)の年次総会では、アフリカの急激な都市化、貧富の差拡大に懸念の声があがっています。
****急激な都市化すすむアフリカ、貧富の格差も増大****
アフリカ開発銀行(ADB)は今週、アフリカ都市部の2008年の人口は前年比で12-13%増加し、2035年までに都市部の人口が地方の人口を上回るとの報告書を発表した。
報告書は、都市と地方の格差は縮まりつつあるが、貧富の格差は広がりつつあることを懸念している。
都市部の人口の約60%にあたる2億5000万人以上が貧困ライン以下で、都市の貧困層は2020年までに1億人増加すると見られている。
ドナルド・カベルカ総裁は、都市部の人口が増えても就労機会が創出されていないことが最大の問題だという。
「アフリカの都市化は、産業化の結果ではなく、地方の惨めな生活から逃れたいがための現象なのです」
アフリカの多くの都市では、過去10年間に爆発的な人口の増加をみている。
例えばアンゴラの首都ルアンダの人口は、1975年の独立時の75万人から現在では600万人以上にまで増えた。
アンゴラはアフリカ一の経済成長率を誇るが、ルアンダの人口の80%以上は水も電気もないスラムに暮らしている。水道の整備も進んでおらず、前年末には臭化物によるとみられる中毒で5人が死亡、数百人が病院に運ばれるという事態が発生している。【5月18日 AFP】
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【アンゴラは犯罪者たちに率いられている?】
アンゴラの状況については、こんな記事も。
*****アンゴラ:ロック歌手の発言に波紋広がる****
アイルランド出身のロック歌手で活動家のボブ・ゲルドフ氏は6日、ポルトガルの首都リスボンで開催された持続可能な開発に関する会議で「アンゴラは犯罪者たちに率いられている」と発言した。
ゲルドフ氏によると、アンゴラ指導者は首都ルアンダでロンドンの高級住宅地よりも豪華な住宅地に住んでいるという。同氏は「最貧国の1つであるアンゴラには不必要だ」と訴えた。
ゲルドフ氏の発言を受け、アンゴラ政府は「彼はアンゴラの現実をわかっていない。彼はアンゴラ人を侮辱している」と猛反発。アンゴラの政府系新聞もゲルドフ氏を『野蛮で酒飲み』などと酷評した。
アフリカ有数の原油産油国であるアンゴラは現在、中国や米国などに原油を輸出しており、アフリカのみならず世界でも最も経済発展の著しい国である。しかしその一方で、アンゴラは世界の最貧国の1つであり、大多数の国民が貧困に喘いでいる。【5月17日 IPS】
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【内戦後も続く暴力】
アンゴラについては3月28日に取り上げたことがあります。(「地雷被害者」の美人コンテスト 内戦の傷跡 後を絶たない暴力 http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20080328 )
1961~74年は植民地支配していたポルトガル軍に対する独立戦争、1975~2002年は内戦(東西冷戦下の代理戦争、冷戦終了後は石油・ダイヤモンドなどを資金源とする資源戦争)が延々と続き、41年にわたる戦闘で100万人が死亡し、400万人が家を失い、50万人が難民となったとも言われています。
また、120万人の孤児の多くは今でもホームレスのままだとも。
3月28日には、内戦終了後も、アンゴラのダイヤモンド鉱山で働くため隣国のコンゴ民主共和国から流入する移民に対する暴力が止まない状況にも触れました。
【驚異的成長、しかし国民は・・・】
しかし、経済的には内戦終了後アンゴラは目覚しい成長を遂げています。
****新興産油国アンゴラが活況 成長率25%、懸念は腐敗****
約30年にも及んだ内戦後の復興が進むアフリカ南部アンゴラがオイルマネーで活況を呈している。原油価格の高騰も手伝って2けた成長が続き、今年の経済成長率も25%に迫る勢いだ。日本企業も注目し始めたが、政府の腐敗・汚職が蔓延(まんえん)し、石油の富が国民の貧困解消に役立っていないと批判も出ている。
首都ルアンダは今、石油企業で働く外国人であふれている。
市街地のビルには国営石油企業や欧米の石油メジャーの社名が目立つ。建設ラッシュで、クレーンが林立しており、地元住民は「資材の供給が追いつかず、よく工事が中断している」と話す。
外国人や中流階級向けの住宅も不足し、寝室が2、3部屋ある一般的な間取りでも月1万ドル(約110万円)の家賃はざらだ。国際人材コンサルティング会社の最近の調査では、ルアンダは東京やニューヨークなどを押しのけ、世界で最も物価の高い都市と認定された。
原油生産はここ10年で倍増し、日量約140万バレル。既にインドネシアを上回っており、4年後には同260万バレルに届く予定。今年1月には石油輸出国機構(OPEC)にも加盟した。歳入の8割を原油関連が占め、国内総生産(GDP)は過去6年間で5倍近くにも急増した。
アンゴラでは現在、中国の存在感が大きい。中国政府は自国への石油輸出で弁済することを条件に、数十億ドル規模の巨額融資をアンゴラに行っている。
10月には日本経団連が調査団を派遣し、商社や銀行から約50人が参加した。「アフリカへの視察団としては最大級」(関係者) 【07年12月14日 産経】
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成長率25%というのはとんでもない数字です。
すべて石油のもたらした恩恵のようです。
しかし石油の富で経済が好調な一方、政府の腐敗・汚職はひどく、内戦終結後も幼児死亡率は世界最悪水準、国民の大半は貧しいままです。
上記【産経】の記事によると、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチなどは、02年までの6年間で政府歳出のうち少なくとも42億ドル(約4700億円)が使途不明と批判しています。
大統領選が今年にも実施される見込みのため、外交筋は「選挙対策で自由に使うため、不透明な資金を残しているとの見方もある」と解説しているとか。
ADB関連記事にもあるように、ルアンダの人口の80%以上は水も電気もないスラムに暮らしています。
一方で、ゲルドフ氏が批判するように、アンゴラ指導者は首都ルアンダでロンドンの高級住宅地よりも豪華な住宅地に住んでいる・・・。
開発が国民福祉に結びつかない多くの事例のひとつです。
単なるタイムラグでしょうか?もう少しこの状態が続けば全体経済が底上げされ、やがて国民各自の生活も改善する・・・そういうものでしょうか?
国家の指導層の意識改革、政治・社会システムの根本的な改革が不可欠に思われますが、今のアフリカ各国にそれが期待できないことが多いのが悲しい現実です。