孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

インドネシアのガソリン値上げ、フィリピンのコメ不足

2008-05-22 13:59:58 | 世相

(ジャカルタの交通渋滞 ただ、このような渋滞はインドネシアだけでなく、途上国大都市ではどこも同様です。 道路や公共交通機関などのインフラ整備が不十分なまま一気に車社会に突入したためのように思われます。 ついでに言えば、こうした渋滞都市で困るのは、渋滞だけではありません。駐車スペース不足も深刻です。
写真は“flickr”より By aenertia
http://www.flickr.com/photos/aenertia/555928234/ )

【高騰続ける原油価格】
原油価格の高騰は止まるところを知らない状態です。
21日のニューヨーク・マーカンタイル取引所の原油先物相場は、米標準油種の軽質スイート原油(7月渡し)が史上初めて130ドル台に乗せたあと更に上がり、終値は前日比4.10ドル高の133.17ドルでした。

原油価格は年明けに100ドルの大台に乗せた後、いったん80ドル台まで値を下げましたが、2月中旬に再び100ドル台をつけると上昇基調を強め、4月以降はほぼ一本調子での上昇を続けています。
4月以降の約1カ月半で原油価格は一気に30ドル近くも上昇しています。

金融市場の混乱を避けた資金流入には歯止めがかかりつつありますが、需給逼迫で下落しにくくなった原油先物市場には年金基金など安定運用を狙う資金の流入が今も続いており、下落に転じる材料が見当たらないのが現実だそうです。【5月21日 毎日】

米証券大手ゴールドマン・サックスが、今後の原油価格について「半年から2年の間に1バレル=150~200ドルまで上昇する可能性が増している」との見通しを示しているほか、大手投資家も年内に150ドルという線を出していると報じられています。

【穀物価格は一服感?】
一方の食糧価格高騰については、「国際穀物価格の急騰に一服感が出ている。今年の豊作予想などが背景で、食品高騰は最終局面に近づいているとの指摘が出ている。しかし、食品価格の上昇は今後も続くとの懸念も根強い。」【5月16日 ロイター】とのこと。

ただ、新興国の需要増大、バイオエタノールとの競合という基本構図は変わっておらず、短期的にも現在の飼料価格高騰が今後の食肉価格上昇としてあらわれてくると予想されています。
仮に上昇が止まったとしても、すでに各国で暴動を起こすほどに高騰してしまった食糧価格の問題は生命・生活に直結するだけに、依然深刻です。

【各国を揺さぶる原油・食糧高騰】
食糧価格、原油価格高騰の影響は世界各地から報じられており、このブログでも4月14日「食糧価格の高騰 世界は新たな飢餓の時代に入りつつあるのか?」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20080414)、4月28日「原油・食糧価格高騰、投機マネー、通貨取引開発税、トービン税のことなど」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20080428)で取り上げてきました。

今日、フランスで燃料費高騰に怒った漁業関係者が暴徒化しているとの記事もありましたが、最近のアジア各国の状況として、インドネシアとフィリピンの記事も目にしました。

【インドネシアのガソリン値上げ】
インドネシアはOPEC加盟の石油輸出国ですが、国内需要拡大で純輸入国に転じているそうです。
これまで国内のガソリンや灯油など石油燃料価格は、政府補助金で国際価格の半額程度に抑えてきましたが、原油高騰で補助金が膨らみ続け、当初予算枠(国家予算の12%)を大幅に超過する見通しです。
そのため、政府は「今月末」にも石油燃料の30%上げを行うと見られています。

政府は「燃料補助金が結果的に貧困層でなく、(車などを保有する)比較的裕福な人々の利益になっている」「石油燃料を使う人の8割は貧困層といえない」と主張し、今回値上げで最も深刻な打撃を受ける貧困層に対し、現金を直接支給すると発表しました。
政府によれば、補助金の削減額と貧困世帯への現金支給額はほぼ同じ。つまり、これまで補助金にあてられていた政府支出は、貧困者に直接渡るということです。【5月20日 IPS】

こうした政府の方針を受け、全国各地で値上げ反対のデモが行われていますが、野党だけでなく、来年の総選挙を控えて与党内からも反対が噴出しているとか。
このあたりは“いずこも同じ”です。

確かに、非貧困層も対象となる価格抑制よりは、貧困層に絞った所得補償の方が、所得対策としては合理的に思えます。
ただ、ユドヨノ政権は05年にも同様の現金支給プログラムを実施したそうですが、そのとき現場では大きな混乱があったそうです。
現金支給に対して「根本的な解決策にはならない。金を渡すのではなく貧しい者が収入源を得ることができるようにすべきだ」という声、「車・バイクに頼らなくてすむように公共交通機関整備に力を入れるべきだ」との声、これらは正論です。

【フィリピンではコメ不足】
フィリピンではコメの価格上昇が大きな問題になっています。
日本政府は、フィリピンからの支援要請に対し、93年のウルグアイ・ラウンド合意で輸入が義務づけられたミニマムアクセス(MA)米の在庫から、食糧確保に苦しむフィリピンに20万トン(140億円相当)を送ることを検討していると明らかにしました。
MA米は今月16日のブログでも扱いましたが、年間約77万トンの輸入が義務づけられており、半分以上が米国産。従来、米国は日本国内での消費を求めていましたが、食糧高騰をうけて支援への転用を認める声明を15日に出したそうです。【5月19日 朝日】

そのフィリピンですが、世界最大級のコメ輸入国で、年間消費量の2割弱にあたる約200万トンを輸入しています。
有力な輸入先のベトナムが病害虫や台風の被害で06年末に輸出規制を始めたことなどから、現在コメ不足に陥っており、大量の貧困層の人々が、政府が助成する安価なコメを求めようと数時間の列を作っています。

フィリピンの著名な経済学者Dy氏は「フィリピンで問題となっているコメ不足の原因は食糧問題ではなく、劣悪な政策が農業セクターに損害を与えた結果だ」、「コメ不足の原因は農業およびインフラへの投資不足、貧困撲滅の実績のなさである」、「いわゆるコメ危機の真の姿は所得問題だ」と21日発表の報告書で指摘し、政府を批判しています。

「フィリピンよりもさらにコメ輸入に依存しているマレーシアやシンガポールでは、長蛇の列を作るようなひどい事態は起こっていない」とDy氏は指摘しています。
フィリピンのコメ消費量が特別に多いことについて、人口の大半がいまだ貧困状態にあるため、コメ以外の食料を買うことができないからだと分析、「貧しい人たちがあまりにもたくさんいる。彼らが買うことのできる食べ物といえば、小山ぶんほどのコメと、いくらかのケチャップ程度だ」【5月21日 AFP】

「いわゆるコメ危機の真の姿は所得問題だ」との指摘、これまた正論です。
原油価格、食糧価格高騰は各国がこれまで覆い隠してきた社会の問題を明らかにするかたちで、各国政府を大きく揺さぶっています。



コメント (2)
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