(衝突が起きたナイジェリア・ジョスのマーケット 普段は平穏な暮らしが営まれています。 それともこの平穏さのほうがかりそめの姿なのでしょうか?
“flickr”より By MikeBlyth
http://www.flickr.com/photos/blyth/154792022/)
サハラ以南のアフリカでは南アフリカと並ぶ地域大国のナイジェリア、昔の話で言えばビアフラ独立戦争の悲劇、最近では豊富な石油資源をめぐる反政府ゲリラの活動(民族対立、資源の利権争いという基本構図はビアフラ当時と同じですが)をよく耳にする国です。
そんなナイジェリアで大規模な宗教絡みの衝突が起きています。
****ナイジェリア:宗教衝突続き死者367人確認*****
西アフリカのナイジェリア中部プラトー州の州都ジョスで、イスラム教徒とキリスト教徒が衝突し、30日までに死者367人が確認された。ロイター通信などによると、当局は24時間の外出禁止令を出す一方、523人を拘束。28日に始まった衝突は沈静化しつつあるが、死者数は増える見通し。
衝突は地方選挙の結果発表が遅れたのがきっかけで、若者らが教会やモスク(イスラム礼拝所)を焼き打ちした。ナイジェリアは両宗教の信者がほぼ半数ずつに分かれる。
04年にも同様な事件がプラトーで起き、約700人が死亡した。 【11月30日 毎日】
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【更に増えそうな犠牲者数】
十数年ぶりに実施された地方選挙だったそうで、結果発表が遅れたことから支持者らが対立陣営の不正を疑い、銃などで武装して衝突し始めたとのこと。
主要政党はキリスト教系の国民民主党(PDP)とイスラム教系の全ナイジェリア国民党(ANPP)の二つで、宗教対立の様相を呈しています。
ジョス最大のモスクに380体以上の遺体が収容されましたが、キリスト教系住民の遺体は運び込まれておらず、全体の死者数はさらに多くなるとの報道もあります。
地元の赤十字は1万人以上が教会などに避難したと伝えています。【11月30日 朝日】
ウィキペディアによれば“主に北部ではイスラム教が、南部ではキリスト教が信仰され、その他土着のアニミズム宗教も勢力を保っており、内訳はイスラム教が5割、キリスト教が4割、土地固有の伝統信仰が1割となっている。”とのことですので、衝突の起きた中部のジョスあたりは両勢力が拮抗している地域なのかもしれません。
【隣人同士の殺し合い】
宗教的な対立は単に宗教の問題だけでなく、民族や社会的格差、利権対立などの問題を背景に持つことが多いと思われますが、一方で、ひとたび衝突が起きると“宗教の違い”が色分けのレッテルとして対立を先鋭化させ、衝突をエスカレートしがちです。
宗教的風土が希薄な日本ではなかなかイメージしづらいところではありますが、それにしても、簡単に数百人規模で命が奪われる“命の軽さ”、しかも、それまで普通に暮らしていた隣人同士が殺しあうという“人間性への疑念”、そういう世界が自分達の暮らす世界と並存しているという厳然たる事実にはやりきれない無力感を感じます。
記事には“衝突は沈静化しつつある”とありますので、それが唯一の救いでしょうか。
それと、最近この種の選挙結果をめぐる衝突をケニアとかジンバエブとか、いろんなところで聞きます。
アフリカだけでなく、ヨーロッパなどでもときに対立が激化します。
日本でも選挙が地域を二分した争いとなり、社会問題化することもあります。
いくら民主的な形を整えても、人々の間での信頼感、端的に言えば、敗北という選挙結果を受け入れるキャパシティー、勝利という結果に驕らない自制心のないところで“民主的選挙”は機能しないばかりか、ときに争いの種になるようです。