孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ポスト京都議定書に向けてCOP14開催 止まらぬ“地球の肺”アマゾンの破壊

2008-12-05 15:36:44 | 環境

(傷つき血を流す大アマゾン “flickr”より By bbcworldservice
http://www.flickr.com/photos/bbcworldservice/2848947364/)

【「今何もしなければ悪化する一方だ」】
地球温暖化対策の次期枠組み(ポスト京都議定書)について話し合う国連気候変動枠組み条約第14回締約国会議(COP14)が、ポーランド・ポズナニで12月1日から開かれています。会期は今月12日までで、最後の2日間に閣僚級会合が予定されています。

開会式で議長のノウィツキ・ポーランド環境相は「われわれはすべての国の望ましい未来のために、統一見解を見いだすことができるはずだ。この2週間(お互いに)歩み寄ろう」と協議の進展に期待しています。
また、来年のCOP15議長国デンマークのラスムセン首相も「金融危機はいずれ回復するが、温暖化は今何もしなければ悪化する一方だ」と述べています。【12月1日 毎日】

京都議定書は先進国に温室効果ガスの削減を義務付けており、2012年までの5年間平均で、日本は1990年比6%、欧州連合は8%の減などとなっています。
会議に先立ち、ドイツの環境省は、07年の温室効果ガスの排出量が90年比で22.4%減となり、京都議定書の削減目標の21%減を達成したことを明らかにしています。【11月30日 朝日】
また、欧州環境庁は10月16日、京都議定書を批准したEUの15か国が、共同で温室効果ガスの排出量削減目標を達成することができる見通しであると発表しています。

一方、日本は6%の減少ではなく、06年度では逆に6.2%増加と全く進展していません。
特に、2006 年度の家庭部門のCO2排出量は基準年と比べると30.0%も増加しています。
従って、政府や企業だけの問題ではなく、国民一人ひとりが地球温暖化防止アクションを実践することをせまられています。

各国の取組みにはこうした差がありますが、問題は京都議定書で削減義務を負っている国の排出量は世界の約3割程度に過ぎないことです。
次期枠組みでは、京都議定書を離脱した米国や、排出量が増大しているものの「途上国」に区分されるため削減義務を負っていない中国などの新興国をどのように巻き込んでいくかが課題となっています。

今回COP14ではこの点が討議されますが、現実問題としては肝心のアメリカが政権交代期にあたるため、国際交渉のヤマ場は来年1月20日のオバマ次期大統領の就任以降となると見られています。
EUは今回COP14での議論を踏まえ、来年夏に特別閣僚会合を開催して、来年末にコペンハーゲンで開かれる第15回締約国会議(COP15)での国際合意作りに向けて弾みを付けたい意向とのことです。【11月30日 毎日】

【傷つく“地球の肺”】
COP14で討議される主要テーマのひとつに森林保護の問題があります。
森林大国ブラジルとインドネシアは、途上国の森林保護の取り組みを世界が資金援助するとした「森林破壊と劣化防止(REDD)」を提唱しており、この仕組みの現実化が協議されるとみられています。

****ブラジル、アマゾンの森林伐採を今後10年で70%削減へ*****
ブラジル政府は1日、アマゾン地域での森林伐採を今後10年で70%削減する計画(朝日報道では72%)を明らかにした。地球上で最大の熱帯雨林面積をもつブラジルが、不法伐採者や農園主による森林被害に対し削減目標を掲げるのは、今回が初めて。
ダシルバ大統領とともに計画について明らかにした、ミンキ環境相によると、この森林伐採削減計画は、同日からポーランドのポズナニで開催される国連気候変動枠組条約第14回締約国会議で正式に発表されるという。【12月2日 AFP】
***************

これまで政府は削減数値の設定を避けてきたブラジルが政策を転換したもので、監視強化のため「森林警察」の創設を検討するとも報じられています。
結構なことですが、残念ながらアマゾンの森林破壊の実態はあまりよくないようです。

****アマゾン地域の森林伐採率、約4%上昇******
ブラジル国立宇宙研究所(INPE)が11月28日発表した統計によると、「地球の肺」として知られるアマゾン地域のジャングルが、2007年8月から7月の12か月で1万2000平方キロメートル近くも失われていることが明らかになった。
INPEによると、農地開拓の侵食による森林伐採率は、前年と比べて3.8%上昇した。
被害が最も大きいのは北部パラ州と大豆の生産地である中部マトグロソ州だった。

ブラジル当局は過去3年、アマゾンの森林伐採を大きく減少させることに成功していた。
また、ブラジル政府はこの熱帯雨林保護のための戦いを、地球温暖化対策への貢献と位置付け、資金援助という形で海外から評価を受けるべきだと主張している。援助金は、同地域に住む貧困層が森林を伐採しないための支援に使われる。
しかし、今回の統計によると、前年と比べてスロベニアやイスラエルに匹敵する面積の森林が失われたことになる。ブラジル政府は、森林破壊は今後も広がる可能性が高いと警告しており、罰金制度を含めた新たな対策を導入している。【11月29日 AFP】
************************

アマゾン熱帯雨林は、世界の酸素の3分の1を供すると言われ、「地球の肺」とも呼ばれています。
しかし、違法な開墾や伐採が後を絶たず、このままでは2030年までに森林の55%が消滅するとの指摘もあります。
“世界の酸素”云々の数字の真偽はともかく、こうした記事を読んでいると、酸欠状態の金魚鉢の金魚みたいな気がして息苦しくなってきます。
この時期にこうした発表をブラジル政府がするのは、“もっと援助金を出せ、出さないと・・・・”という脅しでもあるのでしょうが。

【資金的裏づけ】
何にせよ、対策には資金が必要となります。
しかし、世界的金融危機で大不況に脅えるような状態では、温暖化対策といった長期目標に対する資金供給・変革努力は鈍るのではないかと危惧されています。

****温室ガス25%削減 実現に年3500億ドル必要の試算*****
温室効果ガスを00年比で25%削減するためには、30年には年間3400億~3570億ドルの追加投資が必要になるという試算を、国連気候変動枠組み条約事務局がまとめた。開催中の条約締約国会議(COP14)では、金融危機で先進国からの資金供給が細るとの懸念が広がっており、景気に左右されない資金源を確保する仕組みづくりに関する議論の土台となる。
排出量削減のためには、低燃費車やバイオ燃料の普及、二酸化炭素(CO2)の地下貯留などの導入を進めるが、特に発電所の効率化が重要だと指摘。こうした新技術を使った設備に更新する需要が、20年ごろに途上国で急速に高まると予測している。
これとは別に、途上国で起きる海面上昇や干ばつなど、温暖化による被害を和らげる対策費が年間100億~1千億ドルにのぼるという。

この巨額な資金を得るためには、政府の途上国援助や民間投資だけでは限界があるとして、枠組み条約の中で運用する基金の拡充などが必要だと指摘している。
条約事務局のブア事務局長は「各国の気候変動担当者が毎年度、財務担当者に予算を頼みに行かなくて済むように、条約の枠組みの中で資金調達できる仕組みづくりが重要だ」と理解を求めている。 【12月4日 朝日】
******************************

****11月の中国発電量、祝日期以外で10年ぶり大幅減****
主要送電網に接続する中国発電所の11月発電量は、前年比7%減の2530億キロワット時となった。業界筋が4日、ロイターに対し明らかにした。祝日期以外の月では、少なくとも10年ぶりの落ち込み幅となった。
また主要送電網に接続する石炭火力発電所による発電量は、前年比14%減の2010億キロワット時だった。【12月4日 トムソンロイター】
**************************
世界的不況による経済活動の収縮は温室効果ガス排出のペースも鈍らす影響もありそうですが、話の本筋としては、やはり、新技術導入の余力を奪って進展を妨げるということでしょう。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする