孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国・台湾  大陸進出台湾企業への融資枠拡大 「三通」開始

2008-12-22 15:39:00 | 国際情勢

(台北101上空を飛行する台湾空軍ミラージュ2000編隊 “flickr”より By Miles 麥爾斯
http://www.flickr.com/photos/mileswen/1425155881/sizes/m/)

【経済協力促進】
中国と台湾の関係が緊張すると、最終的にはアメリカが台湾擁護の立場でどこまで“体を張った”対応をするかという問題となり、最悪の事態となれば、日本もアメリカとの関係で、また、自国の存立を考え、重大な局面に立たされる問題でもあります。

もっとも、現在のところ、中国は飛躍的に力をつけた経済力を背景に、巨大な市場としての魅力で台湾を取り込み、そのままウゴウゴと丸呑みしていこうか・・・というようにも見えます。
台湾も親中国的な国民党・馬政権のもとで、政治的な独自性は維持しながら、中国との経済的関係を強化して台湾経済の牽引車としようという際どい政策をとっています。
そうした、互いの思惑が一致して、このところの中台情勢は非常に良好です。

中国・共産党と台湾・国民党が交流促進を話し合う「両岸(中台)経済貿易文化フォーラム」(4回目、国民党が政権を奪還してからは初めて)が20・21日、上海で開かれました。
中台は国際的な金融危機に共同で対処する必要性を訴え、経済協力促進を強調しています。
フォーラムは、内需拡大プロジェクトやインフラ建設への中台企業の相互参入など9項目の共同提案を宣言して閉幕しました。

****中国:台湾企業への融資枠、1兆7千億円に拡大*****
中国政府は21日、中国に進出している台湾企業が国際金融危機の影響で資金難に陥っている問題に対処するため、台湾企業に対する融資枠を計1300億元(約1兆7000億円)に拡大すると発表した。上海で開かれていた「両岸(中台)経済貿易文化フォーラム」で明らかにした。中国の3銀行が今後3年以内に行う。【12月22日 毎日】
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輸出依存経済の中国自身がアメリカの急激な経済悪化に引きずられて急ブレーキ状態で、農村から出てきていた出稼ぎ者の地方への帰還、新卒者の就職難という社会不安を増幅しかねない問題を抱えた正念場にさしかかっていますが、融資で進出台湾企業の経営が存続すれば、結果、中国国内の労働雇用も確保される・・・ということで、台湾への配慮だけでもないのでしょう。

【「三通」実現で景気回復狙う】
一方、今月15日には、分断後初めての中台間の海運直航便と郵便の直接往来が解禁されました。
これにより「三通」(中台間の直接の通商、通航、通信)が実質的に実現したことになります。

*****経済再生期し中台「三通」始動 馬政権、手探りの航海*****
対中融和で経済再生を目指す馬英九政権の期待は大きいが、深刻な世界不況下で台湾を取り巻く経済環境は厳しい。三通の実現が、景気回復を促し、支持率低迷に苦しむ政権の浮揚に直結するかは不透明だ。
(中略)
台湾の財政部(財務省)によると、11月の香港を含む中国大陸向けの輸出は約56億ドルで、前年同月比38・5%減という過去最大の下げ幅を記録した。台湾の経済紙、工商時報によると、好調に推移してきた中国向けは、輸出全体の約3分の1を占めるが、世界的な景気低迷の影響で9月からマイナス成長に転じた。品目別では電機部品、プラスチックといった台湾経済の“稼ぎ頭”を直撃しており、財政部では「貿易全体が衰退の危機にひんしている」と警鐘を鳴らす【12月16日 産経】
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【精鋭部隊公開とWTO参加問題】
対中融和的な「三通」進展とのバランスをとる考えがあってか、台湾軍は16日、東部・花蓮に駐留する空軍の最精鋭部隊を報道陣に公開しました。
“軍事的には強大化する中国軍と対峙(たいじ)する立場を国際社会にアピールした。(中略)米国防総省は10月、台湾への地対空ミサイル「パトリオット」(PAC3)などの武器売却を決めたが、台湾が求める改良型のF16(C/D)は認めず、馬政権として来月発足するオバマ新政権に対し、改良型の売却を促す狙いもあったとみられる。”【12月17日 産経】

台湾のWTO総会へのオブザーバー参加問題への中国側の対応も注目されるところです。

****台湾のWHOオブザーバー参加 「妨害なら対中感情悪化」
台湾の対中窓口機関、海峡交流基金会の江丙坤理事長(中国国民党副主席)は5日、都内で開いた記者会見で、台湾が求めている世界保健機関(WHO)年次総会へのオブザーバー参加問題について、来年春の次期総会でも中国が妨害工作を行えば、「台湾の住民感情に影響してくる」と述べ、中国に一定の譲歩を求めた。
台湾の馬英九政権は今年5月の発足後、中台直行便解禁など経済関係で対中関係の「正常化」を急いでいる。だが国際機関の参加問題で中国が一定の譲歩をみせなければ今後、対話の進展にも影響を与えるとの見方で中国側を牽制(けんせい)した。
馬政権の対中傾斜への懸念について江氏は、「台湾の主権堅持と(中台)対等の原則があり、(中国に台湾がのみ込まれて)一体化するとの危惧(きぐ)はない」と否定した。【12月6日 産経】
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ただ、どうでしょうか。
この種の問題では中国は“譲歩”はしないのでは・・・と思えます。
台湾が空軍精鋭部隊をアピールするのと同様に、中国としても“ひとつの中国”をアピールするのでしょう。
それはそれ、経済は経済・・・ということで、いたずらに緊張することなく推移すれば、日本にとっても好都合なことです。

コメント
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