(ミャンマー国境が近いタイの難民(カレン族)キャンプ 孤児たちの学校 “flickr”より By happymouse
http://www.flickr.com/photos/kareneee/2540680659/)
【タイで生活するミャンマー難民30人程度を】
日本政府は、海外の紛争当事国から逃れて周辺国の難民キャンプなどで暮らす難民を日本で恒常的に受け入れる「第三国定住」を導入することを決定しました。
実際にはタイのキャンプで暮らすミャンマーからの難民が対象になるようです。
****<第三国定住>ミャンマー難民、10年度から政府受け入れ*****
紛争などで他国に逃れた難民をさらに別の国が受け入れる「第三国定住」について、政府はタイで生活するミャンマー難民30人程度を10年度から受け入れる方針を決めた。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)と連携し09年度中に受け入れる難民を選定する。第三国定住を受け入れるのはアジア初。11省庁による19日の難民対策連絡調整会議で正式決定する。
入管法が難民認定の可否を日本国内でしか審査できないのと異なり、第三国定住は、現住地で面接などを行って審査できる。
政府が受け入れるのは、UNHCRが事前に面接などをして政府に保護を推薦した難民で、社会適応できると判断した家族。政府は定住支援に向け、日本語の研修や職業の紹介・訓練を実施する。状況を見ながら受け入れを増やす方針。難民申請の約6割がミャンマー人であることを背景に、選んだとみられる。
UNHCRによると07年に第三国定住で受け入れられた難民は7万5300人。受け入れ国は14カ国で、うち米国が4万8300人。出身国はミャンマーやソマリアなどが多い。【12月19日 毎日】
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今回の政府決定について、来日中のグテーレス国連難民高等弁務官は、「試験的だが、成功させることで、日本の難民受け入れが拡充することを期待する」と語り、夫を亡くした女性ら特に立場の弱い難民受け入れを検討することや、すべての難民が日本社会へ溶け込むために必要な言語や教育、就労への支援の重要性を強調しています。【12月19日 毎日】
【07年難民受け入れ41名】
今後の流れは、“平成21年度に予算や難民の選定を行い、22年度に受け入れる。今後、数年にわたり第2、第3陣を受け入れ、定着状況などを調査・検証した上で、以降の受け入れ体制を検討していく。”というものです。【12月19日 産経】
”
今回の決定については、今年夏頃に「政府方針が固まった」と報じられていました。
世界の難民の数は、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の07年の調べで約1600万人に達しています。
紛争や災害、迫害で新たに難民となる人がいる半面、帰還のメドが立たず、キャンプ生活が10年以上の長期に及ぶ難民も少なくありません。
紛争地の周辺では大量の難民流入が、新たな社会不安の要因となります。
そんな難民を先進国が受け入れる第三国定住は、キャンプ生活から抜け出せない人々への救済に加え、紛争周辺国の負担を軽減する策として近年注目が高まっています。【7月24日 朝日】
日本は81年に国連の難民条約に加入していますが、受け入れ数は年間数人~数十人程度(07年41人)。
数万人単位で受け入れている欧米諸国などからは「難民支援にカネは出すがヒトは入れない」と批判されてきました。
こうした現状を踏まえた政府決定の背景、難民認定制度との関係について、夏頃に次のように報じられています。
“現在の難民認定制度は、すでに来日した人が認定を求めるために「不法滞在者らによる悪用」も多いとされ、認定されない割合も高い。これに対し、第三国定住制度は、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が推薦する難民が対象で、日本としては難民認定の作業が容易になる。さらに、日本の担当者が現地に赴いて面接するため、財産もなく隣国に逃げて来て、審査のために来日するのが不可能な人たちを受け入れられる。
このため「国際貢献と治安維持のバランスが取りやすい」 (法務省幹部)とされ、UNHCRも「難民問題の恒久的な解決方法の一つ」として推進している。鳩山法相も昨年11月にグテーレス国連難民高等弁務官と面会し、積極的な姿勢を打ち出していた。
関係省庁の中には、治安面から慎重な意見もあったが、少人数から試行的に始めることで基本的な合意に達した。
また、法改正で同様の枠組みをつくる手法もありえたが、より迅速に、柔軟な判断ができることから「閣議了解」による受け入れを選んだ。”【7月24日 朝日】
こうした国際批判をかわす狙いの他に、少子・高齢化で外国人労働力に頼らざるをえなくなる日本社会の現状から、外国人に積極的に国を開いていこうという機運が政府や自民党内に広がっていることも背景にあるとも指摘されています。
“労働力を国外から求める以上、難民受け入れという国際的な人道責任も日本は引き受けねばならないという考え方だ。”【7月24日 朝日】
また、同記事では“、難民を入国前に面接などで選別・把握できる第三国定住について、日本にとって都合の良い人だけを受け入れるのではないかとの懸念も出ている。”とも指摘されています。
【「第2の難民」をつくらないために】
この【7月24日 朝日】記事については、在日難民の支援活動を行っているグループ“RAFIQ”が手厳しく批判しています。
問題としているのは“現在の難民認定制度は、すでに来日した人が認定を求めるために「不法滞在者らによる悪用」も多いとされ、認定されない割合も高い。”という箇所で、法務省見解を無批判に垂れ流していると批判しています。
“実際は、難民認定制度を知らないで、正規のビザで入国しても、国に帰れないためにオーバーステイ状態になっている人たちが多いことや、難民認定制度を知ることができるのは、入管の窓口ではなく、支援者・支援団体やや収容された時に同室の人や面会に来た支援者によるものが多いのです。
そして、申請してから認定・不認定の結果が出るまでが長く、不認定の結果が出ても、国に帰れない状況は同じなので、異議申し立てや裁判が行われますが、その期間も長いのです(その期間は、法務省の言う「不法滞在」状態にあります)。それらに耐えうる人のみがようやく認定されたり、在留特別許可されたりする現状です。
長期間の不安定な立場で、難民自身の体の調子や、母国に残した家族の状況の変化に耐えられずに自主帰国する人も過去にはあったのは事実ですが、これを「不法滞在者らによる悪用」と政府が受け取っていることにもっと事実を言及してもらいたいと思います。
私たちは、難民申請中、不認定に対する異議申し立て中の人たちをひっくるめて、不法状態にあるとしているのは、法務省・入管局の方であり、彼らはれっきとした難民申請者です。”
【RAFIQ web site http://www.rafiq.jp/siryou/dai3goku_teiju.html 】
RAFIQは、こうした難民認定制度の実態から、第三国定住についてもきちんと機能するか危ぶんでいます。
もとより、移民受け入れについては、文化的摩擦・社会の分断・治安の悪化などから大きなリスク・負担を懸念する考えがあり、実際、欧米などでもこの問題に苦しんでいる事実もあります。
そうした大量移民に今後門戸を開放するかどうかはさておいて、今回の“試験的”試みさえしり込みし、うまく機能しないようであれば、日本は自分達の利益しか考えていない偏狭な国民と周辺国・国際社会から侮られても仕方ないことかと思います。
“教育や就労支援、医療、住居などでの支援態勢を整え、彼らが日本社会から排除される「第2の難民」にならないための工夫も求められるだろう。” 【7月24日 朝日】