(ザルコジ大統領(左)と社会党・オランド候補(右) 「サルコジはオランドに勝てるか?」 “flickr”より By Patrick Peccatte http://www.flickr.com/photos/patrickpeccatte/6890461367/ )
【大半の有権者が、今回の選挙に失望】
プーチン首相が大統領復帰を決めたロシアに続いて、フランスの大統領選挙は4月22日に第1回投票が行われますが、現職サルコジ大統領が苦戦を強いられており、社会党オランド候補が優勢を保っています。
****仏大統領選、オランド氏が支持率でリード広げる=調査****
フランス大統領選を約7週間後に控えた6日に発表されたCSAの世論調査によると、野党・社会党(PS)のフランソワ・オランド前第1書記が、支持率でサルコジ大統領に対するリードを広げている。ただし、大半の有権者が、今回の選挙に失望していることも分かった。
CSAの調査では、4月22日の第1回投票でのオランド氏の支持率は30%で、前回から2%ポイント上昇。サルコジ大統領は1%ポイント上昇の28%だった。
5月6日に決選投票が行われた場合の支持率は、オランド氏が56%、サルコジ大統領が44%で、前月調査と変わらなかった。
極右・国民戦線(FN)のマリーヌ・ルペン党首の第1回投票支持率は、2%ポイント低下して15%。、左翼党のジャンリュク・メランション氏は1%ポイント上昇して10%だった。
調査によると、有権者の大半は、政治家同士の言葉の応酬によって、重要な政策論争がしばしばかき消されているとの失望感を感じているもよう。回答者の71%は、選挙戦について「有権者が思慮ある選択をできない」状況で、候補間の意見交換の「機会が多すぎる」とみている。
回答者の半数がオランド氏の勝利を予想。割合は前回から11%ポイント上昇した。一方、サルコジ大統領の勝利を予想したのは30%で2%ポイント低下した。
調査は5日に1002人を対象に実施された。【3月8日 朝日】
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【「フランスには移民が多すぎて住宅、職場、学校が機能しない」と移民2世のサルコジ氏】
経済の不調、個人的なあくの強さから、サルコジ大統領の不人気・苦戦は今に始まった話ではなく、これまでもブログで取り上げてきたところです。昨年、「トリプルAを失えば自分は死ぬ(終わりだ)」と漏らしていたとも報じられていますが、そのトリプルAを失いました。
一時は、現在3位につける極右・国民戦線(FN)のマリーヌ・ルペン党首と2位を争うのに精一杯という状況でしたが、ここにきてさすがにルペン候補は引き離しつつあります。
その背景には、「わが国の領土にあまりにも外国人が多すぎる」「(新しく入国する)移民の数を半減させる」といった反移民政策など、極右支持層を標準にしたサルコジ大統領の右旋回とも言える選挙戦術があります。
その煽りで、「ユーロ圏離脱」「移民制限」などを訴え、一時は台風の目のような存在であった極右・国民戦線(FN)のマリーヌ・ルペン候補が苦しい状況に追い込まれているとも報じられています。
****フランス大統領選:サルコジ氏、極右票に標準*****
フランス大統領選(第1回投票4月22日)を約1カ月半後に控え、再選を目指すサルコジ大統領(57)と右派与党の国民運動連合が「移民を半減させる」政策を掲げるなど、右旋回を加速している。
極右政党「国民戦線」のルペン党首(43)の支持層への浸透が狙いとみられる。お株を奪われた形のルペン氏は立候補に必要な市町村長などの推薦署名が集まらず、選挙資金不足で支持者集会をキャンセルする苦境に追い込まれている。
◇「移民半減」閣内から懸念も
サルコジ氏は6日、仏テレビの討論番組で「フランスには移民が多すぎて住宅、職場、学校が機能しない」と、移民が経済・社会問題の原因との説を展開し、「(新しく入国する)移民の数を半減させる」と表明した。サルコジ氏自身、ハンガリー系移民2世だが、発言はイスラム系移民を念頭に置いたものとみられる。
2日には、サルコジ氏の側近であるゲアン内相が最大野党・社会党候補のオランド前第1書記(57)が掲げる「外国人への地方参政権付与」にかみついた。「外国人の地方議員によって、学校食堂でイスラム教の戒律に沿った食事の提供を義務づけられたり、男女が同時にプールを使用できなくなるのはごめんだ」と述べた。
各種世論調査では、サルコジ氏が支持率を上げるのに反比例する形で、ルペン氏の支持率が下がる傾向が続いており、両氏で右派票を奪い合う構図が生まれている。世論調査会社「IFOP」の支持率調査によると、サルコジ氏は1月14日段階では24%でルペン氏に4ポイント差まで迫られていたが、2月26日には27%対17%と10ポイント差まで水をあけた。
仏メディアによると、ルペン氏は3月16日までに500人の推薦署名を集めなければならないが、48人分不足している。選挙資金も枯渇気味で、今月11日と25日に予定されていた支援集会を中止せざるを得ないなど、選挙戦を継続できるかどうかのがけっぷちに立たされている。
ルペン氏は父親の前党首に比べ、政治的立場は現実的だが、4日の南仏マルセイユでの集会で「移民が(フランス社会に)溶け込むのは無理」と訴えるなど、反移民色を強めている。
仏紙リベラシオンによると、ジュペ外相が「もっと議論すべき大きな問題があるはずだ」と発言するなど、サルコジ政権内からも選挙戦での移民攻撃の過熱を懸念する声が出始めている。【3月8日 毎日】
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乱立防止の規制によって、大統領候補は、全国の市町村長(約3万6000人)や国会議員・州・県議会議員(約7000人)などから500人以上の署名を集める必要があります。その推薦者市名は公表されます。
マリーヌ・ルペン候補がこの推薦人集めで苦労している背景には、その「極右」という性格から、ルペン候補の出馬に理解を示しても、議会や住民の分裂、反発を懸念し、推薦しないケースが多いようだとも言われています。【2月15日 毎日より】
【「ドイツ政府は、選挙を戦うフランスの政党ではない」】
「右旋回」と並んで、もうひとつ今回のサルコジ大統領の選挙戦で目立つのは、欧州危機対応でサルコジ大統領とともに中心的存在であるドイツ・メルケル首相の応援ぶりです。
両者の二人三脚ぶりは「メルコジ」とも称されますが、ここのところはメルケル首相主導で、サルコジ大統領は「尻に敷かれている」といった声もあるようです。
メルケル独首相がサルコジ大統領を応援するのは、財政規律強化のためにEU加盟25カ国が合意した「新財政協定」の見直しを社会党オランド候補が掲げていることが背景にあります。
“ただし、深入りしたあげくにサルコジ氏の敗北が濃厚になれば自らの批判に跳ね返る可能性があり、サルコジ氏にとっても、ドイツに「追従」する印象を国民に与え、逆効果となる恐れもある”【2月7日 産経より】とも。
****仏大統領選:独仏首脳の協力関係に両国で批判の声****
フランスのサルコジ大統領は6日、仏独首脳会談でパリを訪れたドイツのメルケル首相と仏国営テレビに出演し、緊密な協力体制をアピールした。4月の仏大統領選に向け、サルコジ氏は正式な出馬表明をしていないが、メルケル氏は「選挙の応援は当然」と述べ、国境を越えた異例の選挙応援キャンペーンが始まった形だ。低支持率に悩むサルコジ氏は「ドイツ」を選挙戦の切り札にする思惑だが、両国では批判の声も上がっている。
「私たちは家族政党だ。応援は当然だ」。テレビ出演でメルケル氏は述べた。メルケル氏のキリスト教民主同盟とサルコジ氏の国民運動連合はともに右派。09年の独総選挙ではサルコジ氏が応援に駆けつけた。
背景には両首脳が主導してきた、財政規律を各国が法制化する欧州条約案をサルコジ氏の対抗馬となる最大野党・社会党のオランド氏が見直す考えを示していることもある。
サルコジ氏は先月29日の会見でも、再三ドイツの経済政策を「成功例」として礼賛。仏メディアは「何でも独のコピーの国」などと悲観的な論調が目立つ。一方、ルモンド紙(電子版)は「自分が欧州を取り仕切っているように見せたい大統領と、他国への恐怖心をあおらないよう、自分の役割を小さく見せようとする首相のペアは、利害の一致の上に成り立っている」と分析する。
ドイツ国内では、メルケル氏に対し、連立政権内からも疑問の声が上がっている。ウェスターウェレ外相は「ドイツ政府は、選挙を戦うフランスの政党ではない」と批判、独誌シュピーゲルは「フランスの内政にここまで介入する事態は前例がない」と指摘した。【2月7日 毎日】
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【「オランド氏は無邪気すぎる」】
優勢に選挙戦を進める社会党オランド候補は、サルコジ大統領の主張する付加価値税引き上げに対抗して、財政再建策として富裕層に75%の所得税を課す方針を明らかにしています
更に、年金受給開始年齢を現行62歳から60歳に引き下げることも公約しています。
いかにも左派候補らしい主張ではありますが、厳しい経済・財政事情のなかで、フランス社会党を支援する関係にあるドイツ社会民主党(中道左派)からも、「まるでユートピア」といった批判が出ています。
****独からの選挙協力、足踏み****
フランス大統領選で現職のサルコジ大統領を応援すると明言したドイツのメルケル首相に対して、ドイツ国内で「外国の選挙に干渉するのはタブーだ」と批判の声が上がっている。一方、フランス最大野党・社会党のオランド前第1書記への支援を約束した中道左派・ドイツ社会民主党も、オランド氏の「あまりにも左寄り」(独誌シュピーゲル)の姿勢に警戒を強めている。国境を超えた独仏の選挙協力は足踏み状態が続いている。
メルケル首相は2月6日、サルコジ大統領と共に仏国営テレビに出演し、「私たちは友好政党。応援するのは当然だ」と選挙支援を正当化した。ユーロ危機への対応で共闘し、親密さから「メルコジ」とも呼ばれるサルコジ氏との二人三脚ぶりを内外に見せつけた。
だが、一国のトップが外国の選挙に干渉するという「掟(おきて)破り」(独紙ウェルト)には批判も強く、身内の連立政権内からも「抑制すべきだ」(ウェスターウェレ独外相)と戒める声が出ている。世論調査でも有権者の6割が「応援に反対」と回答し、具体的な応援日程は固まらないままだ。
一方、オランド氏への選挙協力を表明した野党の独社会民主党もオランド氏の急進的な政策に戸惑いを隠せない。特に、富裕層に最高税率75%の所得税を課す構想は「ドイツでは受け入れられないだろう」(マッタイス連邦議会議員)と疑問視する意見が多い。
また、年金受給開始年齢について、ドイツは06年に65歳から67歳への引き上げを決めたが、オランド氏は62歳から60歳への引き下げを目指すことを公約に掲げる。ドイツでは「まるでユートピア」「非建設的だ」との指摘が続出。独誌シュピーゲルによると、シュタインブリュック前独財務相は「オランド氏は無邪気すぎる」と不安を口にしているという。【3月8日 毎日】
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もともと、大統領候補として最も支持があったのが、アメリカで性的暴行罪で起訴された国際通貨基金(IMF)のストロスカーン前専務理事でした。そのストロスカーン氏が暴行疑惑で潰れ、残ったのが「右旋回」するサルコジ大統領と「まるでユートピア」のオランド候補・・・どちらが勝っても問題が噴出しそうです。
なお、“サルコジ氏は「フランス人が私を信任しないのであれば、本当に政治家人生を続けると思うか。答えはノンだ」と退路を断った。その数時間後、仏中部の遊説先で支持者らに向け、「助けてください。誠実に、情熱をもって、真実を語ることで、みなさんを勝利へと導きたい」と訴えた”【3月9日 朝日】と、再選されなければ政界を引退する意思を明らかにしています。本当かどうかはわかりませんが。