孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

南シナ海  中国とベトナム、フィリピン 後押しするアメリカ 間隙を縫うインド

2012-03-04 22:18:43 | 南シナ海

(2月12日、北京で行われた中国・ベトナム外相会議 会議では、南シナ海における航行・輸送と採掘に関して平和的な議論を継続し行う必要があることが強調されています。
もっとも、緊張する両国関係はもちろん、“(ベトナムの)ミン外相の父はかつて強硬な反中派として知られた故タク元副首相兼外相である。ミン外相自身は全方位派で反中色はないとされるが、ベトナ ム共産党筋によると、中国はミン氏の外相昇格の際に内々に不快感を伝えるなど、嫌悪感を持っているという”【ベトナム雑記帳(http://www.tulip.sannet.ne.jp/t-takeoka/seiji.html)より 】ということで、笑顔の握手の裏にはいろいろあるようです。 写真は“flickr”より By DMBA13Saigon  http://www.flickr.com/photos/77316253@N02/6784643196/ )

【「中国の限られた軍事力は国家主権と安全、領土を守るためのもので、他国の脅威とはならない」】
日本の12年度予算案での防衛関係費は前年度比1.3%減の4兆7138億円であるのに対し、中国の12年の国防予算は前年実績比11.2%増の6702億7400万元(約8兆7068億円)で、公表分だけでも、日本の約1.85倍にまで拡大することになるそうです。【3月4日 読売より】
中国の軍事的脅威が増大・・・という話になりますが、「平和国家」日本の防衛関係費も、「軍事大国」路線をひた走るあの中国の半分強と、国際的にはなかなかの水準にあるというのもひとつの側面です。

****中国国防費11.2%増=「脅威」打ち消しに躍起****
5日に開幕する中国の第11期全国人民代表大会(全人代=国会)第5回会議の李肇星報道官(前外相)が4日、記者会見し、2012年の国防予算が前年実績比11.2%増の6702億7400万元(約8兆6900億円)に上ることを明らかにした。実績比で2年連続の2桁の伸び、当初予算比では11.5%増で、24年連続の2桁増となる。

李報道官は国防費の伸びが国内総生産(GDP)の増加率よりも低いことや、GDPに占める割合も1.28%で、2%を超える米国や英国のGDP比よりも低いことを説明。「中国の限られた軍事力は国家主権と安全、領土を守るためのもので、他国の脅威とはならない」と弁明した。

中国は昨年、ステルス戦闘機「殲20」の試験飛行や旧ソ連製空母「ワリャーグ」を改造した中国初の空母の試験航海を開始するなど、軍事技術や装備の開発に力を入れている。李報道官は「新型兵器をはじめ、すべての装備の研究、購入の費用も国防費の中に含まれている」と述べ、国防費の透明性をアピールした。【3月4日 時事】 
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【「米国とフィリピンが南シナ海で共同(軍事)行動をとれば、中国は確実に反撃する」】
「非常に透明で、一切が平和を維持するための支出だ」というのが中国側の説明ですが、中国の軍事増強に裏打ちされた対外強硬姿勢が国際関係を緊張させているのも現実で、日本の安全保障にも多大な影響がありますし、このブログでも何度も取り上げている南シナ海の問題もあります。

南シナ海で、特に中国と激しく対立しているのがベトナムとフィリピンです。
最近も、その緊張関係を窺わせるニュースが報じられています。

****西沙諸島:ベトナム漁船に中国監視船が襲撃…悪天候避難中****
ベトナム外務省は1日、中国と領有権を争う南シナ海の西沙諸島(英語名・パラセル諸島)で、悪天候を避けるため島に上陸しようとしたベトナム漁船が中国の監視船に襲撃され備品を奪われる事件があり、ハノイの中国大使館に抗議したことを明らかにした。

ベトナム国営紙などによると事件は2月22日に起きた。中国は襲撃を否定している。
ベトナム外務省は「中国の行為は重大な主権侵害」とし、領有問題の平和解決を目指して中国と東南アジア諸国連合(ASEAN)が02年に署名した「南シナ海行動宣言」にも違反すると主張した。【3月2日 毎日】
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“襲撃され備品を奪われる”というのは、まるで海賊のようですが、記事はベトナム側主張に基づくもので、真相はよくわかりません。
なお、南シナ海問題をにらんで、ベトナムは先進国からの兵器輸入を増強しているとも報じられています。
“ジェーン海軍年鑑のアジア・太平洋地区担当者によると、ベトナムはロシアからの兵器購入が多かったが、最近では欧米からの購入が増えつつあるという。”【2月12日 Record China】

一方、フィリピンはアメリカとの同盟関係強化で中国を牽制しています。

****米軍後ろ盾、資源開発 フィリピン、強気の南シナ海 中国反発、高まる緊張****
南シナ海の南沙(英語名スプラトリー)諸島周辺海域などで、フィリピンが石油、天然ガスの開発計画を着々と進め、15区画の競争入札を公募し38社が申し込んだ。南シナ海の領有権を主張する中国は強く反発。月内には入札のほか、米、フィリピン両軍の大規模な合同軍事演習も実施され、再び緊張が高まる気配だ。

入札の公募は2月29日に締め切られ、シェル・フィリピンやフランスのGDFスエズ、イタリアのENIなどが申し込んだ。中国企業は入っていない。この中から、開発に携わる15社が選定される予定で、投資総額は75億ドル(約6110億円)と見積もられている。
開発区域は、南西部パラワン島から北西に約80キロのリードバンク周辺と、スルー海。リードバンク周辺では昨年、中国船2隻がフィリピンの探査船の活動を妨害し、緊張が高まった。

フィリピン側の“強気”な姿勢の背景には、米国との軍事同盟関係の強化が進んでいることがある。当面の主眼は、南シナ海での中国艦船などに対する監視・警戒能力の向上にある。すでにフィリピンに2隻の巡視船を供与している米国は今後、哨戒機P3Cなどを実質的に配備する計画だ。
同盟関係の強化により、仮にフィリピンの石油、天然ガス開発施設が中国に攻撃された場合、米軍が集団的自衛権を行使するという事態も想定しうる。

現に、パラワン島周辺で今月中旬、米側から多数の航空機、艦船と要員500人以上、フィリピンから1千人以上が参加し実施予定の合同軍事演習は、石油、天然ガスの掘削施設を防衛するという想定だ。

フィリピン側は、競争入札は「国連海洋法条約に基づく自国領内での行動だ」(ロザリオ外相)と主張。これに対し、中国側は「いかなる国、政府、企業も、中国政府の許可なく中国の領海において開発することは違法だ」と非難し、競争入札を中止するよう圧力をかけている。前駐フィリピン中国大使も最近、マニラで「米国とフィリピンが南シナ海で共同(軍事)行動をとれば、中国は確実に反撃する」と警告している。

一方、南シナ海の西沙(英語名パラセル)諸島海域では2月22日、ベトナム漁船が中国の監視船に攻撃され、ベトナム外務省が29日、中国に強く抗議した。【3月3日 産経】
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パネッタ米国防長官は2月14日、上院軍事委員会で、海兵隊のアジア太平洋地域の駐留に関し、「オーストラリアとの間でローテーションにより部隊を配備する合意に達している。同様の法的枠組みをフィリピンとの間でも合意できるよう協議している」と証言し、フィリピン駐留を目指し交渉していることを明らかにしています。【2月15日 毎日より】

記事にもあるように、今月中旬に予定されているパラワン島周辺での米比合同軍事演習は、中国側を相当に刺激するものと思われます。
もちろん、ベトナムにしても、フィリピンにしても、経済的には中国との増大する関係があり、中国側の反応を見極めながらバランスにも配慮した対応となっています。

【「東南アジアにおいてこの1年で最も躍進を遂げたのはインドだ」】
このように、南シナ海では領有権を主張する中国と、それに反発する関係国を後押しする形で中国の進出を牽制するアメリカとの争いが前面に出ていますが、この争いの間隙を縫う形でインドが影響力を拡大しているとの指摘もあります。

****米中を出し抜くインド版の東方政策*****
ぶつかり合う「超大国」とは一線を画し、アジア諸国の信頼を得やすいインドの求心力が増している

アジアで中国とアメリカの覇権争いを繰り広げるなか、両国を出し抜いて影響力を増している国がある。インドだ。
ジャーナリストのトレフォー・モスはアジア太平洋地域のニュースサイト、ディプロマットの記事で、インドの意外な強みがアジアでの影響力拡大をもたらしたと指摘している。
「インドは中国ともアメリカとも違う。まさにそこが強みだ」と、モスは言う。「この『第3の大国』という位置づけのおかげで、周辺国に対してはいわば頼れる兄のような役割を演じることができる。軍事面でも、米中のように真の思惑を隠したりせずに、東南アジア諸国と手を組める」

中国を牽制したい国々の「砦」
インドの掲げる「ルック・イースト政策(東方政策)」の中身も、実はこれだけなのかもしれないが、うまく行っているのならそれで構わないだろう。今のところ、成果は上々だ。
インドネシア軍とは初の共同軍事演習を実施。一方で、潜水艦隊の構築を目指すベトナムとも手を組み、同国のキロ級潜水艦乗組員の訓練を支援する見通しだ。ベトナムは昨年、南部のニャチャン港にインド軍艦の駐留を要請し、中国の神経を逆なでした。

ビルマとの関係強化もささやかれている。1月始めにはインド陸軍のトップがビルマを訪れ、軍の連携強化などをめぐる話し合いを行った。ビルマとしては、影響力を増す中国を牽制するのが狙いではないかとの憶測も高まっている。

一方で、インドはタイとも12月に防衛をめぐる対話を開始。1月末にはインラック首相がニューデリーを訪れ、安全保障や経済の戦略的パートナーシップを強化する意向を互いに表明した。さらに、フィリピンやシンガポールとも軍事協力関係を継続している。

こうした一連の動きから、モスはこう結論づけている。「メディアは、アジア太平洋地域で米中が繰り広げる覇権争いばかり報じている。しかし実は、東南アジアにおいてこの1年で最も躍進を遂げたのはインドだ」【3月2日 Newsweek】
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