孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イラン  今月中旬、最終段階措置に向け交渉再開

2014-02-03 22:48:33 | イラン

(テヘランの街角ファッション 欧米的なファッションの是非はともかく、イランにあっては、アメリカの重要な同盟国サウジアラビアなどより遥かに自由なファッションが享受されていることは間違いありません。1979年の大使館占拠事件のトラウマから抜け出して、新たな関係を構築する余地が十分にあるように思えます。
“flickr”より By nadiathinks http://www.flickr.com/photos/28373968@N04/11932545355/in/photolist-jbrq1B)

【「歴史的なチャンスだ」】
イランの核問題については、
昨年11月24日 包括的解決に向けた「第1段階の措置」に合意
今年1月20日 イランが濃縮度約20%のウランの製造停止など核開発の制限に着手、これを受けてアメリカ、EUは経済制裁の一部を解除
という経緯で進んでいます。

合意のために敢えて玉虫色にしたような部分もありますので、その解釈についてイラン・欧米双方が互いの見解を主張するような場面や、アメリカ国内でのイランへの更なる圧力を求める動き、それに対抗するようなイラン国内の保守派の動きなどもありますが、大筋においてはここまでは順調に推移していると言えるのではないでしょうか。

今月18日からは、最終段階の措置についての交渉が行われる予定です。

****イラン核協議:18日ウィーンで再開 最終段階措置に向け****
ランのザリフ外相と欧州連合(EU)のアシュトン外務・安全保障政策上級代表は1月31日、イラン核問題の最終段階の措置に向けたイランと主要6カ国(米英仏中露独)による協議を2月18日にウィーンで再開すると発表した。イラン国営通信など一部メディアは、米ニューヨークでの開催を報じていた。

両氏は、安全保障会議開催中のドイツ・ミュンヘンで会談し、核協議の再開に合意した。「第1段階の措置」(6カ月)の履行状況を評価しつつ、イランのウラン濃縮の権利や経済制裁の全面解除などを巡り、最終段階の措置を話し合うとみられる。(後略)【2月1日 毎日】
****************

また、テヘランのアメリカ大使館再開に関するロウハニ大統領の発言や、国際原子力機関(IAEA)によるウラン鉱山査察など、イラン側の前向き姿勢も報じられています。

****米大使館再開に強い意欲 イラン大統領「不可能でない****
イランのロハニ大統領は「米大使館のテヘランでの再開は不可能ではない」と述べ、断交状態にある米国との関係改善に強い意欲を示した。訪問先のスイスのテレビ局TSRがインタビューし、23日に電子版で伝えた。

テヘランの米大使館はイランでイスラム革命が起きた1979年、学生が襲撃し外交官らを人質に占拠、断交の原因になった。その後も保存され、襲撃事件のあった11月4日には毎年、同館の前で大規模な反米デモが行われるなど、反米のシンボルになっている。

ロハニ氏の発言は従来の反米活動の否定につながり、強硬派の反発は必至だ。(後略)【1月24日 朝日】
*****************

****イラン核:IAEA、ウラン鉱山を査察****
イランの核兵器開発疑惑解明を目指す国際原子力機関(IAEA)は29日、イラン南部ガチンのウラン鉱山を査察した。

同国とIAEAが合意した共同声明(昨年11月)を受けた措置で、核兵器製造の関連が疑われる西部アラクの重水製造施設の査察(同12月)に続いて実施。両査察は保障措置(査察)協定の枠外で、イランは「自発的行動」として透明性をアピールする。(後略)【1月29日 毎日】
*****************

今月中旬に再開するイランと欧米など関係6か国の交渉について、イランのザリーフ外相は「歴史的なチャンスだ」と述べ、交渉の進展に期待を示しています。【2月3日 NHKより】

また、ザリーフ外相はナチス・ドイツによるホロコースト(ユダヤ人大虐殺)を「おぞましい悲劇」と明確に非難し、イスラエル敵視政策のアフマディネジャド前政権からの転換を国際社会にアピールしています。

****ホロコースト:イラン外相がベルリンで「おぞましい悲劇****
イランのザリフ外相は2日、訪問先のベルリンで独テレビのインタビューに答え、第二次大戦中のナチス・ドイツによるホロコースト(ユダヤ人大虐殺)を「おぞましい悲劇」と明確に非難した。

ロウハニ大統領も既に昨年9月、同様の見解を示しており、ユダヤ国家イスラエルを敵視してホロコースト否定発言を続けたアフマディネジャド前政権からの転換を印象付けた。

ザリフ外相はホロコーストの犠牲者追悼碑があるベルリンで「二度と繰り返してはならないおぞましい悲劇だ」とユダヤ人迫害を指弾した。さらに「私たちはユダヤ人を敵視していない。信頼を築き上げ、悪循環を断つためのあらゆる道を模索したい。他国の安全は結果的に私たちの安全につながる」と説明し、イスラエルなどとの信頼関係を構築することで、地域の安全保障を進める意向を示した。【2月3日 毎日】
***************

【「明日への不安がなくなった」】
もともとロウハニ大統領は前政権に比べると“穏健派”と位置付けられており、国内においてもこれまでより柔軟な対応がとられています。
そうした政権の変化によって、イラン社会に明るさが見えているとも報じられています。

****イラン:ロウハニ大統領就任半年「自由な社会」静かに喜び****
ロウハニ大統領が昨年8月に就任して以降、物価上昇に歯止めがかかり、アフマディネジャド前政権(2005〜13年)時代の殺伐とした雰囲気が消えた。
ロウハニ師が選挙で掲げた「自由な社会」も実現されつつあり、人々は静かに喜びをかみしめているようだ。
 
「前政権で出版できなかった本が、今は出せる」。テヘランの出版社の男性経営者(40)は、検閲の規制が緩和されたと喜ぶ。例えば、イランでは飲酒が禁じられているため「ウイスキー」は「飲み物」に、豚肉も「肉」に直すよう指導を受けたが、今は問題視されることはないという。

アフマディネジャド氏が再選した09年の大統領選は、同氏の得票数に水増し疑惑が浮上。抗議する市民らと治安部隊が衝突し、死者や逮捕者が相次いだ。

この選挙後の社会、政治問題を題材にした映画「ゲッセハ(物語)」もロウハニ政権下で認可され、現在、国内の映画祭で上映中だ。ロウハニ師は1月31日、映画祭の式典で「映画にそっぽを向いた人々を振り向かせるのは、政府の重要な仕事だ」と述べた。

自由な雰囲気は、女性の服装にも及ぶ。イランでは、イスラム教の教義に従い、女性は体のラインを覆い隠さねばならない。前政権当時に出始めたレギンスは取り締まり対象だったが、今は彩りやデザインが増え、この夏流行した。

また今年1月、文化イスラム指導省は、外国メディアに対し、施設やビルでの取材の届け出義務を撤廃し、原則自由とした。

一方、タクシーの運転手の男性は「明日への不安がなくなった」と語る。前政権では核問題交渉が行き詰まり、経済制裁の影響で、パンなどの値段が3倍になったという。

また、テヘランの不動産業者、サム・フラディさん(30)によると、昨年8月以降、地価が下がった。「経済が安定するだろうと思う人々の心理が、地価高騰に歯止めをかけた」と分析する。ただ、取引は活発ではなく「人々は核交渉の行方を見守っているのだろう」と話す。【2月3日 毎日】
******************

経済面においても、国際社会との関係改善への期待感から、明るさが増しています。

****イラン:ロウハニ大統領就任から半年 着々と明るさ増して****
イランの穏健派ロウハニ大統領(65)が3日、就任から半年を迎えた。昨年6月の大統領選挙で、経済再生の期待を集め当選したロウハニ師は、景気悪化を招いた米欧による経済制裁の全面解除に向け、核問題交渉を前進。
信条の「対話」による外交政策も着実に進め、国際社会での孤立から脱却しつつある。

イラン核問題の解決は険しい道だが、今のところ国内外の評価を裏付けるように、テヘラン証券取引所は空前の株ブームに沸いている。

「今日は砂糖の会社だ」。2日、テヘラン証券取引所は男性があふれ、株価を示す画面の前で一喜一憂していた。大学生のベヘノム・アユグさん(25)は約1年前に株取引を始め、2000万リアル(約800ドル)の利益を得た。「ロウハニ政権で外国と関係が良くなり、経済が上向き、株は上がる一方だ。負ける気配がない」と笑顔で語る。

株価を反映する指数(TEPIX)は、ロウハニ師が当選した昨年6月15日に4万6623を記録して以降、ほぼ右肩上がり。1月5日には、1967年の創設以来の最高値8万9500を記録した。

米ブルームバーグによれば、2006年に1営業日の平均売買高は2000万ドル(約20億4200万円)だったが、今年1〜11月は2億300万ドルと約10倍になった。

05年8月から8年間大統領の座にあったアフマディネジャド氏は、対米欧強硬路線を取り、核問題交渉の停滞を招いた。しかし、ロウハニ政権下で実現した、80年の国交断絶以来となる米大統領との電話協議や、約10年ぶりの核開発制限の見返りに得た経済制裁の一部解除は、イランの劇的な変化を国内外に印象づけた。

制裁緩和による効果は約70億ドル(米試算、約7150億円)と限定的だ。にもかかわらず、天然ガスの埋蔵量世界2位、原油4位の資源に加え、人口約7700万人の市場に期待し、国外から積極的アプローチが早くも展開されている。

昨秋以来、エルドアン・トルコ首相、ボニーノ伊外相のほか、英国、フランス、ロシア、メキシコ、韓国の企業や国会議員などがテヘランを訪問し、投資拡大や経済協力を約束している。日本も首相特使として自民党の高村正彦副総裁、岸田文雄外相がロウハニ師らと会談した。

ただ、イラン経済の本格的再建には、核交渉で難航が予想される原油禁輸、金融取引停止を含めた制裁の全面解除が不可欠だ。【2月3日 毎日】
****************

アベノミクスと同じで、これまでのところはあくまでも“期待感”による明るさであり、実際に経済制裁解除による効果が出てくるかどうかはこれからの交渉次第です。

オバマ米大統領は1月13日、議会で対イラン追加制裁法案を可決する動きが進んでいることについて、「新たな制裁を科す時期ではない」「(交渉は)困難だろうが、外交とは結局そういうものだ」「今は外交官と専門家に仕事を任せるべきだ。私は外交に懸けてみたい」と、イランとの交渉に懸ける意気込みを見せています。【1月14日 時事より】

イラン国内には保守派の抵抗や、最高指導者ハメネイ師がどこまでロウハニ大統領の交渉姿勢を支援するか・・・といった不確実な要素もあります。

疲弊したイラン経済が制裁解除を求めているのは明らかであり、交渉で目に見える成果が出されれば国内の抵抗も和らぎ、さらに交渉を加速させることにもなります。また、政権の基盤も強化され、国内での改革路線も加速されます。
逆に、成果が出せないと、抵抗も更に強まります。国内においても改革は否定されます。

今月再開される交渉において、一歩でも二歩でも前進することを期待します。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする