【2月28日 AFP】http://www.afpbb.com/articles/-/3009500?ctm_campaign=txt_topics
遥か彼方まで通りを埋め尽くす人々、その表情は皆暗い・・・シリア政府軍による包囲が続く首都ダマスカス近郊にあるヤルムークパレスチナ人難民キャンプで、食糧配給に殺到するキャンプ住民です。
【ここから出してほしい、さもなければ死なせてほしい】
****4万人餓死の危機、シリア・ヤルムーク難民キャンプ****
シリア政府軍による包囲が続く首都ダマスカス近郊にあるヤルムークパレスチナ人難民キャンプで、4万人余りが餓死の危機に瀕している。国連は今週、痩せ衰えた人々がキャンプ内の通りを見渡す限り埋め尽くす、衝撃的な写真を公開した。
やつれた顔で着の身着のままの姿で通りを埋める人々は、食糧配給に殺到するキャンプ住民だという。食べ物を手にできたのは、幸運なほんの一握りの人たちだけだ。
「私たちは、巨大な刑務所で暮らしているんだ」。ヤルムーク難民キャンプに暮らすシリア人活動家のラミ・サイード(Rami al-Sayed)さんは、インターネットを介したAFPの取材にこう訴えた。「ただ、刑務所ならば少なくとも食べ物にはありつける。ここ(ヤルムーク)には何もない。ゆっくりと死んでいくだけだ」
サイードさんによると、通りを歩いていると子どもたちに食べ物を恵んでくれと懇願されるという。「だが、分け与えてやる食料は私にもない」
■「亡霊のよう」、死なせてほしいとの声も
ヤルムークとその周辺にはかつて15万人が住んでいたが、数か月に及ぶ反体制派と政府軍との激しい戦闘で人口は4万人にまで減少した。このうち1万8000人がパレスチナ人だ。昨夏から続く政府軍の包囲で、キャンプ内の住民たちは非人道的な環境に置かれている。
25日にヤルムーク・キャンプを訪れた国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のフィリッポ・グランディ事務局長は、目撃した生活環境に「ショックを受けた」と語り、食糧配給に押し寄せた人々の様子は「まるで亡霊のようだった」と述べた。
今のところサイードさんは、動物も食べないほど苦い薬草のスープで飢えをしのいでいるが、薬草を取りに行けば狙撃される危険があるという。キャンプでは医薬品も足りず、医師も看護師もいない中で負傷者が放置されているという。
「ここの人たちは完全に疲弊しきっている。ここから出してほしい、さもなければ死なせてほしいとまで言っている」とサイードさんは語った。【2月28日 AFP】
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反政府派の拠点ともなったこのパレスチナ難民キャンプが政府軍の「兵糧攻め」で封鎖されてから既に7か月が経過しています。
****シリアの傷映す悲しみの1枚****
・・・この写真はシリアの人々が、どれだけ厳しい生活を強いられているかを如実に表している。
同時に、この国で今も続く戦いがもたらした悲惨な状況の、ほんの一部しか写していないのも確かだ。
シリアが内戦状態に陥って約3年で約14万人が死亡し、250万人が難民となった。ヤルムークと同じような封鎖区域で、十分な支援もなく暮らす人々は24万人以上いるという。
問題は何も解決してないが、国外での報道は時間とともに減っている。この写真にショックを受けた人々の記憶も、いずれ薄らいでいく。
シリアの人々の飢えと苦しみが、日ごとに増していくのとは反対に。【3月11日号 Newsweek日本版】
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【停戦合意も崩壊 これまでの支援は海に落ちた水滴のような微々たるもの】
2月10日以来ヤルムークでかろうじて成立していた停戦合意も崩れてしまい、再び支援の手が届かなくなりました。
****シリアのパレスチナ難民キャンプ、停戦合意崩れる****
シリアの首都ダマスカス南方のヤルムークで4万人が暮らすパレスチナ難民キャンプで2日、数週間続いていた停戦を破り銃撃戦と砲撃があり、男性1人が死亡した。
非政府組織(NGO)のシリア人権監視団によると、アサド政権側についているパレスチナ解放人民戦線総司令部派(PFLP-GC)と、国際テロ組織アルカイダ系イスラム過激派組織「アルヌスラ戦線」の間で戦闘が起きた。
両者は先月10日、難民キャンプからアルヌスラ戦線が戦闘員を撤退させた後に停戦していた。双方とも停戦を破ったのは相手だと非難している。
ヤルムークのキャンプには非人道的な環境下で4万人が暮らしている。停戦期間は短かったが、その間かろうじて国連機関のパレスチナ難民支援が入ることができた。
アルヌスラ戦線は2日、停戦を破ったとしてバッシャール・アサド大統領と同盟を組むPFLP-GCを非難した。一方、PFLP-GC側はアルヌスラ戦線側が合意を破って同日朝、キャンプに再進入したと責めている。
国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のクリス・ガネス報道官は、マイクロブログのツイッターで「悪い知らせだ。包囲されているヤルムークのパレスチナ難民キャンプに今日はUNRWAの食糧配給がないようだ」と述べた。
UNRWAでは1月以降、同キャンプに7500包以上の食糧支援を行っているが「需要を高波に例えれば、これまでの支援は海に落ちた水滴のような微々たるもの」だと述べている。
戦闘前に15万人以上だったヤルムークの人口は、アサド政権側と反体制派による数か月の戦闘を経て4万人にまで減っている。うち1万8000人がパレスチナ難民だ。【3月3日 AFP】
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【全会一致で採択 その実効性は?】
このような人道危機が進行する現状に対し、国際社会も全く何もしていない訳ではありません。
****国連安保理、シリア人道支援決議を採択 ロシアと中国も支持****
国連安全保障理事会は22日、内戦下にあるシリアの都市で包囲され食糧不足などに直面する市民を救済する人道支援強化に関する決議を全会一致で採択した。
シリア関連の過去の決議に抵抗し、シリアのアサド政権寄りの主張を続けるロシアや中国を含め、安保理理事国15カ国が全員支持した。
決議は、火薬や金属片など詰め殺傷能力の向上を図る「たる爆弾」の使用禁止を含めた暴力の停止、アルカイダ系組織が絡むテロ攻撃の非難を盛り込んだ。
また、人権関連法の広範な侵害でシリア当局の責任を糾弾し、北部アレッポ、首都ダマスカスや中部ホムスの各都市などの人口密集地区での包囲解除を全当事者に要求した。(後略)【2月23日 CNN】
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当初、決議不履行の場合は制裁を科すとした内容に、シリア政府の後ろ盾となっているロシアが強く反発、人道支援が関係国の政治対立のなかに没してしまう状況が懸念されましたが、制裁云々表現をはずす形で合意が成立しました。
ただ、その分曖昧となり、実効性を危ぶむ声もあります。
****対シリア決議 “制裁回避”で露も賛成 実効性は不透明****
国連安全保障理事会が22日、全会一致で採択した対シリア人道支援決議に、シリアのアサド政権の後ろ盾となるロシアは慎重だった。制裁の可能性を懸念していたからだ。
シリア国内の人道状況が悪化する中、ロシアが拒否権行使よりも欧米との譲歩を選んだ形となったが、アサド政権と反体制派の対立は根深く、決議の実効性は不透明だ。
決議は首都ダマスカスや中部ホムスなどの包囲を解除し、医薬品や食料の搬送に協力するよう要求し、無差別の砲弾攻撃や空爆の即時停止を迫っている。
国連の潘基文(パン・ギムン)事務総長は「決議が履行されれば(シリア国民の)苦しみのいくつかは軽減される」と述べ、全当事者に履行を求めた。
ロシアが賛成した背景には、米露主導のシリア和平協議に成果がないまま市民の犠牲が増え続けている状況で、4度目の拒否権を行使しにくいことがある。
原案は決議不履行に制裁を科すとしていたが、ロシアの反対により「さらなる措置を講じる」との文言に弱められた。これも賛成に回る決め手となった。もっとも決議に盛り込まれた「さらなる措置」の意味は曖昧だ。
決議が履行されない場合の制裁発動に含みを持たせたと受け止めることもできるが、ロシアのチュルキン国連大使は決議不履行が自動的な制裁を「意味するものではない」と牽制(けんせい)。
安保理筋は、ロシアが「別の決議採択が必要との“逃げ道”を作って欧米に譲歩した」と指摘した。【2月24日 産経】
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人道支援物資の自由な搬入を認め、市民に対する人権侵害や攻撃の停止を要求する「シリア人道支援決議」が採択されて10日以上たちますが、ヤルムークなどの状況が改善されたという話はまだ聞きません。
これからでしょうか?