孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国  「一人っ子政策」緩和後も実績伸びず、更なる緩和を求める声も 背景には人々の意識変化

2014-03-10 21:49:02 | 中国

【2013年02月28日 東洋経済online】http://toyokeizai.net/articles/-/13074

【「単独二孩」政策
長く「一人っ子政策」によって人口抑制に努めてきた中国も、すでに政策緩和にかじを切っています。

****北京で一人っ子政策緩和がスタート、5年後の新生児数は40万超―中国****
21日、北京で一人っ子政策緩和がスタートした。5年後の新生児数は40万人を突破するとみられる。
2014年2月21日、北京市で「単独二孩」政策が正式に施行された。

市人民代表大会常務委員会は同日午前、「北京市人口・計画出産条例修正案」を審議・通過、夫婦のいずれかが一人っ子で子供が1人しかいない場合、2人目の出産が認められることとなった。新京報が伝えた。

現在、北京のほか、浙江・江西・安徽・天津の各地でも「単独二孩」政策が実施されている。また、上海や江蘇など8省市でも実施に向け準備を進めており、多くの省が今年中に「単独二孩」政策をスタートさせる予定。

専門家は「『単独(夫婦のいずれかが一人っ子)』のカップルが増えるに伴い、新政策が地域に及ぼす影響も大きくなる。北京や上海など大都市では、『単独』カップルが占める割合はかなり高くなっている」と指摘した。

北京市人口・出産計画委員会がメディア向けに発表した資料によると、全市で条件を満たす「単独」カップルのうち、第2子の出産を希望するカップルは6~7割に上る。

これにもとづき試算すると、北京戸籍人口の合計特殊出生率(TFR:1人の女性が一生に産む子供の平均数)は、現在より0.3ポイント高い1.3前後まで上昇する可能性がある。

「単独二孩」政策の実施後、出生率は短期間で著しく跳ね上がると予想される。北京市では、向こう5年で新生児数は年間4、5万人増え、5年後の新生児数は40万人を突破する見込み。
北京市教育委員会は、すでに到来した学齢期人口増加期に対応し、基礎教育段階を迎える常住人口の入学需要を満たすため、各種政策措置を予定より早めに始動した。【2月23日 Record china】
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一人の女性が生涯に産む子供の数を示すとされる合計特殊出生率でみると、中国当局は2012年夏に、2010年度で“1.18”という非常に低い数値を発表しています。

2012年の日本が1.40、韓国が1.30という水準で、少子化対策が強く要請されている状況を鑑みれば、中国の1.18の低さがわかります。

農村部や少数民族の例外措置はあるものの「一人っ子政策」を行っているのだから“1”に近い数字になるのは当たり前と言えばそれまでですが、中国国家人口計画生育委員会はそれまで中国の合計特殊出生率を“1.8”と主張していましたので、そのギャップの大きさに多くの研究者も戸惑いました。

****1.8なのか1.181なのか、中国の出生率は不透明****
・・・・これまで、関係部門は「中国の合計特殊出生率は1.8だ」と何度も強調してきたが、現在は1.181だった。この2つの統計結果について学術界は「信じられない」とし、「少なくとも1.5~1.7に達するはずだ」としている。

南開大学人口・発展研究所の原新氏によると、「子供についての申告漏れ、流動人口のなかでの高齢女性による重複申告などの要素を考慮すれば、中国の合計特殊出生率は1.6~1.7に達するはずだ」としている。

北京大学の郭志剛教授は、「中国の合計特殊出生率は1.54であるはずだ」という。

張翼氏は、「10年度の中国合計特殊出生率は1.5程度に達しているだろう。だが、1.5前後に達しても、世界平均レベルの2.1を遥かに下回っている。従って、中国政府は第2子生育政策を緩和するべきだ」との認識を示す。(後略)【2012年7月11日 朝日】
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中国の統計数字の信ぴょう性の問題はいつもの話ではありますが、とにかく政府当局が“1.18”だと言っていますので、それをもとに話は進みます。

【「一人っ子政策」がもたらした諸問題
「一人っ子政策」については極めて効果的に人口増加にブレーキをかけて中国の経済成長を可能ならしめた反面、そのつけとして、人口構成に大きなゆがみを生じ、今後急速に高齢化する中国にあっては少ない子供で大勢の高齢者を支えなければならない少子高齢化問題が深刻になると予想されています。

生産年齢人口(人口のうち、労働力の中核を成す15歳以上65歳未満の人口)比率も、減少に転じており(しばらくはそれほど大きく減らないようですが)、生産年齢人口の拡大が経済成長を加速させる“人口ボーナス”も先が見えてきました。

加えて、労働力や家の跡取りとして男子を好む風潮から、一人目が女子の場合は妊娠途中で中絶するとか、出産後遺棄する・・・といった問題もあります。

また、「一人っ子政策」推進のために地方政府役人が半ば強制的に不妊手術を迫るなどの人権上の問題も起きています。

更に言えば、二人目を生んだ場合の罰金が地方政府の大きな収入源となっており、不正の温床にもなっているとも言われます。

****<一人っ子政策>罰金は地方政府の大事な収入源、2012年は3400億円超え―英紙****
2013年12月5日、英紙デイリー・テレグラフによると、12年に一人っ子政策違反者から徴収した罰金の額を、中国の各地方政府がこのほど初めて公開した。その総額は200億元(約3400億円)を上回るという。6日付で中国・参考消息網が伝えた。

中国国内31の省と自治区のうち、24の省と自治区の政府が公開したデータによると、12年に一人っ子政策に違反した者から「社会扶養費」の名目で徴収した罰金の総額は全体で200億元を突破。中国南部の広東省の徴収額は14億6000万元(約247億円)に上った。

この巨額の罰金の使途について、各地方政府は一切非公開にしている。

浙江省の弁護士・呉有水(ウー・ヨウシュイ)氏は、「当初、こうした罰金は人口抑制のために役立っていると思っていた。しかし、その後、地方政府がこの罰金制度を利用して重要な収入源にしていることに気づいた」と話す。そこで今年7月に各省に対し、情報公開を求める文書を送ったという。

中国政府はこのほど、両親のいずれかが一人っ子の場合、2人目の出産を認める事実上の緩和策を発表した。しかし、前述の呉弁護士は「2人目の子供を出産した夫婦から、地方政府が何がしかの『罰金』を徴収する可能性がある」と指摘する。
「さまざまな書類や証明書の提出を求め、それを提出できないことに対して罰金を科すようになるだろう」と、同弁護士は予想している。【2013年12月9日 Record china】
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別に政府にとやかく言われなくても「子供は1人で十分」】
こうした様々な問題が噴出してくるなかでの政策転換ですが、先行地域での部分緩和であまり実績が出ておらず、先の全人代では更なる緩和を求める意見が強く出されたそうです。
その背景には人々の意識の変化もあるようです。

*****条件なしの第2子、中国で要請高まる 一人っ子政策緩和めぐり****
中国共産党が昨秋、一人っ子政策の緩和を打ち出したのを受け、中国各地で条件付きで2人目を産める政策が始まった。だが、申請の出足は鈍い。北京で開催中の全国人民代表大会(全人代)では「2人目の完全開放」に向けさらなる緩和を求める声が出始めた。

6日、国家衛生・計画出産委員会の会見。李斌主任が「親の片方が一人っ子ならば2人目を産める」とした緩和策の実施状況を説明すると、質問が飛んだ。
「みんなの関心は、いつになったら無条件で2人目が産めるようになるかだ。全面開放へのスケジュールを示して欲しい」

これに対し、李氏は「スケジュールはない」としつつ、「人口の変化の観察を強める」と加えた。

中国の労働人口が減る問題を指摘し続けている経済学者で、全人代代表でもある蔡ホウ・中国社会科学院人口・労働経済研究所長は7日、朝日新聞のインタビューで「今回の緩和策でも、(人口爆発などの)恐れは全くない」と指摘。2人目の全面緩和は「早ければ早いほどよい」と述べた。

緩和拡大への要請が高まるのは、年明けから一部地方で始まった、2人目を産むための申請が思ったほど伸びないためだ。

1月17日に始まった浙江省の地元紙は、「問い合わせは毎日のようにあるが、実際の申請は少ない」という役所の担当者の声を紹介。江西省の省都南昌市では、1カ月での申請がわずか1件だったと報じられた。

江蘇省の30代の女性大学教員も、2人目の出産に踏み切れずにいる。4歳の長男で育児の大変さを思い知った。「もう自分の人生を犠牲にしたくない」。同世代の同僚の女性たちも、「子供は1人で十分」という人が大半という。

「申請の状況は、政府の予想を大きく下回っている」。中国社会科学院の張翼・社会学研究所副所長は、子育ての費用がはね上がった上、親たちが自分の生き方を追求するようになったことが理由とみる。

政府内では慎重な声も強いが、「今からでも2人目の完全開放を検討し始めるべきだ」と提案する。【3月8日 朝日】
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子育ての苦労や、それによって犠牲になるもの、教育費や住宅などの経済問題・・・を考えると、別に政府にいわれなくても一人で十分・・・・という風潮が強くなってきているようです。
日本や韓国とも共通する意識変化です。

また、先に男子を好むとされる風潮を取り上げましたが、2年ほど前に寧夏回族自治区を観光した際、ガイドの中国人男性は、誰も二人目を欲しがらないという話にくわえて、最近は女児の方が喜ばれ、出産祝いも女児の方が盛大に行われるといった話をしていました。その理由は、男性は大きくなって結婚してしまうと奥さんの実家に里帰りすることが多いので、男児を産んで育てても、老後が寂しいだけだ・・・とのことです。

もちろん一人の話から全体を類推することはできませんが、政府や周囲が考えている以上に、人々の意識は変化しつつあるようにも思えます。結果的に、政策が意識変化に追い付かない・・・ということも。
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