孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国  訪問先ドイツで“2つの偉大な民族”をアピール

2014-03-29 21:27:07 | 中国

(ドイツを公式訪問した中国の習近平国家主席(左)と、メルケル独首相=AP 【3月29日 毎日】

【「中国とドイツは東西二大文明の傑出した代表格である」】
自分の優れたところを臆面もなく語るようなデリカシーを欠いた人との付き合いは厄介です。
できれば敬遠したいところですが、その押しの強さで一定に実績をあげており、付き合いを無視できないとなると更に厄介です。

今朝、出勤前の慌ただしい時間に聞いたTVニュースで、違和感を感じるものがありました。
ドイツを訪問している中国の習近平国家主席が“偉大なる民族”をアピールしたそうです。

****習近平主席、ドイツの新聞で署名入りの文章を発表****
中国の習近平国家主席はドイツ訪問にあたって、28日にドイツの新聞「フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング」(FAZ)で「中国とドイツが協力し、中国と欧州、世界に幸せを」と題する署名入りの文章を発表しました。文章は次のように述べています。

万物が蘇る早春にもう一度ドイツを訪問し、嬉しく思っている。(中略)

中国とドイツの協力は深くて固い基礎がある。その理由は次の三つの点にまとめることができる。

中国とドイツの協力は二大文明の交流と対話である。中国とドイツはそれぞれアジア大陸と欧州大陸に位置し、東西二大文明の傑出した代表格である。
両国の数多くの先人、奥深い思想、豊かな文学芸術は、双方が学びあい、交流し、協力する上で無尽蔵の知恵の源となっている。

中国とドイツの協力は2つの偉大な民族が互いに学び合うことである。中国とドイツの歴史伝統と発展の過程は異なるが、この2つの民族は多くの優れた品格を持っている。
例えば勤勉さと謙虚さ、そして真面目さと革新精神が強いことなどがそれである。これは、両国国民が理解し合い、尊敬し合い、互いに長所を学ぶためにこの上ない素晴らしい条件を提供した。

中国とドイツの協力は経済の奇跡をつくった国同士の協力である。世界の二大貿易国と経済体として、中国とドイツはしっかりと結ばれ、互いに離れられない間柄となっている。
産業の発展レベルや市場規模、また需要の構造などをみても、中国とドイツの経済は補完性が強く、協力の可能性が極めて大きい。(後略)【3月29日 CRI online】
*****************

****習主席、ドイツで講演****
現地時間の28日午後、中国の習近平国家主席はベルリンで講演を行いました。(中略)

習主席は講演で「中国が平和発展の道を断固として歩むことは、国際社会が注目している発展方向への答えであり、中国人民が発展目標を実現する自信と自覚でもある。中華民族は平和を愛する民族である。平和、調和への追求は中華民族の精神である。中国の今後の発展目標は中華民族の偉大な復興である。そのため発展に力を集中する。そのためには2つの基本条件が必要である。1つは安定した国内環境であり、1つは平和な国際環境である。その一方で主権、安全、発展利益を断固として守る。いかなる国であっても中国の主権、安全、発展利益を損なうことは一切許さない」と述べました。

また習主席は「中華民族とドイツ民族は偉大な民族であり、人類文明の進歩に多大な貢献をしてきた。両国人民には深い友情がある。(後略)【3月29日 CRI online】
***************

【“韜光養晦”から“中華民族の偉大な復興”へ
“謙虚”なひとは、自分のことを“偉大”とは言わないだろうに・・・ということはさておき、昨今の中国・習近平主席の“偉大なる民族”“中華民族の偉大な復興”という仰々しいもの言いには辟易するものがあります。

小平氏は“冷静観察、站稳脚跟、沈着応付、韬光養晦、善於守拙、絶不当頭”を中国外交の基本方針にしていました。
平たく言えば、「冷静に観察し、足元を固め、落ちついて対処し、能力を隠し、ボロを出さず、決して先頭に立ってはならない」といったところでしょうか。

韜光養晦(とうこうようかい)とは、日本で言うところの「能ある鷹は爪を隠す」というような意味だそうです。
才能や野心を隠して、周囲を油断させて、力を蓄えていくという処世の姿勢・・・・と言えば、やや剣呑な感もありますが。

未だ国力が十分ではない中国の処世術であった訳ですが、世界第2位の経済力を獲得し、アメリカとの新しい大国関係を築こうとする現在、習近平主席は「私は中華民族の偉大な復興の実現が、近代以降の中華民族の最も偉大な夢だと思う。」と、その偉大さを国内外にアピールする姿勢に転じています。

別に中国が劣っているとか言うつもりは毛頭ありませんが、偉大なのは各国・各民族も同じであり、あまりに自らの“偉大さ”をアピールされると、「それは周辺国・民族より優れているという意味か?」「世界の中心に中国を置き、周辺国には朝貢を強要し、従わないものは力で・・・という“中華思想”ではないのか?」と訝しく思ったりもします。

いまどき、自らの“偉大な民族”を臆面もなくアピールするのは中国の他は、ロシアぐらいでしょうか?
過去に遡れば、“偉大なるアーリア民族”を吹聴したナチスドイツのヒトラーもいました。

現在のドイツにとてっは、ナチス・ヒトラーの“偉大なるアーリア民族”云々は、忌まわしい記憶でしょうが、メルケル首相は、習近平主席の“2つの偉大な民族”云々をどのような思いで聞くのでしょうか?

個人的なところに引き寄せて言えば、私は日本が大好きですし、日本文化は誇るべき素晴らしいものがあると思います。現在日本社会が到達した地点は評価に値する点が多々あるとも思っています。
ほんの数日の海外旅行から戻っただけで、日本がいかに住みやすい国であるかを実感します。

ただ、そうした思いは私が多分に日本に生まれ、日本で育ったことによるものであろうことも認識しています。
他国には、その国の素晴らしさ、良さがることは当然のことです。
ことさらに“偉大なる日本”を振りかざすような言動は、デリカシーを欠いた恥ずかしい行為に思えます。

フランスの“そろばん外交” ドイツは人権問題にも言及
習近平主席はドイツに先立ちフランスも訪問していますが、フランスは例によって極めて実利的な対応をしています。

****欧州そろばん外交 仏、中国の民族問題触れず旅客機70機受注****
・・・・フランスのオランド大統領と中国の習近平(シーチンピン)国家主席は26日、パリで会談した。オランド氏は会談後の共同記者会見で「(習氏の)初の欧州歴訪はフランスから始まった」と切り出し、友好関係を強調した。

習氏の訪仏にあわせ、エアバスの旅客機70機の発注など約50件の成果があったという。オランド氏は経済効果を180億ユーロ(約2兆5千億円)と説明。「雇用にもつながる」と話した。

10%超で高止まりする失業率は、30日に決選投票を控える統一地方選で与党・社会党が苦戦する主因の一つ。中国の巨大な市場とマネーは、「独英仏で競う状態」(英紙)とされる。

一方、AFP通信によると、仏連立与党内から中国のチベットなどの少数民族問題について「抗議の焼身自殺が相次いでいる」とオランド氏に訴える声が出た。

人権や民主主義は欧州諸国が大事にしてきた理念だが、習氏と並んだオランド氏はこの問題に触れず、記者の質問も受けなかった。(後略)【3月28日 朝日】
****************

その点“真面目”なドイツは、中国との経済関係は重視しながらも、人権問題にも一定にコメントしています。

****独首相:中国の人権問題に言及 経済関係強化では一致****
中国の習近平国家主席は28日、昨年の就任後初めてドイツを公式訪問し、メルケル首相と会談した。

両首脳は、独自動車大手ダイムラーと中国自動車メーカー「北京汽車」による10億ユーロ(約1400億円)規模の投資協定について合意するなど、経済関係の強化で一致した。

だが会談後の会見ではメルケル首相が「言論の自由は、研究分野や市民社会において創造性を促進する重要な要素だ」と述べるなど、中国に人権問題の改善を求める場面もあった。

両首脳はウクライナ問題についても協議し、習主席は「関係各国は政治的・外交的解決を目指し、協力すべきだ」との認識を示した。

独メディアによると、同日午前に習主席と会談したドイツのガウク大統領も人権問題に言及し、自由な意見表明が刑事罰の対象となる状況への懸念を伝えたという。

牧師出身のガウク大統領は旧東独で民主化運動を進めた人権活動家でもあり、予定時間を超えて会談を続行。「友好的だが距離を維持」(南ドイツ新聞)との雰囲気だったという。

ドイツでは近年、人権問題を棚上げして中国との「商談」を優先することへの批判が高まっており、ドイツ側は今回、改めて人権重視の姿勢を内外に示した格好だ。

安倍晋三首相の歴史認識を巡る対応への批判を続けている中国は習主席の訪独に際し、ナチス・ドイツによるホロコースト(ユダヤ人大虐殺)関連施設の視察を打診。戦後、近隣国との和解を進めたドイツの姿勢を引き合いに出し、日本を批判する狙いもあったとみられるが、ドイツ側はこの申し出を拒否し、日中の対立に巻き込まれる事態を避けた。

習主席は28日付の独紙フランクフルター・アルゲマイネに寄稿し、中独両国の経済協力の重要性を強調したが、ここでは日本への言及はなかった。【3月29日 日本】
******************

上記のようにドイツは、中国の日本批判に巻き込まれたくないというドイツの姿勢です。
ただ、日本の姿勢への懸念もあるようです。

****日独反省の比較は不適切=靖国参拝で謝罪に疑念―ドイツ専門家****
中国の習近平国家主席が28日、ドイツ訪問を開始した。中国はこの機会を利用し、ドイツがナチスによるホロコースト(ユダヤ人大虐殺)の過去を反省しているのに対し日本は過ちを省みないと強調し、国際的な対日批判を強めたい考えだ。

ドイツでは日独の比較は建設的ではないとの意見が強いが、安倍晋三首相の靖国神社参拝で、過去に対する日本の反省は本心ではないと受け止められているという指摘もある。

メルカトル中国問題研究所のゼバスティアン・ハイルマン所長は、中国が1970年にワルシャワのゲットー(ユダヤ人隔離居住区)蜂起記念碑前でひざまずいた当時のブラント西独首相や、ベルリンに設けられたホロコースト記念碑を日独の過去への対応の違いの象徴として取り上げ、対日圧力を強めようとしていると分析。
ホロコーストは他の出来事と比較できず、「中国は和解に必要な寛容の精神を欠いている」と批判する。

一方で所長は、ドイツの政治家がホロコーストに共通の信念で向き合っているのに対し、日本は中国だけでなく欧米からも政治家が過去に対して足並みをそろえていないとみられていると強調。
「日本が謝罪しても、靖国神社参拝などのために国際社会では信用されていない」と話す。【3月28日 時事】 
*********************
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする